三井不動産が、名店の味を手作りフローズンディッシュで再現して全国に届ける、厳選グルメお取り寄せプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」を本格始動する。2030年には事業規模を50億円まで拡大したい考えだ。都内では25日、サービスの運営主体となるmitaseru JAPANの設立を発表。担当者は「国内外に日本の食文化を発信していきます」と意気込んだ。

  • 日本の名店と共創する厳選グルメお取り寄せプラットフォーム「mitaseru」がスタート

mitaseruとは?

mitaseruは、事業アイデアを持つ社員が社内にいながら起業できる三井不動産の事業提案制度「MAG!C(マジック)」から生まれたサービス。発起人のひとりであるmitaseru JAPANの松本大輝氏は、ローンチの経緯について「コロナ禍で苦しむ飲食店を助けたい、という思いがありました」と振り返る。

  • mitaseru JAPAN代表取締役の松本大輝氏

現在、飲食業界では人手不足により営業の縮小・閉店を余儀なくされる店舗も増えている。そこで同社では、飲食事業者に新たな課題解決の形としてmitaseruを提案する。松本氏は「mitaseruでは、各店の人気メニューをレシピ通りに再現します。指定食材を仕入れ、専門の料理人が手作りで調理し、商品を製造・冷凍加工、そして販売まで一気通貫で請け負うことで、飲食店との並走を目指すビジネスモデルです」と説明する。

  • mitaseruのビジネスモデル。名店はレシピを提供し、商品の開発を支援。mitaseruは、のれん代として各店舗に収益を還元する

現在のところ、全34店舗が計67商品でmitaseruに協力している。「知る人ぞ知る名店から、予約の取れない超人気店、さらにはミシュランガイドで星を獲得した店舗、果ては今はなき幻の名店まで、三井不動産が厳選したバラエティに富んだ店舗ラインナップで展開します」と松本氏。今後、2026年までに参画100店舗を目指す。

  • 復刻商品も拡充していく。これにより「日本の食文化の継承にも貢献したい」と松本氏

この日、メディアにはいくつかの商品が紹介された。ほとんどの商品が、湯煎+ひと手間で完成するパッケージとなっている。

りんすず食堂の『復刻・レモンラーメン』は、コロナ禍の影響で惜しまれながら閉店した下町の名店の味を復活させたもの。蕎麦出汁とラーメンスープを融合させた唯一無二のスープにレモンを合わせた、優しい味わいが特徴。当時、女性の常連客からは「罪悪感のないラーメン」と親しまれていた。

  • りんすず食堂の『復刻・レモンラーメン』(1,782円)。お店の味を守る「美味しいの継承プロジェクト」の商品のひとつ

博多もつ鍋 やま中の『もつ鍋セット みそ味』は、全国でもトップクラスの人気を誇る有名店の看板商品。家庭でも簡単に楽しめるように、もつ・スープ・野菜をセットにして販売するアイデアはmitaseruのオリジナルとなっている。

  • 博多もつ鍋 やま中の『もつ鍋セット みそ味』(1.5~2人前:3,996円)

北イタリアの郷土料理店として知られる神戸・北野のボロネーゼ専門店の味を再現したのが、オステリアブッコ ボロネーゼ『ポルチーニ茸入りボロネーゼ』。じっくり煮込んだ牛肩ロースの旨みを凝縮した、贅沢な一品となっている。

  • オステリアブッコ ボロネーゼ『ポルチーニ茸入りボロネーゼ』(1,922円)

ケ ボンタの『神戸発!本格イタリア仕込み自然派ジェラート』は、ミルク、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ+チョコレートの3種類で展開。アレルギーの方にも配慮しており、乳化剤などを使わない無添加でつくられている。

  • ケ ボンタの『神戸発!本格イタリア仕込み自然派ジェラート』(850円から)。優しい素材にこだわった

さらなる事業拡大を見越して、製造体制も強化する。三井不動産の物流拠点「MFLP船橋」のエリア内に新たな拠点を設置。商品の製造から配送まで一気通貫した独自のサプライチェーンを構築する。

  • 三井不動産ロジスティクスパーク船橋の中に製造拠点をつくる

「日本の飲食業は世界からも高い評価を受ける産業でありながら、立地や客席数が売り上げの制約になってきました。また近年では、人手不足も大きな影響をおよぼしています。名店の料理人が磨き上げた技で作るあの味を、もっと多くの人に届けるにはどうしたら良いだろうか――。そんな思いから、私たちはmitaseruを立ち上げました。名店で働く料理人の夢と、お客様の願いをつないでいきます。中長期的には海外販売にも取り組み、2030年までに事業規模50億円を目指します。たくさんのお客様のお腹と心を満たせる、そんなサービスに成長させていきます」(松本氏)

  • 参画飲食店からも「製造を代行してもらえるのがありがたい」「想像以上の販売力」「海外展開も期待している」といった声が寄せられている

囲み取材で、競合他社にはない強みについて聞かれると、松本氏は「飲食店とのリレーションを作っていけるのが三井不動産ならではの強みだと思っています」と回答。「たとえば、博多もつ鍋 やま中さんとのつながりも三井不動産の商業施設を通じたご縁がきっかけでした。三井不動産と一緒に『首都圏におけるPR活動』と『ECの拡大』をやりたい、とお声がけいただいたことで、mitaseruの参画が決まりました」と説明する。

また同社では、営業力も活かしていく。「私たちの営業部隊は全国にネットワークをはっており、各地にある飲食店舗の情報を持っています。mitaseruであれば投資もなく出店できますよ、といったメリットをお伝えすることで参画店舗を増やすことができます」。

もちろん(オンラインのみならず)リアルの場が提供できるのも、三井不動産ならではの強みとなる。松本氏は「ミシュランに掲載されるような有名店であれば、オーナーシェフが個人でやっている場合も多いでしょう。店舗を増やそうにも、任せられるシェフが育つまで2店舗目を出すことができません。そこでまずはmitaseruで商品を展開して、よりたくさんのお客様に料理と味を知ってもらい、人材が育ったタイミングで2店舗目を出店。そんなときに三井不動産のテナントを提案できたら良いですね」と話していた。