5月25日(土)、26日(日)さいたまスーパーアリーナで開催されたBABYMETAL初主催フェス「FOX_FEST」。2日間を通して約3万人を動員した同フェスDAY2の舞台裏で、BABYMETALとポリフィア(POLYPHIA)のインタビューを敢行。テクニカルな演奏と広がりのある世界観。圧倒的なパフォーマンス力と緻密な表現力でメタルの新しい可能性を示したポリフィア。ギターのティム・ヘンソンとスコット・ルペイジはBABYMETALの「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」に客演しているが、待望の初コラボレーションが今回ライブで実現したのだった。
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ー昨晩、BABYMETALのステージで披露した「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」のコラボレーションの感想から聞かせてもらってもいいでしょうか?
ティム・ヘンソン(Gt):最高だったよ。自分たちのライブよりも楽しかったくらいだ(笑)。
スコット・ルペイジ(Gt):同感だ。
ティム:自分たちの曲よりも気楽にできた。
スコット:そう。音符の数が少ないから、ヘッドバンギングをする余裕もある。
ティム:純粋に楽しめたよ。特にヴァースの部分は、僕たち何もプレイしないから、振り返って君たちのパフォーマンスを拝むことができた。
一同:(笑)。
ティム:前にステージ袖から見たことはあったけど、それとステージ上で振り返って正面からパフォーマンスを見るのとでは全然違う。あれだけ間近で見れたのは最高だった。
スコット:レーザーの照明もやばかったしね。
MOAMETAL:一緒にやってて、ティムと何度か目が合いました。
SU-METAL:この曲が2019年にアルバム(『METAL GALAXY』)に収録されてから、ずっとコラボレーションしたいと思ってたから、今回のステージでようやく完成したって感覚です。大きなステージだったからレーザーを使った演出ができましたし、総合的に「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」を表現できて、みんなに届けられたことがすごくうれしかったです。
ティム:その通りだね。2019年にこの曲が出た後、コロナ禍で全てが延期されてしまって、なかなかこの曲をライブでやる機会がなかったんだけど、今回一緒に演奏できて感慨深かったね。
MOAMETAL:3週間前くらいにラスベガスのフェスで会った時は、今回のステージでコラボレーションできるかどうかまだ分からなかったんですけど、この3週間でポリフィアの皆さんも一生懸命練習してくれて、本当に夢みたいな時間を過ごすことができました。
ティム:自分たちがレコーディングした曲をライブで再現するのは毎回めちゃくちゃ大変で。だからつい「今度も絶対に大変だろうな」と覚悟していたんだけど、実際この数週間練習してみたら、意外と気楽にやれたというか、結果的にめちゃくちゃ楽しかったよ。
ーティムは来日前のインタビューで「BABYMETALは去年アメリカでライブを観て、早くもう一度観たい!と思っていた」と話してくれたけど、日本のオーディエンスを前にしたBABYMETALのパフォーマンスはどうでしたか?
ティム:もう、あり得なかったよ。パイロも、レーザーも、キラキラも、何から何までぶっ飛んでいて。そういう演出が整った環境でのライブを今回観ることができて、うれしかった。前回会った時は、アメリカのどこかのフェスだったと思うけど、たくさん出演者がいる中の1バンドでしかなかったのに対して、今回はBABYMETALの本来あるべき姿のライブということで、それが体験できたのは最高にクールだったし、共演させてもらえたのも最高の経験になった。
ーBABYMETALは日本を含め25カ国を駆け巡る自身最大規模のワールドツアー「BABYMETAL WORLD TOUR 2023 - 2024」を沖縄で終えて、海外アーティストを招いた主催フェスとなったわけですが、どんな気持ちでライブに臨みましたか?
MOAMETAL:今年ラストの日本公演ということで、いい締めくくりができるライブがしたいと思い、私たちがお勧めしたいバンドを日本に紹介したいという気持ちで今回のフェスを作りました。日本のお客さんはポリフィアも含めて今回出てるバンドはみんな好きだと思うので、私たちをきっかけにいろんな音楽を聴いてほしいし、ポリフィアのことも好きになってほしいって気持ちで挑んだんです。私たちは主催者側だったけど、多分私たちが一番楽しんでたと思います。本当に楽しいライブだったので、この時間を共有できてよかったなって思ってます。
ティム:その気持ちわかるな。昨日みんなで話していたんだけど、日本のオーディエンスは最初こっちから盛り上げていくのが大事で、そうするとライブが終わる頃には自然とみんなが熱狂してくれている。パフォーマンスをする側としては、みんなに楽しんでもらうために、最初から自分たちが楽しまなきゃいけない。僕たちからすると、今回出演させてもらえて本当に感謝しているし、日本のオーディエンスに少しでも自分たちの音楽を好きになってもらえたらうれしい。
ポリフィアとBABYMETALは「SWAG」
ーポリフィアにとって『Remember That You Will Die』(2022年)の曲を日本でやるのは初めてでしたよね。ライブを観てあらためて感じたのは、いろんな表情があるサウンドなのに意識はずっと「音楽」にフォーカスしたままでも最高!っていうのが、あなたたちのライブの楽しさなのかなと思いました。メンバーそれぞれライブパフォーマンスで大事にしていることは何ですか?
