2024年6月3日に発売された『将棋世界2024年7月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)では、プロ棋士が2023年度のベスト対局を選ぶ特別企画「熱局プレイバック」と、将棋ファンが2023年度のベスト対局を選ぶ新企画「将棋ファンの熱局プレイバック」を同時掲載しています。
後編となる本稿では、将棋ファンが選んだ2023年度の名勝負ベスト5+αを寄せられたファンの声とともに抜粋してご紹介します。ファンたちの心に突き刺さったのはどの対局だったのでしょうか?
第5位:▲菅井竜也八段ー△豊島将之九段(第82期順位戦A級)
「将棋界の一番長い日」と言われるA級順位戦最終局。 その中でも、豊島将之九段が名人挑戦を決めた1局が5位にランクインしました。 劣勢の豊島九段が繰り出した自陣に駒を引き付ける手には、「絶対に負けない」という思いがこもっていました。
【将棋ファンの声】
・後手の飛車を使った受けが印象に残ったため(はまち)
・菅井先生の勝ったら好手と言われていた手と、そんな手を指されながらも簡単に勝たせない豊島先生の攻防が面白かったです。 江東区の控え室(山本先生)の検討がX(Twitter)上で盛り上がる対局はたいてい好局。(匿名)
・苦しいところあきらめず57飛から立て直しての逆転がすごかったから(しのぶ)
・名人挑戦がかかった大一番でピンチの豊島先生が指した5七飛が最後2枚龍となって大活躍したのが印象的でした(ぴよこ)
・終盤、豊島先生の二枚龍からのよせが凄かったです。(MAYU)
第4位:▲佐々木勇気八段ー△藤井聡太竜王・名人(第73回NHK杯戦決勝)
藤井聡太竜王・名人が佐々木勇気八段を下し、優勝を飾った第72回NHK杯戦。 それから1年、またしても決勝の舞台に上がってきた2人がぶつかった対局が4位にランクインしました。 序盤から終盤までハイレベルで、優勝者を決めるにふさわしいしびれるような1局でした。
【将棋ファンの声】
・とにかく速い!!聡太先生が指すのが待ちきれないと言わんばかりの勇気先生の様子が印象的でした。(森山)
・1年前と同じ決勝の舞台で大逆転で絶対王者を倒したところ。(信太裕之)
・藤井聡太八冠に研究勝負で打ち負かしたから(ジャックフルーツ)
第3位:▲村田顕弘六段ー△藤井聡太竜王・名人(第71期王座戦本戦)
第3位は、村田顕弘六段の独特な序盤戦術と藤井聡太竜王・名人の終盤力が光った1局です。 八冠制覇に向けて最後のタイトル「王座」挑戦を狙う藤井竜王・名人に対し、村田六段は自身の名を冠した得意戦法「村田システム」をぶつけます。 村田システムの猛威に苦しめられた藤井竜王・名人でしたが、終盤に妙手を連発し、大逆転勝利を収めました。 村田六段も敗れはしたものの、その意欲的な指し回しが評価され、のちに升田幸三賞特別賞を受賞しています。
【将棋ファンの声】
・藤井聡太先生が村田システムに序盤から苦慮されて一分将棋になるまで追い詰められてた対局だったから(丸瀬李菜)
・最終盤までハラハラドキドキさせてくれ、また最後の詰みが素晴らしかったから(さき)
・近年稀に見る熱戦、攻守が入れ替わり詰みを逃した瞬間に仕留める鋭さ。相手に武器(角交換)を渡さず終始自分の土俵で闘い続けた新村田システム。 当時出張で移動中でしたがABEMA中継に釘付けでした(南風)
・村田六段会心の指し回し、藤井七冠の△6四銀~△7五銀までの衝撃的な逆転術(Ttt)
・村田システムここにあり! 結末も含めて記憶に残る一局でした(Rhythm)
・23年度、最も印象に残った一戦。そして八冠へ(りさぼん)
・終盤に至るまでの村田六段の作戦・指し回しがすごかった。 藤井竜王・名人の△6四銀以下の逆転術。△8八竜以下の詰みも驚いた。(ゆう)
