明治安田総合研究所は6月6日、共働き世帯の所得に関する調査レポートを発表した。
核家族世帯の増加
日本の世帯数の推移を世帯構造別に見ると、3世代世帯が減少するなか、核家族世帯が増加。本レポートでは、核家族世帯の所得に焦点をあて、主に夫婦のみの世帯または夫婦と子どもからなる世帯の所得動向について、総務省の「就業構造基本調査」の結果を元に整理した。
20~30代の共働き世帯の所得は飛躍的に増加
夫婦の世帯所得を所得階級別に家族の類型別に分けて見ると、有業の夫と無業の妻からなる世帯(専業主婦世帯)では、世帯所得は2012年調査~2022年調査にかけて大きな変化はみられない。一方、有業の夫と有業の妻からなる世帯(共働き世帯)では、ボリュームゾーンは700万円以上999万円以下で変わらないものの、世帯所得の分布が大きく右方にシフトしている。世帯全体に占める700万円以上999万円以下の割合は25.5%から30.3%へ、1000万円以上の割合は21.1%か27.9%へ上昇した。共働き世帯では、所得が700万円以上の割合が全体の58.2%を占めている。
稼ぐ妻が世帯所得を押し上げ
共働き世帯の所得を妻の年齢で分けて見ると、40~59歳の共働き世帯の所得のボリュームゾーンは2012年から2022年にかけて700万円以上999万円以下のままとなっているが、25~39歳では、ボリュームゾーンが500万円以上699万円以下から700万円以上999万円以下へとシフトしており、共働き世帯の所得は、主に25~39歳の世帯によって押し上げられている。25~39歳の共働き世帯の所得は、300万円以上499万円以下の割合が26.1%から13.3%へ半減する一方、700万円以上999万円以下の割合が25.9%から35.3%へ上昇した。
妻の年齢が25~39歳の共働き世帯では、子どもの有無にかかわらず世帯所得の高所得化が進んでいる。なかでも、夫婦のみ世帯では、700万円以上の世帯が全体の61.5%を占めており、1,000万円以上の割合も2012年の11.6%から23.7%へ倍増した。専業主婦世帯と比較した共働き世帯の高所得化については、女性の正規雇用比率の上昇が大きく影響しているとみられる。
女性の正規雇用比率の地域間格差は大きい
2012年と2022年の女性の正規雇用比率(正規の職員・従業員数÷雇用者数)を年齢別に比較すると、25~34歳を中心に正規雇用比率は上昇している。もっとも、上昇幅は地域により大きな差がある。25~44 歳の女性の正規雇用比率を都道府県別に見ると、千葉県で2012年の47.0%から2022年に62.5%へ、15.5%ポイント上昇する一方、佐賀県では53.7%から56.1%へ、2.4%ポイントの上昇にとどまっている。女性の正規雇用比率は、男性に比べれば低く、上昇の余地は多く残されているが、女性の正規雇用比率の差が広がれば、世帯所得の地域間格差の拡大にもつながるとみられる。
国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査(2021年)」では、「結婚相手の経済力を重視・考慮するか」という問いに対して、未婚者(18~34歳)のうち「重視する/考慮する」と回答した女性の割合が従来から約9割でばいの推移となっている一方、男性は48.2%と、1992年調査の26.7%以降、その割合は調査を経るごとに上昇しており約半分に達している。女性が結婚相手となる男性に対し引き続き経済力を求めるなか、男性も結婚相手に経済力を求める気持ちが高まっている。同社は「社会における女性の労働者としての役割が拡大していることも踏まえれば、共働きによる世帯の高所得化の流れは今後も続くと考えられる」と分析している。