クレイ・アーシュリマン(Dr):俺が一番大事にしているのは、他のメンバーと楽しむこと。演奏のことはあまり考え過ぎないように心がけている。というのも、ツアーの準備段階で、みっちり練習して身体に叩き込んでるからね。だから、ステージに上がって、オーディエンスを前にした時は、4人が夢中になって演奏に没頭している時が一番楽しい。だから楽しむことを一番大事にしている。
スコット:俺が大事にしているのはエネルギーで、自分のメンタルな部分だね。いい精神状態でステージに上がるようにしないと、緊張から、一つの間違いが雪だるま式にどんどん自分を追い詰めてしまうことになる。だからクレイが言っていたように、他のメンバーと楽しむことは、自分にとって本当に大事なんだ。ティムもさっき言っていたけど、自分たち4人が楽しく演奏をして、いいエネルギーを発散していたら、オーディエンスもそれを観て、楽しいと感じてくれるんだと思う。まず自分たちが楽しむことで、周りにもその楽しさが伝わる。実際は、ライブが始まってから数曲目で本調子に達することもあるけど、そこに行き着いてしまえば、演奏に没頭できる。だから大事にしているのはエネルギーだよ。
ティム:同じだね。クレイが言っていたように、技術的に求められるものが多い音楽だから、そのあたりの部分は準備段階で何時間も練習を重ねて徹底的に身体に覚え込ませてある。だから、いざツアーに出てしまえば、余計なことは考えず、目の前のことに集中するだけだ。これまでで自分が最悪だったと思うライブは、その時にコンサート以外の考え事をしていたのが原因だった。そういう反省を踏まえて、ツアーをするミュージシャンとして大事にしているのは、余計なことは全て忘れて、その場に集中することだね。
クレイ・ゴバー(Ba):1年半ずっと演奏してきた曲をまた日本に戻ってきて演奏できることを楽しんでいるよ。日本は自分たちにとって特別な場所で、コロナ禍前までは結成してからほぼ毎年日本に来てプレイしていた。だから、こうしてまた自分たちの音楽を日本で演奏できることの感謝の気持ちを大事にしている。コロナ禍の2年間は、また戻ってこれるか見通しが全くなかったからね。こうやってまた日本でライブができるなんて、最高の仕事じゃないかと身に染みて感じてるよ。
ー昨晩のコラボレーションを観て一番ビックリしたのが、ティムとスコットの強烈な個性を前に、SU-METALのボーカルが同じレベルで向かい合っていたことです。ポリフィアも自分たちの曲でゲストボーカルを迎えることはありますが、ミュージシャン目線で見てSU-METALのボーカルスタイルってどう思いますか?
スコット:もう、最高でしょ。
ティム:君の言う通りだよ。自分たちがギターを鳴らして、SU-METALが歌うことで、それが特別な高揚感を生む。考えてみたら、ゲストボーカルを迎えた曲をライブでやったのは今回が初めてかもしれない。まあ、これはBABYMETALの曲に自分たちがゲストで呼んでもらった曲だけど。でもコラボしたボーカルとライブで共演したのは初めてだよ。
スコット:今まで気づかなかったけど、そうだね。初めてだね。
SU-METAL:初めてになれてうれしいです(笑)。
一同:(笑)。
—SU-METALさんは2人のギターを間近で感じてどう思いましたか?
SU-METAL:ギターのサウンドについてすべて細かく分かっているわけじゃないんですけど、アーティストって立っている姿にオーラがあったり、歌声にオーラがあったりするのはなんとなく分かるんです。そういう意味で、耳から聞こえる2人のギターサウンドが、オーラを放っていて、それぞれの楽器がしっかりと主張して、そのサウンド自体がティムとスコットそのもの、みたいな感覚があって。存在感がすごくて、でも本人たちはすごく平然とした顔で弾いてる。そういう経験を自分はしたことがなくて、自分としては新たな音楽体験でした。カッコよかったし、歌ってて気持ちよかったです。
ティム:僕らは音楽性もパフォーマンスも全然違うからね。君たちはダンスをして歌も歌う。1時間のライブで相当な運動量だろうな、と思って見ている。僕とスコットの場合、動いているのは基本、指先だけだからね(笑)。君たちが全身運動なのに対して、僕たちは指先運動だ。
ーミュージシャンシップという言葉があるように、演奏技術とは別に必要な知識やセンスを磨き、豊かな表現力につなげようとするのもアーティストのあり方の一つですよね。そういう点で普段から何か意識していることはありますか?
ティム:アメリカでは、それを一言で「SWAG」と言うんだ(訳注:その人の持つスタイル、センス、魅力を意味するスラング)。
クレイ・ゴバー:それに尽きるね。
スコット:本当は何か言おうと思っていたんだけど、今のを聞いて、何も言えなくなったよ(笑)。
MOMOMETAL:自分はダンス面で手先の動きとか、細かい動きがきれいに見えるように、丁寧に踊るようにしています。
ティム:表現する上でのそういう細かいところへのこだわりが、SWAGにつながるんだと思う。
スコット:細かい部分を気づいてもらえた時はうれしいよね。例えば使うピックアップを変えた時、あとで「彼はここでこんなことをしている」と分析してる動画とかを見ると、「細かいところチェックしてるな」ってなる(笑)。
ー最後に、お互いに何か聞いておきたいことはありますか?
ティム:今度はポリフィアの曲でBABYMETALにゲスト出演してもらえないかな。
BABYMETAL:わあー!
ティム:僕からの質問は以上。
一同:(笑)。
MOAMETAL:うれしい!
SU-METAL:曲が実現したら、ぜひ一緒に踊ってください。
ティム:踊り方を教えてくれたら。
スコット:おい、そんなの誰も見たくないだろ。俺たちが踊る姿なんて。
クレイ・ゴバー:いい年した男が吐く姿を見せることになる(笑)。
Photo by Taichi Nishimaki