Beats(ビーツ)から新しい左右独立型ワイヤレスイヤホン「Beats Solo Buds」が6月20日に発売されました。専用ケースによる充電機能を大胆に省き、12,800円という魅力的かつ手ごろな価格を実現した、Beatsの新しいエントリーモデルを試してみました。
Beats伝統のSoloシリーズに、待望のワイヤレスイヤホン登場
BeatsのSoloと言えば、ブランドの黎明期に立ち上がって以来、Beatsのファンを開拓してきた看板シリーズです。特徴は音質・デザイン・価格の3拍子がそろった、Beatsのエントリー層に刺激的なシリーズであるということ。ヘッドホンのラインナップには、5月にオンイヤースタイルの「Beats Solo 4」が加わったばかりですが、意外にも同シリーズの左右独立型ワイヤレスイヤホンはBeats Solo Budsが初めての製品となります。
カラーバリエーションは、マットブラック/ストームグレイ/アークティックパープル/トランスペアレントレッドの4色。今回は最も特徴的な、透明ケースのトランスペアレントレッドの実機を借りてみました。
イヤホン本体は透明ではなく、Beats Soloシリーズが伝統的に受け継いできたボールドで力強いレッドです。専用ケースがトランスペアレント(透明)なレッドで、ケースのフタにホワイトのブランドロゴを配置しています。左右イヤホンの側面にはボタン式リモコンを内蔵し、ブランドロゴの「b」をクリックすると音楽再生やハンズフリー操作のコントロールが行えます。
攻めのトランスペアレントレッド以外のカラバリは比較的落ち着きのある色合いなので、ビジネスシーンの装いにも合わせやすいと思います。
バッテリーレスのケースで小型化。音楽再生は最大18時間
筆者は年間を通してたくさんのワイヤレスイヤホンを取材していますが、Solo Budsのあまりに小さなケースを目の当たりにした時には言葉を失いました。なぜこんなにケースが小さいのでしょうか?
答えは、ケース内蔵のバッテリーでイヤホンを充電する機能がないからです。イヤホンケースのUSB-C端子に電源ケーブルを接続すると、イヤホンに直接パススルー充電されます。ケースを含むイヤホンの重さを可能な限り軽くすることに注力したこのコンセプトは、とても斬新だと思います。片手に心地よく収まるサイズ感なので、いつも肌身離すことなく持ち歩きたくなります。
Solo Budsのイヤホンには、ノイズキャンセリング機能を搭載するスタンダードモデル「Beats Studio Buds+」(2023年発売/直販24,800円)よりも大きなバッテリーセルが内蔵されています。Beatsが独自に設計したBluetoothオーディオのチップは、駆動時に消費するバッテリーを最小限に抑えるように制御します。
その結果、イヤホンは満充電から最大18時間の連続再生が楽しめます。ワイヤレス充電には非対応ですが、PCだけでなくiPhoneやAndroidスマホからUSBケーブルを使ってSolo Budsを充電できます。
高音質サウンドも真面目に追求
Beats独自設計のダイナミックドライバーの振動板口径は8.2mm。2層構造のドライバーをアコースティックノズルと平行に向けて配置したことで、ドライバーから生まれる鮮度の高い音がまっすぐ耳に届く構造としています。
ハウジングの後部にはレーザー成形による細いスリット(通気孔)があります。このスリットが振動板の振幅動作によって生まれる空気の逃げ道として機能することにより、振動板が自由に、かつ軽やかに動けるようになります。サウンドの面では低音の応答性能、あるいは音像の明瞭度の向上につながります。また、ハンズフリー通話の音声もクリアに聞こえます。
Solo Budsは左右イヤホンのスリット開口部近くに音声通話用のデジタルマイクを内蔵しています。Beats独自の機械学習によるノイズ学習アルゴリズムと組み合わせて、音声通話中の背景ノイズを軽減して声の聴き取りやすさを高める機能もあります。
今回は筆者がSolo Budsを装着し、オーディオ担当の編集者に通話時の音声を聞いてもらいました。(編集者側には)筆者の声がしっかりと聞こえるものの、商業施設の店内アナウンスなど周囲の音も環境によっては拾ってしまうこともあったようです。またSolo Budsの場合、イヤーチップによる高い遮音効果が得られる一方で、外音取り込みの機能がないので、イヤホンを装着したままだと会話の声が大きくなりがちです。高品位な音声通話体験にいっそうこだわるのであれば、安定感のあるBeats Studio Buds+と比べてみることをおすすめします。
Solo Budsの音質チェック、Studio Buds+と聴き比べも
続いて、Solo BudsをiPhone 15 Proにペアリングして音質をチェックしました。特徴を比べるために、Beats Studio Buds+も用意しました。楽曲はApple Musicで配信されているブルーノ・マーズの『24K Magic』を聴いています。
Studio Buds+と同様に、Solo Budsも素直でフラットバランス。音楽という素材が持っている魅力を、イヤホンがむやみな味付けをすることなく、ありのまま引き出そうとするチューニングです。近年のBeatsによるヘッドホン・イヤホンに共通する特徴をSolo Budsも継承しています。
サウンドの情報量と力強さについては、上位機種であるStudio Buds+に軍配が上がると思います。特にStudio Buds+はノイズキャンセリング機能を搭載しているので、ボーカルが迫り出してくるような立体感、低音の躍動感が美味しく感じられます。Studio Buds+のエッセンスをしっかりと受け継いでいるSolo Budsも見事なエントリーモデルだと思います。
もしも初めてSolo Budsを聴いた時に、中低音域がとても物足りなく感じるようであれば、それは自身の耳にイヤーチップのサイズが合っていないことを疑うべきです。正しいサイズのイヤーチップを選んでいないのは、たとえて言うなら夏の暑い日に窓を開け放ったままエアコンをかけているようなもの。耳の中に音が満ちあふれるような充実感が得られません。
筆者はBeatsのイヤホンはいつも「L」サイズのイヤーチップがベストフィットします。これからSolo Budsを購入した後に、サウンドの充実感や遮音性能に気になることがあれば、繰り返しになりますがイヤーチップのサイズを見直してみましょう。
ぶ厚くなったBeatsワイヤレスイヤホンのラインナップ
現在のBeatsはアップル傘下にあるオーディオブランドです。アップルのAirPodsシリーズと同じく、Solo BudsもiPhoneにペアリングすると「設定」アプリの直下に「Solo Buds」のメニューが現れ、本体操作のカスタマイズなどができるようになります。Solo Budsを耳に着けていることを自動判別する「自動耳装着検出」や、「探す」アプリで遠隔探索する機能などもAirPodsシリーズと同様に備えています。ただし、空間オーディオやノイズコントロールには非対応です。
Beats独自のチップにより、Androidスマホにも「Beats」アプリを入れれば、iPhoneと同じ使い方ができる点もSolo Budsの特徴といえます。
1万円台前半から買えるSolo Budsが加わったことで、Beatsの左右独立型ワイヤレスイヤホンのラインナップに一段と厚みが増してきました。コンパクトなノイキャン搭載のStudio Buds+、アップルのデバイスと組み合わせればドルビーアトモスによる空間オーディオ再生やダイナミックヘッドトラッキングも楽しめる最上位のBeats Fit Proとも比べながら、自分にとって最良のBeatsイヤホンを見つけてください。