現在上映中のVシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』(監督:渡辺勝也)は、2004年に放送された特撮テレビドラマ『特捜戦隊デカレンジャー』20周年を記念して作られた作品である。地球の警察では手も足も出ない異星人犯罪者=アリエナイザーが起こす数々の凶悪事件を捜査し、真相を暴き、人々の平和と安全を守る使命を帯びた「宇宙警察地球署」の破天荒な刑事(デカ)たちの、20年後のそれぞれの姿が描かれる。
上映記念インタビュー、今回は“バン”のニックネームを持つ赤座伴番/デカレッドを演じるさいねい龍二と、彼が所属する選抜部隊「ファイヤースクワッド」のクールな後輩でプレミアデカレッドになる刑事・江戸川塁を演じる長妻怜央(7ORDER)のスペシャル対談をお送りしよう。
20年が過ぎても決して落ち着くことなく、それぞれの個性を発揮して犯罪捜査にまい進する地球署の仲間たちに対し、バンは現在、有望な若手である塁を支え、育て上げる“先輩”として、以前よりも落ち着きが増したような雰囲気。2人が過ごした東映京都撮影所での日々や、本作でバンと塁の立ち位置の違いについてなど、役柄と同様に頼れる先輩とかわいい後輩との自由なトークをお楽しみいただきたい。
赤座伴番/デカレッド役のさいねい龍二、江戸川塁/プレミアデカレッド役の長妻怜央
――初歩的な質問ですが、長妻さんは『デカレンジャー』のことを知っていましたか? そして20周年記念作品に出演が決まったときは、どんなお気持ちでしたか?
長妻:もちろん知っていましたよ。子どもだったから“デカ”が刑事を表すって知らなくて、「デカレンジャー? デカいのかな?」なんて思っていました(笑)。今回、出演が決まったと聞いたときは、それはもうめちゃめちゃ嬉しかったです! 子どものころは、誰だってヒーローに憧れて、いつか大きくなったらヒーローになりたい、しかも「スーパー戦隊」のヒーローがいいな! なんて思いますからね。それが成長するにつれ、いろいろな選択肢が増えてくるんですが、俳優の仕事をするようになり、次はどんな役を演じてみようかなとか考えているとき、急に子どものころの夢だった“ヒーロー”とつながって、びっくりしましたね。
さいねい:7ORDERのメンバーからの反応はどうだった?
長妻:いやあ、何も話していないので、知らないんじゃないかなと(笑)
さいねい:情報が出てるから、知らないことはないと思うよ(笑)
長妻:「グループ活動をやりながら、宇宙警察と掛け持ちしていた時期がありました!」とみんなに向かって正式に報告したいと思って……。
さいねい:そんな真剣に『デカレンジャー』に取り組んでいたんだね。ありがとう!(笑)
――役柄では宇宙警察ファイヤースクワッドの先輩・後輩であるお二人が、最初にお会いしたときはどんな印象だったのか、教えてください。
さいねい:1番初めは撮影現場じゃなかったんだよね。
長妻:そうでしたね!
さいねい:東映京都撮影所でお互いの撮影は始まっていたんだけど、同一シーンでの共演をまだしていないとき、たまたまみんなで食事会をすることになって、そこで初めて対面したんだよね。長妻くんは食事の席でも周りに気を配っていたりして、すごくよくできた後輩が来たなあと思いました。
長妻:デカレンジャーのみなさんのチームが完成されていましたし、その輪の中には積極的に入っていきたいと思いました。先輩へのリスペクトって大事だと思うんです。
さいねい:誤解されないように注意して言わないといけないかもしれないけれど、僕たちが昔やってきたようなことをそのまま引き継いでくれているような、好印象しかなかったです。
長妻:うれしいですね。共演する方は僕より年齢がずっと上の先輩ばかりですし、みなさんとコミュニケーションは取っていきたいと思っていました。うわべだけの付き合いだと、現場で気まずくなっちゃうじゃないですか。
さいねい:みんなの気持ちをひとつに、みたいな雰囲気にはなっていたね。
長妻:キャスト同士の交流がある方が、作品の良さにつながるんじゃないかと思います。
さいねい:そうだね。何気ないシーンでも、気持ちが入っていると空気感が違ってきて、それらが全部映像に表れるんですよ。
――長い歴史と伝統を誇る東映京都撮影所での撮影はいかがでしたか? 映画ファンの間でささやかれる「京都の映画人は厳しい」という噂は本当ですか。
長妻:僕も撮影が始まる前、そんなお話を聞いたことがありました。