・絶体絶命と思われたところから、△6四銀や△5九金と妙手連発で勝利をたぐりよせた藤井執念の一局。 村田六段も独自のシステムで絶対王者を土俵際まで追い詰め、見どころ満載でした(葛岡祥)
・△8八飛成の興奮には勝てない(Kiseki)
・シン村田システムの衝撃(スズ)
・村田システム(赤トンボ)
・一瞬のスキをついた劇的な逆転(bolt)
・村田システムで圧倒的優位で99%までいったのに藤井八冠が逆転した対局(ウエムラヤエ)
・信じられない大逆転(匿名)
・村田六段が勝ってもおかしくない将棋だった。村田システムの優秀性を世に示した(よしりん)
第2位:▲藤井聡太竜王・名人ー△豊島将之九段(第71期王座戦挑戦者決定戦)
第3位の村田顕弘六段戦で何とか勝利を収めた藤井聡太竜王・名人は、挑戦者決定戦に駒を進めます。 対するは強敵・豊島将之九段。 双方1分将棋が続く激闘の中、互いに技を繰り出し、見るものを熱くさせてくれます。 結果こそ藤井竜王・名人に軍配が上がりましたが、どちらが勝ってもおかしくない1局でした。
【将棋ファンの声】
・白熱の一分将棋でハラハラしました。 ABEMA、囲碁・将棋チャンネル、ロキポ、全て見ていましたが、天彦九段の終盤の見え方が群を抜いていて、それだけに迫力が伝わってきました(匿名)
・形勢が目まぐるしく入れ替わり、一分将棋の中で両者死力を尽くした名局。まさに熱闘だったと思います(mint)
・個人の見解ですが熱局は逆転将棋よりもどちらが勝つかわからない将棋だと思っています。 名局賞もとりましたが秒読みが続く視聴者ものめりこんでしまうような熱い将棋だとおもいました(匿名)
・一分将棋からの熱戦でお互いに手を渡すタイミングがそこで?ってなる局面で寿命が縮まった(そのd)
・最終盤ドキドキすごかったから(しのぶ)
・1時間近く続いた一分将棋の果てに豊島先生が静かに投了、遠くでサイレンが鳴り響き、1篇の映画のように心揺さぶられた名局でした(ぴよこ)
・手に汗握る大熱戦が印象的でした(Rhythm)
・終盤で形勢が揺れ動く、まさに名局でした(MAYU)
・形勢が何度も入れ替わる熱戦(bolt)
・将棋大賞の名局賞にも選ばれましたが、豊島先生が藤井先生に勝つために積み上げてきたものが見事に盤上に表現されていたように思えました(ゆ)
・終盤で二転三転した将棋で、どちらが勝ってもおかしくなかった(よしりん)
・藤井聡太竜王名人と豊島将之九段の挑戦者決定戦(スズ)
第1位:▲永瀬拓矢王座(当時)ー△藤井聡太竜王・名人(第71期王座戦第4局)
将棋界の歴史が動いたと言っても過言ではない1局が、堂々の1位にランクインです。 永瀬王座1勝、藤井竜王・名人2勝で迎えた本局は、永瀬王座が緻密な研究から勝勢を築き、決着は最終局に持ち越しかと思われたところでの大逆転劇がハイライト。 八冠達成だけではない、互いの意地をぶつけた人間同士のドラマがそこにはありました。
【将棋ファンの声】
・永瀬王座が頭をかきむしったところ。人間味があふれていて永瀬さんに好感を持った(信太裕之)
・永瀬王座の様子に泣けてきてしまいました、大盤解説のコメントで労いの拍手でまた泣けた。王将戦は第1局から全部凄かったですが、やはり第4局を(itarin)
・永瀬が勝ちを逃したことを知り頭を掻きむしった姿は忘れられない(Jun)
・名誉王座と八冠をかけた戦い。人間同士のぶつかり合いに心揺さぶられた(スズ)
・劇的な逆転での八冠達成(bolt)
・大逆転!永瀬さんの悔しさ!八冠誕生!(ウエムラヤエ)
・信じられない大逆転(匿名)
・八冠達成の一局であり、終盤の大逆転が印象的だった(よしりん)
・対局者お二人の鬼気迫る熱戦だと思いましたし、この対局にかかっているそれぞれの思いが溢れているような対局でしたので(あままま)
