俳優の松下洸平が、ミュージカル『ケイン&アベル』の主演を務めることが11日、明らかになった。
同作はジェフリー・アーチャー氏のベストセラー小説のミュージカル化作で、東宝/キューブ製作により上演される。2025年2月をもって帝国劇場が建て替えのためしばしの休館期間に入るが、帝劇の精神を宿した東宝ミュージカルの最新作として製作。1970年に帝劇で生まれ、1972年にロンドンでのライセンス上演を成し遂げた、マーガレット・ミッチェルの小説『風と共に去りぬ』の世界初ミュージカル化作品『スカーレット』と同様に、東宝が名作小説の世界初のミュージカル化に挑み、世界初演として上演する。
20世紀初頭、ボストンの名家ケイン家に生まれ、祝福される人生を歩むウィリアム・ケイン、ポーランドでドイツ侵攻により孤児となり、何とかアメリカに辿り着いたヴワデク(後のアベル・ロスノフスキ)という宿命の2人が同じ日に生まれる。ケインは銀行頭取に、アベルはホテル王へとのし上がり、2人は出逢う。宿命的に出逢った2人は、戦い、失い、再起し、また衝突し、彼ら自身の世界を変えていく。ジェフリー・アーチャーの壮大で比類ない面白さのドラマが、今ミュージカルとなる。
音楽は、東宝ミュージカルとかけがえのない絆で結ばれ、2001年日本初演『ジキル&ハイド』から始まり、『ルドルフ~ザ・ラスト・キス~』、今夏にハロルド・ピンター劇場で英国カンパニーが12週間上演を行う最新作『四月は君の嘘』まで数多くのミュージカルを手掛けるフランク・ワイルドホーンが務める。
脚本・演出は、『ニュー・ブレイン』(09年)、『ザ・ミュージック・マン』(23年)の日本版演出が高く評価されるダニエル・ゴールドスタインが務める。すでにワイルドホーンのもとにクリエイティブスタッフが集まり、脚本や音楽の打合せは順調に進行しているという。さらに、歌詞:ネイサン・タイセン、編曲:ジェイソン・ハウランド(『リトル・ウィメン~若草物語~』(09年)、振付は、トニー賞2022-2023に2作品(『&Juliet』『KPOP』)でノミネートされたジェニファー・ウェーバーが手掛ける。
ウィリアム・ケイン役は、松下洸平が、東宝ミュージカル初主演として臨む。アベル・ロスノフスキ役は、松下優也が初共演で演じる。東宝ミュージカルの新たな第1歩に相応しい宿命のライバルを演じることとなる。さらに咲妃みゆ(フロレンティナ)、知念里奈(ザフィア)、愛加あゆ(ケイト・ブルックス)、上川一哉(ジョージ・ノヴァク)、植原卓也(マシュー・レスター)、竹内將人(リチャード・ケイン)、今拓哉(ヘンリー・オズボーン)、益岡徹(アラン・ロイド)ら豪華キャストが集結した。そして宿命のライバル同士にとって最大の衝突を生むきっかけとなるデイヴィス・リロイ役を、東宝ミュージカルを牽引してきた山口祐一郎が演じることが決定。2025年1・2月に東急シアターオーブ、2025年2・3月新歌舞伎座での上演を予定している。
■松下洸平 コメント
・ミュージカル『ケイン&アベル』にかける意気込み
たくさんの方に愛され続けている作品のミュージカル化、さらに世界初上演作品の主演という貴重な機会をいただき、とても光栄です。
原作を大切にしながらも、作品作りの醍醐味でもある、僕らなりの僕らにしか出来ない『ケイン&アベル』を目指したいと思っています。
“世界初”という難しさもありますが、かけがえのない時間になると思います。
精一杯務めます。
・東宝ミュージカル初主演となる気持ち
6年振りのミュージカル出演でこのような大役を頂き、嬉しい気持ちと不安が入り混じっています。
登場人物それぞれに大切な物語があるので、独りよがりにならず、楽しみながら素晴らしいキャストの皆さんと一緒に作っていけたらと思っています。
・松下優也とライバル役を演じること、また、松下優也の演技についての印象
とても上品で、美しい歌声をお持ちの方という印象を持っています。
音楽活動もされていますし、好きな音楽カルチャーは芝居にも反映されると思っていて、色気と強さ、リッチな雰囲気の中にある寂しさを持ち合わせたアベルを演じる松下優也さんと、稽古や本番で向き合える事が今からとても楽しみです。
・ワイルドホーンをはじめ海外のクリエイティブスタッフとの共同作業について
ワイルドホーンさんとは、2017年に『スカーレット・ピンパーネル』でご一緒させていただいた事があり、力強い旋律と壮大で美しい音楽がとても魅力的です。ワイルドホーンさんの音楽に再び触れられる事、海外のクリエイティブスタッフの皆さんと新作ミュージカルが生まれる瞬間を味わえること、とてもワクワクしています。
言葉や文化の違いを超えて、オリジナリティ溢れる熱い物語、ミュージカル『ケイン&アベル』にしたいと思っていますので、楽しみに待っていてください!
■松下優也 コメント
・ミュージカル『ケイン&アベル』にかける意気込み
ジェフリー・アーチャーさんの伝説のミリオンセラー「ケインとアベル」が世界で初めてミュージカルになります。海外の素晴らしいクリエイターの皆さんと東宝が作り上げる新作ミュージカルに自分が出演させていただけることを、今からワクワクしています。
「世界初」ということで緊張感もありますが、その緊張感を楽しみながら、新しい作品をみんなで一緒になって作り上げていければと思います。僕もプライドをかけて日本発のミュージカルをお届けできたらなと思っています!
・松下洸平とライバル役を演じること、また、松下洸平の演技について
自分が演じさせていただくアベルという役はポーランドに生まれ、そして孤児になって…そんな苦しい環境の中で彼自身のクレバーさやハングリー精神によって、ホテルチェーンの経営者に成り上がっていきます。そして松下洸平さん演じるケインとは、同じ日に生まれつつも対照的な境遇で育った役を演じます。
洸平さんは、ものすごく細かくて丁寧で繊細なお芝居をされる印象を持っています。一緒にお芝居を作り上げていけることが、今からすごく楽しみです。
今まで誰も演じたことのない新作のミュージカルなので、たくさん洸平さんともディスカッションをしながら、稽古場で楽しく一緒に新しいものを作っていけたらいいなって思います。
・ワイルドホーンをはじめ海外のクリエイティブスタッフとの共同作業について
ワイルドホーンさんの作品には『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』の楽曲など、世界中で歌われる名曲がたくさんあって、『ケイン&アベル』でもどのような曲が生まれるのか今からとても楽しみにしています。今回の『ケイン&アベル』では、世界で初めて自分が歌えるということがすごく光栄なことですし、誇らしいことだなと思っています。
過去には自分も、ミュージカル『太平洋序曲』という作品でも海外のクリエイターの皆さんと様々な点においてディスカッションさせて頂いたことがあります。意見交換しながら作品を作り上げていくことはどちらかというと大得意な方だと思っています(笑)
『ケイン&アベル』は新作なので、0から作り上げていくのは難しい作業だと思いますが、今回もみなさんと意見交換をしつつ、いち演者として緊張感を持って作品と向き合っていければと思います。
■原作:ジェフリー・アーチャー コメント
東宝、フランク、ネイサン、ダニエル、チームの皆さんとご一緒できることを大変嬉しく思います。
ミュージカル『ケイン&アベル』をこの目で観るのが待ちきれません。
■音楽:フランク・ワイルドホーン コメント
私がこのように東宝とコラボレーションできるのは大変幸運なことであり、私たちのつながりはまもなく四半世紀を迎えようとしています!私たちはいくつもの冒険を分かち合い、日本をはじめ各国の観客の皆様に私たちの作品を楽しんでいただきました。アーティストである私にとって東宝はつねに素晴らしいクリエイティブなホームであり、私の作品を育て、支えてくれました。
私たちの最新のコラボレーションは、ジェフリー・アーチャーによる傑作小説を原作とした『ケイン&アベル』。
アメリカ史を背景に、世代と時代を超えていくつもの家族を描いたドラマであり、多彩な人物造形、波乱の展開、そして優れた演劇性を備えています。『ケイン&アベル』はまさにミュージカルにうってつけの作品なのです。アメリカンドリームを追い求める移民の物語であり、その夢をつかむために支払う代償が描かれています。
演出家・脚本家であるダニエル・ゴールドスタインと作詞家であるネイサン・タイセンとのコラボレーションは今回が初めてであり、彼ら二人と、そして日本の観客の皆様とともにこの旅に乗り出すことをとても楽しみにしています。幸いなことに、私の多くの作品で音楽スーパーバイザーを務めたパートナー、ジェイソン・ハウランドも参加します。私はかつてシアターオーブでコンサートを開くという光栄な機会に恵まれ、このうえなく幸せな経験をさせていただきました。その場所で『ケイン&アベル』を上演できることをとてもうれしく思っています。アリガトウゴザイマス!
■脚本・演出:ダニエル・ゴールドスタイン コメント
世界の歴史の中でアメリカンドリームは大きな存在感を放っています。それはゼロから始めて、子やその後の世代にも残るであろう何かを自らの手で勝ち取ることができるというファンタジーです。ひとつ前の世代より、より良い場所にたどり着けるという概念、努力は必ず成功につながるという理念です。それは私たちの文化の核心を占めていますが、歴史上初めてアメリカではもはや現実離れしたものになっているのかもしれません。
『ケイン&アベル』は、生まれながらにして将来を約束された男と自ら夢をつかみ取らねばならない男、二人のたぐいまれな男たちのアメリカンドリームをめぐる物語です。より高みへと昇り続け、より大きなものを築き上げようとする二人は、頂点には限られたスペースしかないという考えから、互いを破滅に追いやろうとします。しかしながらすべてを手に入れようとするあまり、最も大切なものである家族が置き去りにされていることに気づきません。ケインとアベルを演じる松下洸平さんと松下優也さんの抜きんでた才能によって、その確執の炎は熱く燃え上がります。
私にとって東宝の作品に再び携わることができるのは光栄なことであり、かねてよりご一緒したいと切望していた巨匠フランク・ワイルドホーン、作詞を手がける私の旧友ネイサン・タイセン、そしてデザイナー・チームとコラボレーションできることをありがたく思っています。彼らがいるからこそ、皆様が笑って泣いて、ステージに向かって叫びたくなるような、そしていうまでもなく皆様のためだけにフランクが書き下ろした珠玉のメロディーに合わせて歌い出したくなるようなミュージカルを日本の皆様にお届けできるのです。
■歌詞:ネイサン・タイセン メッセージ
この度、『ケイン&アベル』のクリエイティブチームに参加することをとてもうれしく思っており、比類なき作曲家、フランク・ワイルドホーンと共に曲作りができることに感激しています。脚本・演出のダニエル・ゴールドスタインと東宝が現代の名作小説から新たに作り上げたものを皆さんと共有するのを楽しみにしています。
■振付:ジェニファー・ウェーバー コメント
『ケイン&アベル』のクリエイティブチームの一員になれてとても光栄です。この素晴らしいアーティストたちと一緒にこのような壮大な物語に取り組めるのは夢のようです。この美しい物語に命を吹き込むために、皆さんと一緒に仕事ができるのを楽しみにしています。フランク・ワイルドホーンさんの素晴らしい音楽とダニエル・ゴールドスタインさんの先見性のある演出は、クリエイティブチーム、キャスト、そして観客のために素晴らしい旅を生み出してくれることでしょう。東京で振付デビューできることを心より嬉しく思います。
【編集部MEMO】
ミュージカル『ケイン&アベル』あらすじ…20世紀初頭、ボストンで銀行家の一族ケイン家の長男として生まれたウィリアム・ケイン。彼は将来、父の後を継ぐ銀行家として素晴らしい一生を約束された子としてこの世に生を受ける。ウィリアムが生まれた同じ日に、ポーランドの山奥で私生児として貧困と劣悪な環境に生まれたのがヴワデク、後のアベルである。
ウィリアムは名門校に通い生涯の友マシューと出会い、12歳で父がタイタニック号に乗り合わせていた為に年若くしてケイン家の家長となる。母は後に再婚相手のオズボーンの子供を出産する時に命を落し、オズボーンのウィリアムの資産の使い込みも発覚し、ウィリアムの憎しみの対象としてその後の彼の人生に常に黒い影として登場することになる。ハーバードを卒業後は父の銀行で働きだし、ウィリアムは自分の足で人生を歩み出すようになる。一方、アベルはロシア軍のポーランド侵攻とドイツによる統治で苦労を重ね、新しい人生を切り開くためアメリカに渡る。ホテルのウェイターとして働きながら、彼の持前の頭の良さと忍耐力で周囲の人々に認められ、遂にホテルグループの支配人までに出世しアメリカンドリームを手にした時、アベルにチャンスをくれた恩人が株式市場の暴落で破産・自殺をし、ホテルへの融資を拒否した銀行の担当者ウィリアム・ケインに一生かかってでも復讐を遂げることを固く心に誓い、祖国ポーランドの救済とウィリアムへ復讐だけを目的に2人の熾烈な戦いが始まる。