さいねい:それはもう、ずっと昔の話ですよ。今は全然そんなことないです。昔のスタッフさんが厳しかった、みたいな伝説は僕もよく聞きました。作法を間違えたりすると、メイク室に行っても相手にしてもらえないとか、事前にスタッフの方たちにきちんと挨拶をしないと、照明を当ててもらえないとかね。でも、僕が京都撮影所に出入りさせていただき始めた時……具体的には20年ほど前でも、すでにそれは「邦画黄金時代の、昔の話」でしたね。
――撮影の合間に、京都観光をされたり、料理のおいしいお店に行かれたりしたことはありましたか。
さいねい:なかったですね~。今回は『デカレンジャー』の思い出しかないんです。
長妻:朝がめっちゃ早かったですし、撮影していた以外、どこかへ遊びに行くようなことがありませんでした。
さいねい:どこかへ行ったわけではないけど、撮影の空き時間を使って東映太秦映画村のアトラクション『エヴァンゲリオン京都基地』に遊びに行ったよね。
長妻:行きました! 時間が合う何人か集まって。
さいねい:そんなに長い時間ではなかったけれど、あれは楽しかったなあ。僕ら、この衣装のままで行ったので、めっちゃ『エヴァンゲリオン』の世界観とリンクしていました(笑)
長妻:いっぱい写真を撮りましたね。
さいねい:京都観光はできませんでしたが、映画村も観光名所のひとつですからね。
長妻:龍さん(さいねい)、いつもクールなんですけど、あのときだけはテンション上がっていましたね(笑)
さいねい:写真撮りまくったもんね。これ見てください。ATフィールドを展開したシチュエーションを再現した写真が撮れるんです。
長妻:僕は『エヴァンゲリオン』のことを知らなかったのですが、わからないままいろんな場所をめぐっていました(笑)
さいねい:怜央はATフィールドのところで、変わったポーズを取って写っています(笑)
長妻:これって敵のバリヤー的なものを、強引に破っていこうとする状況だったんですよね。僕はそれを知らずに、「渦の中に吸い込まれてしまう~」みたいにしてました(笑)
後輩・塁と接するバンは…「若手に対してかなり気を使っているのでしょうね」
――塁という人物像について、お二人はそれぞれどんな印象を持たれましたか。
長妻:良くも悪くも、今どきの若者というイメージで演じました。「仕事だけ出来ていればいいでしょ」「コミュニケーションなんて取らなくていいでしょ」みたいな。
さいねい:バンのことは信頼していると思うんですよね。でも、そんな塁をバンが地球署に預けたもんだから大変なことに(笑)。先輩たちがそれぞれ好き勝手に捜査を始めてしまい、理解できなくなった塁がたまらずキレるところがすごいインパクトだった。
長妻:でも、塁があの状況でキレるなんて、個人的にはいい度胸だなって思いましたよ。ああいう生き方してたら、嫌われるじゃないですか(笑)。でも彼は彼なりに、刑事という仕事に強い思いを持っているわけです。「なんなんすか! ちゃんとやってください!」と怒り出す塁の気持ちを、自分なりにしっかり考えて演技に臨みました。
さいねい:今回のバンは、後輩の塁にあれこれ口出しをしないでしょう。僕の想像ですが、おそらくこれまでにもバンの下に新人刑事が配属されて、バンは自分が教わってきたのと同じように指導していたら、音をあげて逃げられちゃったとか、そんな出来事があったと思うんです。あるいは、上の人から厳重注意を受けるとか。そんなことがたびたび起こったことによって、今回は若手に対してかなり気を使っているのでしょうね。上からも「今度こそ、若い奴をちゃんと育てろよ」と強く言われているはずだし、自分自身もまだ若い奴の気持ちを理解できているし、塁のことは“枠を広めに取って”教えているって感じで演技をしました。
長妻:塁は管理されていない“放牧”スタイルで育ててもらってるんですね(笑)
――長妻さんがプレミアデカレッドになる、いわゆる“変身”シーンについての感想をお願いします。変身の先輩であるさいねいさんの反応も気になるところです。
長妻:変身初心者ですから、初心者マークをつけて変身したかった(笑)。実際にSP1ライセンスを構えて変身シーンを撮影したとき、すごく難しいなって改めて感じましたね。完成画面では、当たり前のようにカッコよくポーズを決めているように見えますけど、なかなかすぐに出来るものではなく、何度も繰り返し練習をした上で取り組みました。
さいねい:僕は怜央の変身シーンに立ち会うチャンスがなくて、映像で確認をしました。
長妻:どうでしたか?
