スバルは2024年6月18日、スバルの事故低減に向けた取り組みについての勉強会を開催した。スバルは2030年に死亡交通事故ゼロを目指している。
ちなみに、安全性能に関しては現時点でもけっこうスゴい。クロストレック/インプレッサは、自動車の安全性能を比較評価する自動車アセスメント(JNCAP)において、2023年度の衝突安全性能と予防安全性能の総合評価が197点満点中193.53点の最高得点を獲得し、「自動車安全性能2023ファイブスター大賞」を受賞した。米国IIHS(道路安全保険協会)の安全性評価では、2024インプレッサが17年連続で「トップセーフティピック」を受賞。2024年から側面衝突保護・歩行者事故防止・前方オーバーラップ試験に新たな要件を導入している。
言うまでもなく、スバルの前身は東洋最大の航空機メーカー「中島飛行機」。人間を中心とした設計思想はスバルのクルマづくりにも生かされている。安全面においては、「0次安全」、「走行安全」、「予防安全」、「衝突安全」に分類され、最近では「つながる安全」を加えて領域ごとの強化を推進している。以下で詳しく見ていこう。
■0次安全
スバルは0次安全の要として視界性能にこだわっている。Aピラー、Bビラー、Cピラーの各ピラーによる死角を最小化するとともに、車両後方の高さ1mのポール上部が視点から確認できるように後方視界を設計。また、車線変更などの際に重要な斜め後ろの後方視界にも注力している。
クロストレック/インプレッサでは、アレイ式の12分割のアダプティブドライビングビームを採用。対向車に対して防眩性を保ちつつ、すれ違った対向車の後ろを照らす。LEDコーナーリングランプは車両前側方を照らし、歩行者や自転車を早期発見するのに役立つ。
■走行安全
動的性能や危険回避性能の向上を行う。車両運動制御技術を向上させることで、走行安全を強化する。
■予防安全
予防安全性能では、クロストレック/インプレッサは距離の精度が高いステレオカメラに加えて、より広角のエリアを検出できる広角単眼カメラを採用し、プリクラッシュブレーキの対応範囲を拡大。さらに、前後4つのレーダーを組み合わせることで360度センシングを実現した新世代アイサイトを全車標準装備。ソフトウェアの進化や電動ブレーキブースターの採用なども合わせ、交差点の右左折時(対歩行者事故の19%以上が内側からの飛び出しと推定)や見通しの悪い場所での出会い頭(対自転車事故の27%以上が自転車のほうの速度が速い)など、より幅広いシーンで衝突回避のサポートを行う。
ちなみに、交差点では運転時に複雑なタスクを同時に行う必要があるが、人間の限られた視野(中心視は約1〜2度、有効視野約4〜20度)では見落としも発生しやすく、事故に至りやすい。そこで死角をカバーするにはアイサイトも有用である。
今後については、2020年代後半に登場する次世代アイサイトでは、最適化させた半導体チップの採用によって、AIを利用して検知性能を高め、演算スピードも速くなるという。
■衝突安全
衝突安全性能では、クロストレック/インプレッサは、スバルグローバルプラットフォーム×フルインナーフレーム構造を採用し、衝突エネルギー吸収率を一段と向上させるとともに、衝突相手の被害軽減を実現する車体構造も採用。バンパービームの拡大や車高の高いクロストレックにはサブフレームを配したマルチロードパス構造を採用し、衝突相手の被害軽減を行っている。
日本では歩行中や自転車乗車中の事故が多いが、衝突安全の死角をカバーする歩行者保護エアバッグを、クロストレック/インプレッサを含むスバル車7車種で標準装備している。
さらに、最近加わったのが
■つながる安全
クロストレック/インプレッサの“つながる安全”として、万が一交通事故やトラブルが発生した際に、コネクティッドサービス「スバルスターリンク」によって24時間365日、クルマとスバルがつながることで、さらなる安心を提供。「つながる安心ベーシック」として、先進事故自動通報(ヘルプネット)があり、「つながる安心プレミアム」として、スバルSOSコール、スバルiコール(安心ほっとライン)、故障診断アラート/セキュリティアラートのサービスがある。
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なお、スバルでは飛行機の安全思想は自動車の開発に生かされてきたが、最近では同社の航空機開発に自動車の衝突安全の知見を導入する取り組みを始めたという。スバルの2030年死亡交通事故ゼロはリアルに、さらに航空機や将来のモビリティの安全性の向上をも見据えた取り組みになりつつある。
このように、スバルの「ぶつからないクルマ」が次なる進化を果たそうとしている。スバルの今後の動向について注目である。
〈文=ドライバーWeb編集部〉