季節の変わり目は体調を崩してしまう人も多いタイミング。とくに梅雨の時期はなんとなく体調がすぐれない状況が続くことも。この不調は雨? それとも気圧のせい? 憂鬱な梅雨の不調を乗り越えるコツを医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センターの中路幸之助先生にお伺いしました。

■梅雨は女性の方が体調不良になりやすい

――梅雨時期の体調不良症状にはどんなものがありますか?

中路先生:梅雨の時期における体調不良の症状の多くは、長雨による湿度の上昇の影響が考えられます。湿度の上昇が原因となり、「頭痛・頭重感・めまい」「全身倦怠感」「浮腫(むくみ)」「首・肩こり・関節の痛み」「食欲不振、便通異常」「気分の落ち込み・不安感・眠気」などの症状が現れます。

どれか1つの症状が現れる場合もありますが、複数の症状が同時に現れる場合も多く見かけます。もともと普段からこれらの症状があった人はとくに梅雨をきっかけとして症状が出やすくなるのも特徴です。

また、「頭痛・頭重感・めまい」や「気分の落ち込み・不安感・眠気」などの症状は男性より女性、とりわけ更年期や生理中の女性に多いといわれており、ホルモンのバランスの変化の影響で自律神経が乱れることが原因と考えられています。

――女性の方が体調不良になりやすいのですね。梅雨時期はどうして体調がすぐれなくなるのでしょうか?

中路先生:梅雨にはいると「湿度」が急に上昇します。そうなると、体から水分としての尿や汗が排出しにくくなり、体幹や四肢、脳や腸の壁に水分がたまりやすくなり、体や四肢のむくみ、頭痛、便秘・下痢などの症状が出てきます。

自律神経には2種類あり、興奮して身体を活動させる「交感神経」と、リラックス状態にする「副交感神経」があります。この2つの神経がバランスを取ることで、体の恒常性が維持されています。

梅雨の時期は寒暖差や気圧変動に対応するため、「交感神経」が優位に働きます。この「交感神経」の優位な状態が続いてしまうため、緊張状態が持続し疲労やだるさの症状が出ます。

また、「副交感神経」が優位になりにくく、リラックス状態になりづらくなり、睡眠不足になりやすくなります。睡眠が浅いと、日中の眠気や集中力の低下などで生産性の低下にもつながります。

■免疫力の低下による「梅雨風邪」に注意

――「自律神経」以外にも梅雨の不調の原因となるものはあるのでしょうか?

中路先生:梅雨の体調不良の原因としてあげられるのが「免疫力」の低下です。

「免疫力」の低下の原因は、まず日照時間の減少による「ビタミンD」の不足が考えられています。梅雨の時期は日照時間が減少し、皮膚で作られる「ビタミンD」が減少します。「ビタミンD」は細菌を貪食するマクロファージを活性化する作用など免疫機能において重要な働きをしています。この「ビタミンD」が不足することで「免疫力」が低下します。

また適度な運動は「免疫力」を高める働きがあるといわれています。梅雨の時期は、雨で外出の機会が減ることで、運動不足になりやすくなります。そのため「免疫力」が低下します。自律神経の働きは免疫機能にも影響を与えます。 寒暖差による自律神経の乱れも「免疫力」の低下につながります。これらの原因による免疫力の低下から、いわゆる「梅雨風邪」の症状が出やすくなります。

――「免疫力」を高めるためにおすすめな食べ物や栄養素を教えてください

中路先生:「免疫力」を増強させるため、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びましょう。「ビタミンD」の合成が促進され「免疫力」が増強します。

梅雨の食事では、生もの・冷たいドリンクなどの摂り過ぎには、体が冷えて、かえって体調を崩す場合があるので注意してください。

「たんぱく質」の摂取は重要になります。「たんぱく質」は、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などに多く含まれ、筋肉量を維持し、梅雨の時期の体力低下を防ぐため大切な栄養素です。

そして、食欲不振・疲労回復の解消効果ある「ビタミンB1」を多くとりましょう。「ビタミンB1」は、大豆・玄米・豚肉・卵などに多く含まれ、「たんぱく質」の代謝を助ける働きもあり、また食欲不振を回復させる効果があります。疲労回復や自律神経正常化にも役に立ちます。

また「免疫力」を高める「ビタミンD」の豊富な魚・きのこ・チーズなどを多めにとりましょう。その他、食欲を増す梅干しやお酢などに含まれる「クエン酸」や、抗酸化作用のあるブロッコリーやキューイフルーツに多く含まれる「ビタミンC」をとることも有用です。

■低気圧が続く梅雨はメンタルにも影響する

――梅雨の時期は鬱になりやすいって本当ですか?

