JR東日本は4日、中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」の基盤として、「Suica」を移動のデバイスから生活のデバイスに進化させる「Suicaアプリ(仮称)」を2028年度にリリースし、「Suica」経済圏を拡大していくと発表した。
JR東日本グループは、これまでの生活サービス事業成長ビジョン「NEXT10」に代わる新たな中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を策定。その基盤は「Suicaの進化」による新たなデジタルプラットフォームの構築であり、「Suica」を移動のデバイスからさまざまな生活シーンにつながる生活のデバイスに進化させる「Suicaアプリ(仮称)」を創出することで、「Suica」経済圏の拡大をめざす。
「Beyond the Border」では、これまで強みとしてきたJR東日本グループのモビリティと生活ソリューションの双方にわたる「重層的でリアルなネットワーク」を「Suica」の進化による「移動の目的(地)づくり」と「DXによる個客との接点強化」を通じ、新たな強みにリデザインしていくとのこと。これにより、現在のJR東日本グループの枠を大きく乗り越え(Beyond the Border)、ビジネス圏を飛躍的に拡大していくという。
「Beyond the Border」の基盤となる「Suicaの進化」に関して、2027年度までに「えきねっと」「モバイルSuica」等の各種IDを統合し、シームレスな利用を可能とするほか、クラウド化による新しい鉄道チケットシステムも開始。例として、駅ビルで一定額の買い物をすると帰りの運賃が割引になるなどのシームレス化を実現する。
「Suicaアプリ(仮称)」を2028年度にリリースすることで、利用シーンに合わせたサービスを一括して提供可能に。あわせて移動と一体のチケットサービス、金融・決済、生体認証、マイナンバーカード連携、タイミングマーケティング、健康、学び、物流、行政・地域サービスとの連携といった新機能を今後10年の間に順次追加し、あらゆる生活をカバーすることをめざす。
進化した「Suica」に集まるビッグデータを最大限活用し、JR東日本の強みであるモビリティの移動データをさまざまなリアル・デジタルのサービスと結び付ける。たとえば利用者の趣味嗜好や健康状態に沿ったサービスや情報を適切なタイミングで提供する「One to One」のデジタルコミュニケーションを行うことで、マーケットインのビジネスを進める。
マーケットから得られるデータやニーズを進化した「Suica」にフィードバックすることで、さらなる進化もめざし、次のマーケットインのビジネスに循環しながら生かす。その後、東京圏で成功したマーケットインのビジネスを海外展開し、実績を積み重ねることで、アジア圏でのTOD(Transit Oriented Development : 公共交通指向型開発)への参画をめざすという。
今後、「Suicaの進化」とデータマーケティングによって構築するデジタルプラットフォームにより、リアル・デジタルのサービスをつなげ、利用者に新たなライフ・バリューを提供。今後10年で現在の「JRE POINT」生活圏を飛躍的に拡大したリアル・デジタル双方にまたがる「Suica経済圏」を創出し、10年後(2033年度)の生活ソリューションの営業収益・営業利益を2023年度比2倍にすることをめざす。