第83期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は6月11日(火)に開幕。この日はC級1組17局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち、関西将棋会館で行われた西田拓也五段―藤本渚五段の一戦は121手で藤本五段が勝利。終盤の競り合いを抜け出してC級1組昇級後の初戦を白星で飾りました。
3度目の顔合わせ
両者の対戦成績はこれまで1勝1敗。振り飛車党の西田五段が得意の四間飛車に構えたのに対して居飛車党の藤本五段が右銀急戦の作戦を打ち出したのは予想された戦型のひとつです。後手の西田五段は左に上がった金の守備力で手厚く面倒を見る方針を採りました。
西田五段は続いて強い受けで主導権をつかみます。4筋の歩を突いて居飛車の銀を引っ張り込んだのはこの銀を負担にさせる狙い。素直に応じては悪くなると見た藤本五段が攻め合いで応じたことで局面は一気に激しさを増しました。銀桂交換が行われて戦いは一段落。
連続昇級に向け好スタート
先手陣への飛車成りを見据えている西田五段ですが、藤本五段からの端攻めを逆用する方針を採ったのが上手い指し回しでした。こうなると高い位置に陣取る飛車が敵玉頭への圧力として働きます。西田五段優勢かと思われた最終盤にドラマが待っていました。
角を切って一気の寄せに出た西田五段ですがこの手が失着。先手に玉の早逃げをされてみると攻め駒不足でもうひと押しが足りません。九死に一生を得た藤本五段は手にした豊富な持ち駒で反撃を開始、金捨ての王手で玉頭の勢力を逆転させたのが決め手となりました。
終局時刻は22時51分、攻防ともに見込みなしと認めた西田五段の投了により藤本五段の開幕局勝利が決定。終盤で優位に立ってからは一度も形勢を譲らない藤本五段の終盤力が光る一局となりました。このほか、同じく昇級組の冨田誠也五段も白星発進を決めています。
水留啓(将棋情報局)