さいねい:「エマージェンシー、プレミアレッド!」と叫んでSP1ライセンスを構えるポーズ、あれはまさに時代劇、歌舞伎の世界でいう“見得”なんですね。普通のドラマでお芝居をやっているとなかなか経験できない、特撮ヒーローの中でも一番の見せ場であり、伝統的な文化である。怜央はそういった部分をしっかり理解して、メリハリのきいたカッコいい変身を見せてくれたなって思います。
長妻:うれしいです! 気持ちとしては「素早く変身しないと相手の怪人が逃げちゃうかもしれない」みたいな思いを込めて、スピーディな構えを意識しました。
さいねい:チーマ星で敵ボスの屋敷に踏み込んで、乱闘しているシチュエーションでの変身だから、その判断は正しいと思ったよ。
長妻:敵を目の前にして、堂々と見得を切りながら変身するというのにも憧れましたけどね。
さいねい:そこは臨機応変に(笑)
撮影の合間には“先輩・後輩”ネタでコントのような掛け合い
――本作では、20年前にデカレッドのスーツアクションを担当された福沢博文さんが、ふたたびデカレッドを演じられているんですね。
さいねい:福沢さんは今や『仮面ライダー』シリーズでアクション監督および本編監督を務められているんですけど、特別に京都へ来てくださって、ひさびさにスーツアクターをされているんです。格闘アクションや剣技の見事さは当時のままで、観ていて嬉しかったです。
長妻:僕も福沢さんが演じたプレミアデカレッドのアクションを、側でずっと観ていました。プレミアデカレッドのスーツって、最初は細身だというイメージがありましたが、映像で観ると、頭から首にかけてのラインにボリュームがあって、すごくカッコいいんです。もしも自分があのスーツ、マスクを身に着けても、あんな風には見えないと思います。
さいねい:改めて福沢さんの表現力のすごさを実感しました。
長妻:敵に逃げられて「くそっ」みたいに悔しがるじゃないですか。映像で観ると、表情の見えないデカレッドの悔しさが、すごくリアルに伝わってきます。生で見ているときと、映像のときとでは印象が変わる、というのが興味深かったですね。
さいねい:それは「映像になったときにどう見えるか」を考えて福沢さんが動いているからなんだよね。福沢さんはスーツアクター、アクション監督、そして監督を経験してきて、いくつもの視点が自分の中にある。多方面から自分を見つめられるから、動きに説得力が増しているんじゃないかと思っています。
――最初は先輩たちと壁のあった塁でしたが、捜査を共にするうちに絆が深まっていきました。最後の方で、すっかり地球署になじんだ塁を観ることができたのもよかったです。
さいねい:クランクインした当初から、撮影カメラの回っていないところではずっとあんなノリで、すごく楽しい空気がありました。
長妻:特にバンさんと塁の“先輩・後輩”ネタという感じで、龍さんと僕がコントみたいなかけあいをやって、面白かったですよね。つい、やっちゃうんです(笑)
――劇中ではバンが「あと20年メインでやってやるぜ! 還暦になっても~」と言いますが、ほんとうに20年後のデカレンジャーというのも可能性あるかもしれませんね。藤田まことさんや内藤剛志さんのように、刑事ドラマでは熟年世代の主人公がたくさん活躍していますし。
長妻:いいですね~。20年後の塁は、バンさんのようなベテランだけど現役の刑事になっていたいです。
さいねい:20年後だったら怜央は40代だし、ぜんぜん大丈夫だね。
長妻:バンさんと再会して、今のチームがうまくいかなくてグチる、みたいなシチュエーションはどうですか。「あのときのデカレンジャー、どこに行ったんですかね。全然うまくいかないんですよ……」とか。
さいねい:「あのときの先輩の気持ちが、今になってわかりますよ~」なんてね(笑)
長妻:先輩と2人、屋台でおでん食べて日本酒飲みながら(笑)
さいねい:渋い『デカレンジャー』になりそう!
――最後に、デカレンジャーファンに向け『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』の見どころをお願いします。
さいねい:20年の時を経て、中間管理職になったバンの葛藤を、同じ世代の大人の方が共感してくれたら嬉しいですね。俺もまだまだ頑張るぞ! と元気になってほしいと思います。
長妻:地球署に来てからずっと心を閉ざしている塁が、とある衝撃的な出来事がきっかけとなってデカレンジャーのみなさんに心を開くところ、そこにぜひ注目してください。あれだけのことが起きないと、人の性格というのは変わらないんじゃないかなと思ったりして。「これから先、自分の人生でそんな経験をどれだけ重ねられるかな」って、作品を観ながらしみじみ思ってしまいました。
さいねい:あとは今回、(吉田)友一(デカブレイク/姶良鉄幹役)が高知ロケ実現にあたって、すごく苦労しているのを知っているので、ぜひたくさんの人たちに高知県の名所や名物を楽しんでもらいたいです。
長妻:そうですね! 僕は今回、高知ロケに行けなかったのですが、別な仕事(『地名しりとり 旅人ながつの挑戦』)で以前訪れたことがありました。だから画面に出てくる場所も知っているところが多かったです。「桂浜、知ってる知ってる!」って(笑)。吉田さんの喜ぶ顔が見たいので、みなさん映画館に足を運んでください!
■さいねい龍二
1981年10月8日生まれ。広島県出身。俳優、タレント。2001年に芸能界入り。テレビドラマ『ごくせん』(02年)などに出演後、『特捜戦隊デカレンジャー』デカレッド/バン役でレギュラー出演し、知名度を高める。2015年には活動拠点を広島に移し、各種バラエティ番組で活躍を続ける。
■長妻怜央
1998年6月5日生まれ。茨城県出身。6人組アーティスト・7ORDERのメンバーとして活動する傍ら、俳優としても活躍。テレビドラマ『その結婚、正気ですか?』(23年)、『Sugar Sugar Honey』(24年)で主演。最新出演作は『シークレット同盟』(24年)。