梅雨の時期は体調が悪くなるという人も多いのではないでしょうか。それは、気圧の変化が体調不良を引き起こす、いわゆる「気象病」の可能性も。今回は、気象病に対する対処法について愛晋会中江病院の中路幸之助先生に教えてもらいました。

■気象病になりやすい人の特徴

――気象病の主な原因について教えてください。

一つめは、気圧・気温・湿度など気象の変化によって皮膚のセンサーが過敏になり、自律神経が乱れることが原因で起こるという説。二つめは、気圧の変化を耳の中にある内耳のセンサーが敏感に察知し前庭神経が過剰に興奮することでおこるという説などがありますが、実際にはこれらが同時に関与していると考えた方が妥当です。

一つめに関しては、体の外の温度や湿度を感じる皮膚のセンサーがその変化を敏感に感じ取ることによって、自律神経のバランスをくずし、体調の悪化につながる説です。自律神経は交感神経と副交感神経のバランスによってその機能が維持されています。激しい気象の変化により皮膚のセンサーが敏感になり自律神経のバランスが乱れ、体調の変化を来しやすくなります。地球の気候の温暖化が進むなか、極端な気象の変化が起こりやすくなっており、今後、自律神経のバランスを崩す人が増えて、気象病の患者さんが増加していくことが予想されます。

二つめに関しては、耳の一番奥にある内耳には、身体の平衡感覚維持する三半規管や前庭があります。この内耳の感受性には個人差があり、これは乗り物酔いをしやすい人とそうでない人がいることでも知られています。この内耳の感受性が高い人が、天候の変化による気圧の変動を敏感に感知し、前庭神経が過敏になることで自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位な状態となると片頭痛やめまいをきたしたり、副交感神経が優位な状態になるとだるさや、極端な場合はうつ状態になったりします。

――気象病になりやすい人の特徴を教えてください。

気象病になりやすい人は、「自律神経のバランスが崩れやすい人」と考えられます。自律神経は心臓や消化管などの内臓を調節する神経であり、身体内外からの刺激に反応します。気温・湿度・気圧の変化は自律神経を刺激して内臓に影響を与えます。年齢に関しては、全世代で見られ、女性の方が多い傾向にあるようです。

「頭痛」に関しては、高校世代を含めAYA世代の人に多く、年齢を重ねるにつれて減少し、50代以降の年代になると「関節痛」などの症状が増える傾向にあります。またPMS(月経前症候群)や、更年期障害がある人も気象病になりやすいといわれています。関節リウマチなど慢性的な痛みがある人のうち半数近くは悪天候や悪天候が近づくときに悪化する傾向にあり、「雨が降る前に、古傷がうずく」と古くから言われてきたのもこの気象病を示唆していたものと思われます。

もともと乗り物酔いをしやすい人はバランス調節に関係する前庭神経が過敏であり、気圧の変化により「めまい」やそれに伴う「気分不良」「嘔気・嘔吐」などが起こりやすくなります。

――梅雨に感じやすい具体的な不調、症状を教えてください。

梅雨の時期は梅雨前線が停滞し気圧は低下しやすくなり、また低気圧をもたらす台風が接近してきます。そのため、この時期に気象病の症状をうったえる人が増加。梅雨の時期に多い気象病の症状として「頭痛」「倦怠感」「気分の落ち込み」などがあげられます。

梅雨前線や台風が接近すると、交感神経が優位となり、脳の血管の収縮や筋肉の緊張がおこり、頭痛がおこりやすくなります。また日照時間の減少により、脳内のセロトニンやドーパミンなどの幸せホルモンが減少し、「倦怠感」や「気分の落ち込み」などの症状が出やすくなります。

――気象病の症状を緩和するための方法を教えてください。

まず、こまめに等圧線の書かれた天気図や気象情報をチェックしてください。その日の天気により、ふさわしい服装などを選んでください。そのうえで、日頃の生活習慣を見直しましょう。喉が渇く前にこまめに水分を適度に補給をしたり、ストレスを溜めないように、適宜趣味などで発散し、リラックスした状態を保ってください。

また、寝る前にスマートフォンを見ることは避けて、睡眠を十分にとってください。スマホから放出されるブルーライトは、交感神経を刺激し、寝つきが悪くなります。就寝の1~2時間前からスマホの画面は見ないように心がけましょう。

朝は必ず「日光」浴びて、規則正しい食事を心がけて、適度な運動をすることも大切です。太陽光は体内時計をリセットし、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの生成を促進します。そのため、夜間の睡眠の質が改善してストレスの解消につながります。規則正しい食生活を継続するうえで、一番大切なことは、「朝食をとること」。朝食は、腸の活動が活発化し、自律神経を活性化させるホルモンが合成されます。

また、運動をすることで、気圧の変化で交感神経が優位な緊張状態から副交感神経が優位なリラックス状態への切り替えがしやすくなります。シャワーばかりではなくてたまには湯船につかることが良いでしょう。暑い時期には無理をせずエアコンを上手に使うことは大切ですが、エアコンの効いた環境に1日中いると、湿度や温度の変化に体が慣れなくなるため、暑いのに汗をかかない、いったん身体が冷えると体が温まらない状態に陥ります。そうなると、自律神経のバランスが乱れて「気象病」が悪化しやすくなると考えられます。入浴により汗をかくことで自律神経のバランスが回復して気象病の症状の緩和につながる可能性があります。

――また、気象病にならないための日々自宅でできるケアなどあれば教えてください。

近年「脳腸相関」が注目されています。腸の調子は自律神経に影響を与えるため、胃腸の状態を安定させるために、善玉菌のエサとなるヨーグルトなどの発酵食品をとることをおすすめします。また、両耳を手でつまんで横や上下に引っ張ったり、回転したりする耳のマッサージや内耳の血行をよくするため、耳の後ろにあるツボを暖かいタオルなどで温めるのも有効とされています。

乗り物で不調が起きやすい人は、自宅で乗る前に耳のマッサージをしたり、酔い止め薬を服用したりしてすると予防につながります。気象病になりやすい人は、自律神経を整えていくことが大切です。そのためには、自宅でできる簡単なケアからはじめてみるのも良いと思います。

※この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています