社会に出たら、"英語を使ってグローバルに仕事がしたい"と考える人もいるでしょう。しかし、グローバルに働くといっても、実際にはどのような業界や業種で英語が活用できるのか、語学力以外に何が求められるのかを知る機会は、あまり多くないかもしれません。
そこで今回は、マイナビ 就職情報事業本部の岡崎友里恵さん(崎は「たつさき」)に、英語を活かした就活の現状や、企業から求められる経験や資格、人物像などについてお話をうかがいました。
岡崎さんは、留学経験のある日本人学生や日本で就職活動をする外国人留学生、またグローバル視点をもった新卒人材を求める企業を対象に、就職活動のサポートやイベントを担当しています。いわば、国際派就活におけるプロ! そんな彼女に気になるギモンをぶつけてみたので、早速みていきましょう。
■英語を活かせる舞台は想像以上に多い!?
━━英語を活かした就活というのは、近年増加傾向にあるのでしょうか。英語が使える人材を求めて求人を出す企業の数や、英語を強みにする就活生の数に変化はありますか。
グローバル化の進展とともに、英語を活かした就活はかなり早いペースで増えてきています。
例えば、マイナビ2025で、「海外留学経験のある学生を積極採用」している企業を調べると約3,000社ヒットしますが、これがマイナビ2026になると、約3,400社もヒットするんです(執筆時時点)。1年で400社も増えていますし、やはり英語が使える人材の必要性はどの企業も感じているでしょう。
また、コロナ禍で一度は大きく減った留学生も、2023年にはコロナ前の水準近くまで戻ってきています。10年ほど前と比べても留学する学生は増えていて、それとともに、英語が使えることや留学経験を強みに就活する学生も増加していますね。
━━最近では円安の影響もあり、日本の経済力が弱まる傾向も見られますが、日本の賃金が各国より低いことを意識して、海外での就活を考える学生も多いのでしょうか。
海外に行っている学生と話すと、「給与を考えればこのまま海外で就職したい」という希望も耳にしますが、基本的に海外は新卒から「スキル採用」。新卒でいきなり採用してくれる企業は少ないですし、かなりの強みやスキルを持っていないと就職のハードルは高いです。
一方、日本の就活は「ポテンシャル採用」が特徴です。企業は特に、その人のパーソナリティや、入社後にどれくらい成長してくれるかという今後の期待値を見てくれます。ですので、「一度日本で就職してスキルを積もう」と考える学生が多いですね。
━━グローバル企業にはどのような企業があるのでしょうか? また、近年グローバル人材を求めるようになった業界や業種を教えてください。
すでに知られているグローバル企業としては、商社やコンサル、航空業界やインバウンド系の企業などがあり、そこではもちろん英語を使いますが、それら以外のほとんどの業界でも英語が求められるようになってきています。
海外に拠点がある、海外に顧客がいる場合はもちろんですが、最近では、海外進出を考えている、海外からの顧客が増えて英語の必要性が高まった、という企業が増えているんですね。
なので、業界や業種を問わず、自分が思いもしないところで海外とつながっている企業もたくさんあると思っていた方がいいでしょう。
━━そういった、グローバルに活躍できる企業や英語が使える場所は、どうやって見つけるといいのでしょうか。
まずは、海外拠点がある、もしくは本社が海外にある外資系企業ですね。あとは、日本より海外の方が売上比率が高い企業です。また、ホームページなどに、海外進出の展望を載せている企業もありますので、そういうところから見つけるのがおすすめです。
加えて、経済産業省が発表している「グローバルニッチトップ100」では、メジャーではないけれど海外では世界シェアNo1を占めている中小企業なども見つけられますよ。
ただし、大きい企業でも全部の部署がグローバルというわけではないので、どの部署で何ができるのかはインターンシップや説明会で聞いておく必要がありますね。
■グローバル人材として求められることは?
━━グローバルに活躍できる企業への就職を目指すとき、何を意識すべきでしょうか。
人によって「グローバルに働いている」という実感には幅があるので、自分の希望やそれがかなう企業はどこなのかを見定めることが大事です。例えば、実際に海外に行きたい人もいれば、同僚が外国人で日常的に英語を使えればいい人もいますよね。
海外に行きたい場合、外資系企業の日本法人だと活動拠点が日本になって駐在の機会がないので、それなら日系企業で海外に進出している企業を目指す方がいいでしょう。一方で、日本にいながら日常的に外国人がいる環境を求めたい場合、IT企業などは、技術があれば日本語がさほど得意じゃなくても外国人を採用している、といった企業がけっこうあります。
━━英語を活用した就活で、必要な資質や経験、資格などはありますか。
入社後はいろいろな文化の人と話しますので、多様性を受け入れられる感覚や高いコミュニケーション能力、行動力などが求められます。留学も日本ではできない経験として話のネタにはなりますが、日本はポテンシャル採用ですので、ただ留学をして語学を勉強しただけでなく、その中で自分が工夫したところや仕事でも活用できそうな部分については、振り返って整理しておくといいでしょう。
資格としてはやはり語学力が求められるため、日本企業で浸透しているTOEICをはじめ、TOEFLやIELTSなど語学力が示せる資格を取っておいて損はありません。ただ実際には、電話や会議でコミュニケーションが取れること、交渉ができることが求められますので、実用的な英語としてスピーキング能力は別途きちんと高めておく必要があります。
英語面接を実施する企業はそこまで多くありませんが、入社後の業務ですぐに英語を使うポジションやそのレベルを求める企業の場合、面接で英語の実力を見られます。
━━英語を活用した就活では、どのような人が採用される、またはグローバルに活躍しているのでしょうか。
グローバル人材を求める企業にその理由を聞くと、そもそも「優秀な人材がほしい」という理由が1位で、「語学が必要な業務があるから」という理由は2位なんです。なので、企業研究によって「その企業は何を求めているか」を理解し、そこに対していかに自己PRできるかが大事です。
加えて、先ほどお伝えしたコミュニケーション能力や、自分がやってみようと思うことを躊躇(ちゅうちょ)なくできる行動力、自ら考えて動ける主体性が身に付いていると、入社後も活躍できると思います。
■語学力のみにとらわれない就活を
━━英語を活かした就活において、注意しなければいけない点はありますか。
留学経験にかかわらず、語学を強みにしている学生はたくさんいますので、語学だけで勝負しようとしないことが大事です。語学力を底上げしつつ、自分の強みをしっかり意識して伝える必要があります。
また、留学している学生の場合、就活のタイミングと重なり、就活が遅れてしまう人が目立ちます。オンラインでできる就活もあるので、留学と並行して進めておかないと、せっかく身に付けた語学力や留学経験が活かせずもったいないことがあります。
ちなみに、学生からよく「英語以外の言語も話せた方がいいのか」と質問されることがありますが、そんなことはなく、何より一番大事なのは英語です。逆に、英語以外の言語しかできないと、目指せる企業の幅が狭まって就活が難しくなります。どの国の人も英語を学びますし、日本におけるグローバル視点での就活では圧倒的に英語力が求められますので、まずは英語に力を入れましょう。
━━自分の強みやパーソナリティを見つけるのに苦労する就活生も多いですが、それらを発見するのにいい方法はありますか。
まずは、「自分は何に興味があり、どんなスキルや能力がある人間なのか」を主観的に考えることです。それが難しいなら、今までどんな時に頑張ったか、大変と思ったか、楽しめたかという経験を振り返り、その中で「こういう思考の過程がある人って、こういう人間って言えるよね」という自分のPRポイントを見つけていく方法をおすすめします。
それが難しい場合は、友人や家族に他己分析してもらう、または、適正診断テストなどを活用するのもいいでしょう。
━━今後、英語を活かした就活はどう展開していくと思われますか。
個人的には、一定のところまでは増えていくと思いますが、昔と比べて英語教育が浸透しているため、英語を活かした就活自体、そのうち当たり前になるかもしれません。
ただ、スピーキングに関しては、今後も話せる人と話せない人に分かれると思いますし、全員が英語を使って仕事がしたいわけではないので、今後も英語が話せる人や英語を使って仕事がしたい人は、重宝されるのではないでしょうか。