女優の清原果耶が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に初挑戦した。担当したのは、2日に放送される『私のママが決めたこと~命と向き合った家族の記録~』。がんに全身を冒され、絶望的な進行過程の中、スイスでの“安楽死”を決断したマユミさんと、その夫、二人の娘を追った作品だ。
初めて『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当するにあたり、「自分の感情よりも、届けなきゃいけない大事なことがある」と、役割を全うした清原。声の仕事が「大好き」な理由、役者として芝居をすることとの違いも聞いた。
“安楽死”を決断した女性と家族の思いに迫る
今回カメラが追うのは、マユミさん、44歳。結婚して19年になる夫のマコトさんと、二人の娘と暮らしている。子宮頸がんの中でも希少がんと呼ばれる神経内分泌がんを患い、わずか3年で膣、肝臓、肺、頭皮、脳と全身が冒された。マユミさんのSNSには「痛くて眠れない」「痛すぎて壁を殴るという行為をきょう初めて行ってしまいました」と苦しむ様子がつづられている。放射線や化学治療など、苦痛に耐えながらできるかぎりの治療は尽くしてきたが、進行状況は絶望的。そしてマユミさんは、スイスのある団体に「がんが再発したら、私は安楽死を望みます」とメールを送る――。
ナレーションの役割を全うすることを大事に
清原は今回の“安楽死”というテーマについて「近年の日本でも、私の耳にも入ってくる印象」と話し、『ザ・ノンフィクション』が、母が“安楽死”を決意した家族に密着したことを「一つのご家庭の、人生の大事な時間を共にさせていただいていることがすごいなと純粋に思いました」と語った。「ナレーションの経験は多くはない」という清原が収録で大事にしたのは、「番組を作ってらっしゃる皆さんの届けたいもの、その気持ちに寄り添う」こと。「原稿をいただいたときには、ちゃんと止まらずに読めるだろうか、お仕事をやり切れるだろうか、と不安でした」と吐露するが、「ブースに入っていざ読み始めると、自分の感情よりも、届けなきゃなければいけない大事なことがある」と、家族の姿に心が揺れながらも、ナレーションとしての役割を全うしようと気を引き締めたと明かす。そして「“知る”ことが大きな一歩。この『ザ・ノンフィクション』のような番組が存在する意義を改めて感じて、私自身もありがたい機会をいただけた」と感謝した。
声の仕事は毎回チャレンジ
声の仕事の話題になると、「大好きで」と笑顔を浮かべる。「役者としてお芝居をしているときは、表情や体、見てわかる表現で楽しませられたらと思うのですが、ナレーションや声優のお仕事だと、声しかない」と役者として演技することとの違いを語り、「声のお仕事をいただくと、うれしいけど、緊張するんです。自分の声は、自分と人で聞こえ方が違う。だからなるべく、監督や演出家さんの求める声に寄せる努力が必要だと感じます」と苦労を語った。モチベーションになっているのは、「私の声のお仕事が好きだよと言ってくれる方たちがいること」だという。「毎回チャレンジにはなりますが、声のお仕事も役者と同じ“表現“なので、頑張りたい」と向上心を見せた。
今回の原稿は55分の放送分である25ページ。清原にとっては初めての分量で、前半終了時に「あれ、まだ半分!?」と驚いたよう。「無事に終えられてよかったです。ほかのナレーションのお仕事でここまでたくさん話すことはなかったので、緊張しました」と安堵の表情を浮かべた。今回の倍にあたる2週間分の前・後編収録もあるとスタッフに伝えられると、「えっ! それ、一気に録るんですか?」とビックリ。『ザ・ノンフィクション』にはさまざまな作品があるが、「自分からは遠いような題材でも、逆に近いような題材でも、知らないことのほうが多いので、教えてもらえるのはありがたい」とどんなテーマにも興味津々な清原。「私の声が必要な作品があれば、また挑戦させていただきたい」と意欲を見せた。
2002年1月30日生まれ。大阪府出身。「アミューズオーディションフェス2014」でグランプリを獲得し、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(15)で女優デビュー。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(21)ではヒロインを演じた。映画『護られなかった者たちへ』(21)で第45回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、2023年に初舞台『ジャンヌ・ダルク』読売演劇大賞で優秀女優賞・杉村春子賞を受賞した。