高速道路の落下物、「落とし主」がわからないケースが多数…取り締まりは何件?

「東名の道路上にフェンス散乱…車26台が乗り上げる事故 バンパー破損など被害 静岡・沼津市」と4月14日付け静岡テレビが報じた。以下はその一部だ。

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13日午後9時過ぎ、沼津市足高の東名高速・下り線で「落下物に乗り上げた」と警察に通報がありました。警察が確認したところ、本線上の数キロにわたり縦2m・横1mの金属製のフェンスおよそ20枚が落ちていました。この影響で車あわせて26台がフェンスに乗り上げる事故にあい、バンパーが破損したりタイヤがパンクしたりしましたが、ケガ人はいないということです。

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国土交通省によれば「高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)」は、「ロードキル」(野生動物の死亡事故)を除き、25万8千件もあったという。 ※令和4年=2022年

前にご紹介した、高速道路における違反別取り締まり件数(2023年)に、積載物を落下(転落)させる違反の取り締まり件数がある。

【参考記事】 2023年の交通違反別取り締まり件数が公表された。減った違反、増えた違反は? 

積載物を落下(転落)させた違反は、ガス欠の違反と並んで、一覧表にこう載っている。

高速遵守事項違反燃料措置 249件

高速遵守事項違反転落措置 518件

2022年度と2023年(歴年)の違いはあるが、「落下物処理」が25万8千件もあって、取り締まりはたった518件とは。“落とし主”が明らかでないケースが圧倒的多数なんだろうね。

ガス欠と、積載物の転落、これらは、道路交通法第75条の10に「自動車の運転者の遵守事項」としてこう定められている。

「自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。」

長い。いわゆるガス欠と積載物の転落についてだけ要約するとこうなる。

「高速道路において運転する前に、燃料や積み荷の状態を点検し、燃料切れで運転できなくなることや、積み荷を転落させることを、防止するための措置を講じなければならない」

ただし、措置を講じなかったこと自体にはペナルティはない。講じなかったうえで、さらに、あることをしたらペナルティの対象になるのだ。

■ガス欠と積載物の転落、過失も処罰される!

罰則は第119条第1項。「次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する」として、その第19号でこう定めている。

「第75条の10(自動車の運転者の遵守事項)の規定に違反し、本線車道等において当該自動車を運転することができなくなつた者又は当該自動車に積載している物を当該高速自動車国道等に転落させ、若しくは飛散させた者」

つまり、第75条の10に違反したうえで、ガス欠で止まったり、積み荷を転落させたりしたら取り締まりの対象になる、そういう組み立てなのだ。

「点検したつもりなんだけど、ついうっかり」は通らない。第119条は第3項で、過失の場合は10万円以下の罰金と定めている。

故意犯の罰金は5万円以下なのに、過失犯は10万円以下、おかしい? いや、故意犯は懲役刑が選択肢にある。よって故意犯のほうが法律的には重いのだ。「過失ゆえ懲役は勘弁してやるが、罰金の額は少し高くするぞ」ってことだね。

ガス欠と積載物の転落、この2つの違反は、反則金を払ってすますことができる。故意も過失も、大型車は1万2千円、普通車は9千円、自動二輪は7千円だ。反則金とは別に、違反点数は2点。

うっかり不注意なケースは必ずある。脚立やベニヤ板、金属のフェンス、外れたタイヤなど、路上にぽつんと残されたものに、自動ブレーキは反応するかどうか。前をよく見て運転しよう。

文=今井亮一

肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通事件以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。