アップルが先日の世界開発者会議「WWDC24」で発表した注目の話題は、AIを活用したApple Intelligenceだけではありません。Apple Watchユーザーにきっと役立つ、watchOS 11のユーザー思いな便利機能をピックアップします。
機械学習パワーで「映える写真」の文字盤が登場
毎年、WWDCのタイミングで、Apple Watchの新しい文字盤が発表されます。今年はその種類が少なめでしたが、「写真」の文字盤が機械学習のパワーで大きく変わりそうです。
ペアリングしたiPhoneの「写真」アプリに保存した人物のポートレート、ペット、自然や都市の風景など映える写真を、watchOSが文字盤の壁紙画像として提案してくれます。
新しい独自の機械学習アルゴリズムは、人物の写真をピックアップする時は目をつぶっていたり、くしゃみをしているような写真を自動的に取り除いてくれます。もっとも、ヘンな顔の写真をあえてiPhoneに残していれば、の話ですが。風景や人物以外の被写体も、ウォッチの画面に表示する際には、構図を自動的に美しく整えてくれます。
写真の文字盤は、ユーザーが手首を上げたり画面をタップすると、自動的に次の写真に表示を切り替えてくれます。その際に都度、新しい写真の文字盤は「時刻を表示」の位置も構図に合わせて最適化します。人物やペットの顔など、メインの被写体に被らないよう、時刻表示の位置を上下左右の位置にダイナミックに切り替えてくれるわけです。
時刻表示のフォントやスクリプトのスタイルは、文字盤の設定から自由に選べます。写真をモノクロ表示にしたり、モノトーンの色を重ねてスタイリッシュに飾ることもできます。カスタム作成した写真の文字盤が気に入ったら、Apple Watchの画面長押しから編集モードに入って「共有」もできます。
ウォッチのウィジェットが種類豊富に、より賢くなる
watchOS 10から新しく加わったウィジェット機能の「スマートスタック」が賢くなります。
ユーザーが「自分のウィジェット」として常設できるウィジェットの数は、大小合わせて11件までの上限があります。watchOS 11からは、常設していないウィジェットも、ユーザーが必要な情報をタイムリーに見られるように自動で提案してくれます。
例えば、自宅の玄関に設置したスマートロックが「ロックのかけ忘れ」を検知したら、「ホーム」アプリを介してスマートスタックのウィジェットが表示されます。iOSの一部アプリが対応する「ライブアクティビティ」も、watchOSのスマートスタックとしてウォッチの画面から確認できるようになります。
watchOS 11には新しいウィジェットも加わります。周囲で流れている音楽をすぐに聴き取って調べられる「Shazam」、このあと紹介する「翻訳」、1日に歩いたり走った移動距離を教えてくれる「距離」などが便利に使えそうです。
アップルは、2023年にwatchOS 10をリリースした際に初めて、Apple Watchのスマートスタックのデベロッパ向けAPIを公開しました。
watchOS 11のデベロッパ向けのAPIには、時刻や日付など関連キューを組み込むことで、アプリの重要な情報を最適なタイミングでスマートスタックに表示させる新しいツールが加わります。iOSのライブアクティビティと連携して、インタラクティブ性のあるウィジェットも作れるようになります。watchOS 11から「ダブルタップ」のAPIも新たに加わるので、サードパーティのアプリがApple Watchのスマートスタックとより密接に連携します。
アクティビティリングがときどき「お休み」できる
Apple Watchをフィットネストラッカーとして日々活用している人は、ムーブ/エクササイズ/スタンドの「アクティビティリング」のゴール達成を毎日楽しみにしていると思います。
ただ、時には体調を崩してしまったり、海外まで飛行機に乗って長旅に出ることがあって、やむなくアクティビティリングを閉じられないこともあります。watchOS 11から、ユーザーがゴールスケジュールを日ごとにカスタマイズしたり、無理のないトレーニングができるように「休息日」が設けられるようになります。
アクティビティリングの記録を一時停止をすると、「月間チャレンジ」などのゴール達成にはどのような影響があるのでしょうか? 例えば、筆者の2024年「6月チャレンジ」は、1カ月以内に25回(=25日)のエクササイズのリングを閉じることです。もし期間内に一時停止を何度か行使して、トータルの記録日数が25日を下回ってしまうと、月間チャレンジは失敗となります。
iOSのフィットネスアプリに並ぶ「概要」タブには、アクティビティリングの経過やエクササイズの履歴が表示されます。iOS 18では、概要タブの項目をユーザーが自由にカスタマイズできるようになります。歩数やマインドフルネスなど、毎日続けて行うアクティビティの成果を個別に概要タブに並べて見ることも可能です。
