パチンコ・パチスロ産業に関わる13団体共催による合同交歓会「パチンコ・パチスロ産業合同祝賀会」が24日、東京都千代田区のホテルニューオータニにて開催された。

13団体共催による開催は今回が初の試みで、会場には多くの関係者のほか、自由民主党 遊技産業議員連盟の国会議員や警察関係者など多くの来賓を迎えた、盛大な祝賀会となった。

「パチンコ産業のパーパス」を発表

祝賀会の開催に先立ち、パチンコ・パチスロ産業21世紀会から「パチンコ産業のパーパス」と題し、「遊びの力で、心を元気に。」というパチンコ業界全体の存在意義となる「パーパス」が発表された。

「パーパスは企業や団体の存在意義や目的を示すもので、私達の活動や決定に方向性を与え、一貫性を保つための重要な指針」と話す全日本遊技事業協同組合連合会 副理事長の千原行喜氏。特に、現在のように急速に変化する時代においては、「明確な存在意義、パーパスを持つことは極めて重要」との見解を示す。

  • 全日本遊技事業協同組合連合会 副理事長の千原行喜氏

今回、パーパスを掲げるに至ったきっかけは、パチンコ産業の存在意義が一般に理解されにくいところから。パチンコ・パチスロ産業は、関連を含めて約30万人の雇用を生み出しているほか、地域経済の活性化にも大きく寄与。災害時の一時避難所や防犯に関する協定など、社会貢献活動も積極的に行われてきたが、そういった活動が業界外には広く知られていない現状を明かす。

そこで、パチンコをしない人も含めて、社会全体に対して存在意義を示し、広く国民に遊技産業の理解を求め、「パチンコってあってもいいよね」、さらには「パチンコ店が近くにあってよかった」と感じてもらうためには、「遊技産業全体での揺るぎない存在意義、パーパスが必要」であるとした。

そして、競馬を例に「パチンコ産業にとっても、イメージの変革は必要」という千原氏。業界がひとつにまとまることで発揮できる力について、その成功例の一つとして、コロナ禍における換気実証実験動画を挙げつつ、「これから発表する具体的な内容に基づいて、皆さんとともに、この新しいパーパスを実現し、パチンコ・パチスロ産業の全体の成長と発展を目指していきたい」と呼びかけた。

パチンコ・パチスロ業界にパーパスが必要な理由

続いて、マルハン 東日本カンパニー ブランド戦略部 部長の西眞一郎氏が登壇。今回の発表は、「業界団体が一丸となり、社会課題起点で、私達の業界の存在意義を見つめ直し、言語化するプロジェクトが始まるという報告」であり、今後はさらに議論を重ね、パーパスの言葉のブラッシュアップ、さらに業界のあるべき将来像を描くビジョンの策定やビジョンに到達するための具体的な方法論、バリューについても議論を進めていくとの方向性を明かし、パチンコ・パチスロ業界にパーパスが必要な理由について、「業界の社会的地位の低さ」「30年近く歯止めがかからないユーザー離れ」「若年層の支持が得られていない」といった3つの課題から解説する。

  • マルハン 東日本カンパニー ブランド戦略部 部長の西眞一郎氏

2001年から2010年までのユーザー減少数は260万人。この時代背景としては、リーマンショックや4号機の完全撤去、スマホの登場といった、業界にとって逆風となる様々な環境変化があったと振り返る。そして、2010年から2021年までのユーザー減少数は858万人となっており、前の10年と比べると約600万人と大きな差になっている。この約10年には、広告宣伝規制やMAX機完全撤去などの逆風もあったが、さらに大きく減少させる出来事があった。

まず2011年に発生した東日本大震災。この年は一気に417万人という、過去最大のユーザーがパチンコ業界から離れたという。もちろん、東日本大震災そのものの影響で離れた人も多かったが、それとともに、電力不足に端を発するメディアなどからのバッシングが大きく影響。外装ネオンの消灯や輪番休業の実施、さらには復興支援ボランティアなどの復旧活動などはほとんどメディアに取り上げられることはなく、電力を浪費する不要不急産業というレッテルが貼られるにいたった。

そして、2019年からのコロナ禍によって208万人のユーザーが離れることとなった。営業補償のない休業要請に全面的に協力し、ほぼ100%の店舗が休業。さらに実際は商業施設の中でもトップクラスの換気機能を持ち、クラスターが一件も出ていないにもかかわらず、「誤解や認識不足によって、危険な場所という印象操作まがいの理不尽な扱いを受けることになった」と振り返る。

「このようにパチンコ業界は、人々の生活自体が大きく変わるような出来事により、社会の空気が変わるような状況になると、産業の存在意義までが大きく低下するような業界」という西氏は、ほかの産業に比べて、非常に簡単に不要論が広がりやすい業種であるとの見解を示す。実際、パチンコ業界も社会のために様々な取り組みを行っているが、メディアに取り上げないため周知されず、「それどころかネガティブな情報ばかりが取り上げられている状況が今の状況」との不満をあらわにしつつ、このように社会の空気の変化によって、簡単にその存在さえ否定されてしまうような業界だからこそ、「私達はパーパスを掲げ、パチンコ業界の存在意義をはっきりと言語化し、業界内外に示しておく必要がある」との考えを示した。

参加人口がこのままの減少率で推移すると、2030年までには遊技人口が450万人にまで減少すると予想。この状況になると、「遊技台は売れず、ユーザーの負担が増えることが想像に難くなく、さらにユーザー離れが加速する」との危惧を示す。パチンコ、パチスロともに、18歳から39歳までの若年層での減少が特に著しい現状についても、「近年、特に若年層を中心に、経済的な成功だけでなく、社会的な影響や存在意義を重視する傾向が強まっている」と分析。小学校、中学校でSDGsを学ぶ教育が始まったことから、「業界や企業がどんな社会問題を生み出し、対処しているか、また、どんな社会課題を解決しているのかを考える世代になってきており、「若い世代に受け入れられないという問題は、単に参加人口の先細りという側面ばかりでなく、今後の業界、企業の採用面にも深刻な影響をもたらす」と警鐘を鳴らす。

そして、「パーパスは、社会課題起点でビジネスを見直し、価値を提供していくこと」という西氏は、「そのためにも、世の中にはどのような社会課題があり、私達が何の課題を解決していくべきかを議論していく必要があり、それと同時に私達の業界が経済活動を繰り広げていることで発生している社会課題を解決していくことも求められている」との考えを示し、「パチンコ、パチスロという遊びが、そしてパチンコ店舗という施設が解決できる、我々にしか解決できない社会課題は何かを考えていくことが必要」を指摘。「私達は社会課題起点でビジネスを見直し、業界のパーパスを掲げ、コミュニケーション戦略を組むことで、特に若年層からのイメージを変えていくことが求められています」と、改めてパーパスを策定する重要性を強調した。

「通常は企業単体で策定されるパーパスを業界全体で掲げるというのは、おそらく日本国内では初めてのプロジェクトになるのではないか」という西氏は、「このプロジェクトを機に、業界全体が自らの存在意義と未来への思いを掲げて、一致団結することで日本社会において必要な存在と認識され、パチンコ業界の未来はこれまで以上に明るく輝く」と主張。「パチンコ業界のパーパスは、私達に誇りと新たな可能性と、未来への希望をもたらしてくれるはず」との展望を示す。

「私達パチンコ業界は人々の心を元気にする力を持っています」と業界の力を信じ、輝かしい未来に向けた変革の瞬間に立っている現状を見据えつつ、「パーパスの下、業界に関わる一人一人の努力と情熱を集結させ、新しいアイデアや挑戦を恐れず、共に歩んでいくことで、私達は夢見る未来を実現することができる」と確信。「パチンコ業界に携わる者として、誇りを胸に、明るい未来へ向かって進んでいきたい」との意欲を明かした。

そして、千原氏が再び登壇し、「遊びの力で、心を元気に。」というパーパスをあらためて発表。「業界全体でパーパスを打ち出したのは、私達遊技産業が初めてと言ってもよいのではないか」との見解を明かし、関係者、来賓者の日頃の助力にも感謝を述べつつ、「我々自身でも行動を起こすために策定したのが今回のパーパス」であり、「遊びの力で、心を元気に。」という言葉を発し、実現に向かって行動することが、業界全体の利益に繋がるとの期待を寄せ、「今、この時が、この場所が、未来の人たちに遊技産業が新しい一歩を踏み出した記念日だったと言ってもらえるように、業界全体が一丸となって行動していきましょう」と呼びかけ、発表を締めくくった。