中路先生:低気圧が続く梅雨の時期は、くもりや雨が続き、日照時間が短くなります。日光を浴びることで、体内では「セロトニン」という幸せホルモンが作られます。

梅雨になり、日光を浴びる量が減り、この「セロトニン」が作られにくくなると、落ち込んでしまい、鬱状態となります。

また「セロトニン」は、夜になると「メラトニン」という睡眠ホルモンに変化するため、「セロトニン」の量が減ると睡眠の質の低下もきたします。そして、低気圧になると、副交感神経が優位になり、「全身倦怠感」「気力が出ない」という症状が出てきます。

■運動・睡眠・食事の効果的な方法

――梅雨時期の不調へ、効果的な対策や対処法はありますか?

中路先生:まず、梅雨の時期に起こる体調不良を防ぐために、「自律神経」のバランスを整えることが重要です。「自律神経」を整えるために最も効果的なのが、朝食を食べることです。朝食を食べることで、「交感神経」にスイッチが入り、「生活リズム」や「自律神経」を整えやすくなります。

エアコンを過度にきかせた部屋でずっと過ごすと、身体が冷えて自律神経のバランスが崩れる原因になります。そのため、シャワーばかりではなく、たまには38~40度程度の「ぬるめのお湯」に約20分から30分ぐらい浸かりましょう。

半身浴で下半身を中心に温めるのもいいですね。副交感神経が優位となり、体を休ませることができます。湯船に浸かって、筋肉の緊張もほぐしていきましょう。

なかなか湯船に浸ることができない人でも、素足で過ごすことなく、靴下をはいたりするなど下半身を温めるようにしてください。

――梅雨の時期に気を付けたい習慣や日常生活でできることはありますでしょうか?

中路先生:「運動習慣」を継続することは、梅雨の時期の筋肉の維持、そして心身の健康を維持するうえで重要です。日照不足により気分が落ち込みがちになる梅雨こそ、積極的に体を動かしましょう。

適度な疲労感が睡眠の質の向上に役立ち、自律神経を整えるのにも有効です。また、運動することで幸せホルモンである「セロトニン」の分泌を促すことができるため、精神衛生の維持にもつながります。

――寝苦しい夜もありますが、快適な睡眠をとるコツを教えてください

中路先生:雨の日でも可能な、自宅でできるストレッチなどの運動をしましょう。私たちが眠くなるには、深部体温を下げることが必要です。体温を下げる方法の一つとして、人は汗をかきます。汗をかき、その汗が蒸発する際に周りの熱を奪い、体から熱が放出されます。

しかし、梅雨の時期は湿度が非常に高く、そのため空気中に水分を飛ばせず、汗がなかなか乾かずに熱が放出されないため、熱が体にこもり睡眠が浅くなってしまいます。「睡眠不足」はさまざまなストレスをきたします。

梅雨の時期の睡眠を快適にするためには、「湿度」を上手くコントロールする必要があります。エアコンや除湿器を上手に使い「湿度」をコントロールしましょう。また換気も重要です。就寝前にリラックスするためにストレッチなど簡単な運動をしてみてください。

お気に入りのアロマやお香もリラックスに効果的ですね。睡眠前のコーヒー・紅茶などのカフェイン類を避け、スマートホンのブルーライトには脳を刺激すので控えましょう。

このようにして、梅雨でも睡眠障害ならないような対策は十分可能です。梅雨の時期、規則正しい生活を心がけ、バランスの良い食事を摂ることが大切です。生活リズムを整え、睡眠の質を向上させ、梅雨の時期に負けない体づくりをしていきましょう。

監修ドクター: 中路 幸之助先生

1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。


※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています