東日本旅客鉄道(JR東日本)は、新しい「Suicaアプリ(仮称)」を2028年度に提供するなど“Suica経済圏”を拡げ、交通だけでなく生活領域とも連携して事業拡大していく方針を打ち出した。その前段階として、2027年度までに「モバイルSuica」や「えきねっと」といった現行サービスの各種IDを統合する。

  • JR東日本が、新たなSuicaアプリなどでSuica経済圏の拡大をめざす方針を発表

6月4日に同社が発表した、中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」のなかで明らかにしたもの。

新しいSuicaアプリは、従来の鉄道・交通での支払いに加え、移動と一体のチケットサービス、金融・決済、生体認証、マイナンバーカード連携、タイミングマーケティング、健康、学び、物流、行政・地域サービスとの連携など、新機能を今後10年の間に順次追加。「進化したSuicaで、あらゆる生活をカバーする」ことをめざす。

進化したSuicaの基盤となるのが「JRE POINT」(データプラットフォーム)。2027年度までに現行のえきねっとやモバイルSuicaといった各種IDを統合することで会員基盤をまとめ、JR東日本が提供するサービスをシームレスに利用できる環境を整える。さらに、クラウド化による新しい鉄道チケットシステムを開始。たとえば「駅ビルで一定額の買い物をした人に、帰りの運賃を割り引く」といったサービスも提供可能にする。

進化したSuicaに集まるビッグデータを活かし、移動データをさまざまなリアル・デジタルのサービスと結び付ける。一例として、ユーザーの趣味嗜好や健康状態に沿ったサービスや情報を適切なタイミングで届けるデジタルコミュニケーションなどを行うことで、ビジネスを展開。東京圏で成功したビジネスを海外にも展開し、アジア圏でのTOD(Transit Oriented Development、公共交通指向型開発)への参画をめざすとする。

JR東日本では、今後10年で現在のJRE POINT生活圏を拡げ、リアル・デジタル双方にまたがる「Suica 経済圏」を拡大することで、2033年度における「生活ソリューション」の営業収益・営業利益倍増をめざす。なお、生活ソリューションの構成は「IT・Suica」、「不動産・ホテル」、「流通・サービス」の3つ。

同社の2023年度における生活ソリューションの営業収益は8,470億円、営業利益は1,703億円。2033年度目標は、営業収益が約1兆7,000億円、営業利益は約3,400億円規模という計算になる。

JR東日本グループでは、人口減少や少子高齢化の進行による事業環境の変化をうけて、鉄道・交通といった「モビリティ」に加え、「生活ソリューション」のふたつを軸にした持続的成長の加速のため、中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を新たに策定。そのカギとなる、Suicaの進化による新たな「デジタルプラットフォーム」の構築を行い、新SuicaアプリによるSuica経済圏の拡大をめざす。