ほかにも、Apple Watchで計測できるワークアウトの種類が増えます。追加される内容はサッカー、アメリカンフットボール、オーストラリアンフットボール、アウトドアホッケー、ラクロス、ダウンヒルスキー、クロスカントリースキー、スノーボード、ゴルフ、アウトドアローイングです。
ウォッチで毎日の健康状態が見られる「バイタル」
「バイタル」は、watchOS 11に新設されるアプリ。1日単位で移り変わるApple Watchユーザーの健康を見守ってくれます。
ユーザーがウォッチを身に着けて眠っている間に計測した、心拍数/呼吸数/手首皮膚温/血中酸素レベル/睡眠時間を固定の項目として、健康指標を導き出します。バイタルの変遷は、ウォッチを身に着けて7日間続けて眠ることで、データが把握できるようになります。
ウォッチのバイタルアプリは、上下2つのセクションに分かれて表示されます。上側には5つの指標の変化、下側には健康データのサマリー評価が表示されます。5つの測定項目のなかから、2つ以上の項目が異常な値を測定した場合には通知も届きます。
5つの健康指標は、アップルのクリニカルチームが「人の健康状態を最もシンプルに、かつ正確に把握できる指標」として選ばれました。それぞれの変化を追いかけることで、ユーザーの健康指標を正確に把握できるそうです。
さらに、iOSのヘルスアプリから「バイタル」の項目を開くと、血圧に血糖値、月経、体温など、Apple Watchのセンサーだけでは計測できない情報を手入力で追加できます。あるいは、サードパーティーのBluetooth対応ヘルスケアデバイスが計測した値を入力して、より正確な健康指標の把握に役立てることもできます。
ヘルスケアアプリに蓄積される健康指標は、49日間の計測を続けるとさらに「バイタルのトレンド」として横串を刺した変遷の結果として見られるようになります。
「バイタル」アプリを上手に活用すれば、Apple Watchを心臓の健康チェック、睡眠履歴の把握、血中酸素レベルの測定など個別の用途に使っているユーザーが、それぞれの健康指標を束ねながら、自分の健康状態をより広い視野で見られるようになると思います。
トレーニングの効果を最大化。「やりすぎ」も防げる
iOS 18のフィットネスアプリには、新しく「トレーニングの負荷」というカテゴリが加わります。Apple Watchを身に着けて行うトレーニングの負荷が、ユーザーの健康増進・維持のため適した強さとタイミングで行われているかを知ることに役立ちます。
Apple Watchを身に着けてワークアウトを行ったあと、ユーザーは10段階の「エフォート評価」を入力します。28日間のワークアウトのデータが計測されると、ウォッチのアクティビティアプリからは直近7日間の負荷と、過去28日間のトレーニングの負荷を比較して見られるグラフが表示されます。
負荷の内容は「かなり下」「下」「一定」「上」「かなり上」のいずれかに分類され、体への負担の大小を表しています。iPhoneのフィットネスアプリにも記録されるトレーニング負荷を見ながら、体の状態の変化をチェックしたり、反対にケガのリスクなど、現在のレベルのままトレーニングを続けた場合に、ユーザーの健康状態に起きる変化が把握できます。
新しく加わるバイタルアプリの値と関連性も見られます。例えば、ひと晩のバイタル計測値がトレーニング負荷とどう関わったかも、経過の中で把握することが可能です。
トレーニング負荷と健康状態のバランスに関連する解説は、フィットネスアプリから読むこともできます。欲を言えば、トレーニング負荷の変遷をフィットネスジムのコーチなどに相談できると、より効果的な健康増進・維持が図れそうです。筆者も毎日のワークアウトに役立てたいので、watchOS 11の登場後に、Today at Appleなどの機会にコーチングセッションが開催されることを期待したいです。
Apple Watchが自動翻訳機になる
先にiOSとiPadOSで登場した「翻訳」アプリがwatchOS 11にも登場します。
ウォッチに内蔵するマイクに話しかけて日本語から英語など20の言語に翻訳でき、翻訳されたテキストをスピーカーから音声にして出力することもできます。翻訳はウィジェットやコンプリケーションにもなっているので、文字盤に配置すると素速く呼び出せます。海外旅行に出かける時や、日本に訪れる外国人の方々とのコミュニケーションに、毎日身に着けているApple Watchがとても役立ちそうです。
watchOS 11も7月以降、「Apple Public Beta Program」でパブリックベータ版の提供が予定されています。ユーザー思いの先進的な機能をいち早く試せるのが楽しみです。