・八冠達成の対局で将棋の怖さを一番感じたから(さき)
・投了前の永瀬先生の表情、しぐさ。懸ける思いがひりひりと伝わってきて、震えた(けい)
・逆転したあとの永瀬王座の挙動には胸を打たれた。将棋を見ていてこれほど熱くなるとは……という感じ(ゆう)
・この対局を入れない理由がない(たいしょー1225)
・人間を辞める辞めないで湧いた対局前から印象に残った棋戦です。逆転に次ぐ逆転は両者の想いが交錯した人間性を如実に現した名局で後世に語り継がれる対局でした(南風)
・内容は永瀬王座の完勝に近い形であったにもかかわらす、劇的な結末、熱闘と呼べるかわかりませんが永瀬王座のすばらしい指し回しが印象的でした(mint)
・これを逆転しての八冠達成に、立ち上がって拍手するばかり(りさぼん)
番外編:まだまだあるぞ、熱い支持を集めた名局の数々
惜しくもランキング入りは果たせなかったものの将棋ファンからの熱い支持を集めた対局の一部と、寄せられた将棋ファンの声を紹介します。
▲豊島将之九段ー△本田奎六段(第71期王座戦本戦)
・戦前のインタビューで本田六段を「強敵」と言われていた豊島九段の作戦は!? 意表を突く3手目▲7八飛の衝撃。将棋界に激震が起きた一局(黄色いすあま)
・三間飛車のインパクト。この後、藤井叡王を囲む会で佐々木勇気八段まで飛車を振っていてインパクトが凄かった(匿名)
・先手の意表の三間飛車が印象に残ったため(はまち)
・新名人が誕生したその翌日、お祝いだけではない気分が渦巻く将棋ファンに新たなる挑戦の希望を感じさせてくれた突然の三間飛車で、快勝を収められた。 内容と共に意味も感じた(りこ)
・豊島先生のまさかの三間飛車に驚き、とてもワクワクしたから(しのぶ)
▲藤井聡太棋王ー△伊藤匠七段(第49期棋王戦第1局)
・タイトル戦番勝負で持将棋に持ち込む、伊藤匠七段の緻密な計算を素直にすごいなと思いました。 伊藤先生は観る将を始めてからずっと応援していますが、成長速度がすさまじく、こちらが置いていかれそうです(森山)
・プロ間での角換わりの研究は深いとは感じていましたが、まさか持将棋まで出てくるとは思いもしませんでした。 確実に将棋の歴史において語り継がれていく一局(葛岡祥)
・持将棋(ヒノエウマ)
・プロ棋戦の角換わり相腰掛け銀の答えの一つが出た対局(そのd)
▲菅井竜也八段ー△藤井聡太叡王(第8期叡王戦第4局)
・2千日手の激闘、3回目の千日手を躊躇した菅井先生の後悔、3回目も辞さない構えの藤井叡王の対比が印象的(mint)
・23年度、藤井王者に振り飛車が肉薄した対局。 菅井先生、惜しい!(りさぼん)
・衝撃の2千日手(Rhythm)
・千日手2回の激闘。現地で観戦していて、両者の負けたくない思いが伝わってきた(けい)
▲永瀬拓矢九段ー△藤井聡太竜王・名人(第17回朝日杯将棋オープン戦決勝)
・永瀬先生が冴え渡っていた一局なので(まい)
・持ち時間短いのに見応えのある一局、この前局も含め永瀬九段はタフですね。 満面の笑顔が印象的でした(itarin)
・藤井聡太八冠に努力で勝つ姿(ジャックフルーツ)
・藤井八冠の終盤力の凄さ(赤トンボ)
今回紹介した将棋ファンの声の一部は、2023年6月3日発売の『将棋世界2024年7月号』にも掲載されています。どの声が掲載されているのかは、実際に手に取って確かめてみてください!
完全版は、6月3日発売の最新号に掲載!!
『将棋世界2024年7月号』
発売日:2024年6月3日
特別定価:920円(本体価格836円+税10%)
判型:A5判244ページ
発行:日本将棋連盟
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