レクサス「LM」は4人乗りの「エグゼクティブ」と6人乗りの「“version L”」の2つのタイプから選べる。せっかくレクサスのミニバンに乗るなら、贅を尽くした4人乗り仕様を選びたいところだ。広大な車体後部のスペースをたった2席のために使った後席の乗り心地とは? 体験してきた。
後席は広大! 驚きの仕掛けも
ミニバンなのに2列シート4人乗りということで話題になったLMのエグゼクティブ。電動開閉式のスライドドアが開くと、中の景色は他の多くのミニバンとはまるで違っていた。
まず気づくのは、開口部の前端に前後の空間を仕切るパーテーションが張り出していること。右側には傘まで備わっている。ショーファー(運転手)が降りてすぐに傘を差し出せるよう、右側にあるのだろう。ここだけでも、従来のミニバンとの違いを実感する。
シートはスライドしないが、身長170cmの筆者が座ると、足を思い切り前に伸ばしてもパーテーションに届かない。ミニバンなので、もちろん頭上空間も余裕がある。
目の前には車幅いっぱいのディスプレイがあり、手元のスマートフォン風のデバイスでオーディオやエアコン、マッサージなどを調節できる。
さらには「リアクライメイトコンシェルジュ」という仕掛けもある。こちらはシート、照明、ブラインドなどを、あらかじめ設定したモード(テーマ)に応じて自動的に調整してくれる機能だ。試しに「ドリーム」を選ぶと、背もたれの傾きが深くなるとともにブラインドが閉じて、眠りへと誘う空間を仕立ててくれた。
ホテルや住宅、家電など、クルマ以外のさまざまな分野を見て開発したのだと実感する。それでいてゴテゴテと飾り立てていないところは前席と同じで、ブロンズカラーのアクセントが控えめに映える。このあたりも、クルマ以外のラグジュアリーなモノやコトを体験したうえで作り込んだのではないかという気がする。
意外にドライビングも楽しめる
LMのパワートレインはハイブリッドのみだが、多くのレクサス車が使うタイプではなく、2.4リッター直列4気筒ターボエンジンと6速のギアボックスのコンビにモーターを結合したもの。レクサス「RX」の500hやトヨタ自動車「クラウンクロスオーバー」の「RS」と共通だ。このパワートレインで前輪を、リアに置かれたモーターで後輪を回す4WDになる。
運転席に戻って走り出すと、RX500hやクラウンクロスオーバーRSと同じく、低音主体のエンジン音が響いてくる。とはいえターボが付きトランスミッションもあるので、高回転まで回ることは稀で、低い唸りのまま速度を上乗せしていく。重厚な雰囲気だ。
ただし、クルマの用途を考えれば、海外向けには用意している2.5リッター4気筒エンジンを用いた従来型のハイブリッドシステムも合っているのではないかという気もした。
サスペンションはソフトで乗り心地は快適だ。その割にハンドリングは素直だった。もう少しキビキビ感が欲しい人は、スポーツモードがちょうどいいかもしれない。後席にオーナーがいない場合に限られるが、想像以上にリニアな身のこなしを味わえる。
一方、トヨタの「クラウンセダン」に続いて用意されたリアコンフォートモードは、加速と減速が穏やかになるなど、きめ細かいチューニングだった。
ジャパンオリジナルのショーファーカー
途中でクルマを停め、後席に移る。広いうえに装備は至れり尽くせりということもあり、東京都心部の道路をゆっくり流しているときは極上だと思った。しかし、首都高速道路でカーブの連続を抜けていくようなシーンでは、前後左右に揺れることが気になった。足回りがソフトであるうえに、後輪のほぼ真上の高い位置に座っていることが関係しているのかもしれない。
このあたりは今後の熟成に期待したいが、こういうシーンではレクサス「LS」やクラウンセダンなど、セダンのショーファーカーが有利であることが理解できたし、アクセスやスペースとの両立を考えるなら、トヨタ「センチュリー」のようなSUVスタイルもアリだと思った。
レクサスとトヨタを合わせたグループ全体で言えば、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」を含めて、ショーファーカーに向いた車種は豊富に用意されている。トヨタグループはこの分野についても、全方位戦略であることがわかる。
LMには多くのミニバンと同じ3列シートの「“version L”」が追加となった。レクサスでは複数のゲストを招いて移動するシーンなどを想定しているそうで、もっともマルチパーパスなショーファーカーと言えるかもしれない。
一方のエグゼクティブはやはり、数あるショーファーカーの中でも最大級と言えるスペースと至れり尽くせりの装備、そしてジャパンオリジナルのショーファーカーという点に価値があるのではないかと感じた。