「Amazon Web Services」(AWS)は、JR東海のリニア中央新幹線におけるデータドリブンな運営に向け、山梨リニア実験線でIoT(モノのインターネット)・機械学習・生成AIなどAWSのサービスを活用開始したと発表した。

  • 山梨リニア実験線のL0系改良型試験車

リニア中央新幹線は、超電導リニアにより品川駅まで名古屋駅まで500km/hで最速40分、大阪方面へ最速67分で結ぶ次世代の高速鉄道サービス。AWSのIoT・機械学習・生成AI等のサービスを山梨リニア実験線で活用し、保全業務の効率化・省人化を進めることで、業務改革ならびにコスト削減を推進すると同時に、データと最先端テクノロジーを活用したリニア中央新幹線のデータドリブンな設備保全をめざすとのこと。

JR東海専務執行役員中央新幹線推進本部リニア開発本部長の寺井元昭氏は、「JR東海では、革新的な交通ソリューションを乗客に提供することに全力を注いでいます。リニア中央新幹線は東京と大阪間の移動に革命をもたらすだけでなく、データドリブンな運営を志向し、効率性と安全性の新しい世界標準を確立します。山梨リニア実験線においてAWSを活用したイノベーションの加速により、新たな高速鉄道の未来を実現します」とコメントしている。

超電導リニアは、運転士が乗車して列車の速度を制御する方式ではなく、地上から列車を遠隔制御する高精度・高信頼の「自動運転システム」を採用。運行に関わる車両と地上設備の全情報がデータ化され、すでに運行システムなど多くのシステムが連携している。車両と地上設備のリアルタイムでの状態監視と、機械学習を活用した状態監視保全や予知保全を実現し、高い安全性と快適性を兼ね備え、効率的で省人化された次世代高速鉄道サービスの実現を進めるとのこと。

山梨リニア実験線においては、2024年1月からAWS IoTサービス等を活用し、リニア車両の走行に不可欠な送電設備や、始発列車走行前に沿線を点検するための電動保守用車の状態データを取得し、状態監視からデータ分析まで一連のプロセスを検証する概念実証(PoC)を開始。これにより、故障発生時の対応早期化や蓄積データを分析し、故障予兆の検知に活用されている。

具体的には、完全マネージドサービスである「Amazon SageMaker」を利用し、送電設備の異常を識別する機械学習モデルを構築。ビジネスインテリジェンスサービスである「Amazon QuickSight」で可視化する。これにより、重篤な故障に至る前に異常予兆をとらえ、保守作業を行えるようになったという。今後は「AWS Professional Services」による支援の下、IoT化の対象設備やデータの幅を拡大し、機械学習技術を用いた分析のユースケースを拡大する予定となっている。