第37期竜王戦(主催:読売新聞社)は決勝トーナメントが開幕。6月25日(火)には1回戦の渡辺和史七段―藤本渚五段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、雁木対棒銀の乱戦から抜け出した渡辺七段が77手で快勝。新鋭との読み合いを制して2回戦進出を決めました。
注目の若手対決
5組優勝の渡辺七段と6組優勝の藤本五段の一戦。両者は初手合いで本戦出場もともに初めてのこと。振り駒が行われた本局は後手の藤本五段が得意の雁木戦法を採用して始まりました。想定の範囲内だったか、対する先手の渡辺七段は少考で棒銀の速攻を決断します。
局面は攻め合いの様相で、渡辺七段が繰り出す棒銀が敵陣に到達する前に後手がうまい反撃を繰り出せるかが焦点に。自陣左方に歩をペタペタ打って局面を収めたのは攻め合いに自信なしと見た藤本五段の妥協策ですが、実戦はここから渡辺七段の独擅場となりました。
渡辺七段の快勝譜
飛車筋を止められたのならばと、角のラインを生かして棒銀を敵陣に侵入させたのが単純ながら厳しい攻め。手順に馬を作れては先手優勢は疑いようがありません。藤本五段としては期待を寄せた7筋の桂頭攻めが思ったほど効果を発揮しなかったのが誤算となりました。
終局時刻は21時23分、最後は形勢の開きを認めた藤本五段の投了で渡辺七段の1回戦突破が決定。感想戦で藤本五段は自陣に銀を入られた局面を「かなりまずい」と感じたと明かしました。全体を振り返ると、一貫して雁木攻略に専念した渡辺七段のさわやかな攻めが印象に残る一局となりました。
勝った渡辺七段は次戦で高野智史六段(4組優勝)と対戦します。
水留啓(将棋情報局)