日本全国から史上最多となる1万人超、約2,700チームが応募した高校生のビジネスコンテスト『第10回マイナビキャリア甲子園』。

3月9日の「Creation部門」決勝大会では、エルテス代表としてチーム「Andante」(さいたま市立大宮国際中等教育学校)が出場。「10年後 の次世代都市でエルテスが推進すべき事業を提案せよ」というお題に対し、高校生ならではの発想で見事に準優勝を勝ち取った。

今回は、その好成績を残すに至った背景について、エルテス側の担当者である猪股裕貴さん、奥村高大さんに話を聞いた。

高校生の視点で「10年後の次世代都市」を自由に発想してほしい

――まずは簡単な自己紹介をお願いします。

猪股:ソリューション本部で副本部長を務めている猪股です。普段はデジタルリスク事業におけるソーシャルリスク領域の事業管掌を担当していて、マイナビキャリア甲子園では準決勝以降の審査・高校生への指導を行いました。

奥村:部長代理として経営企画部に所属する奥村です。エルテスグループ全体の広報・IR業務を担っていて、マイナビキャリア甲子園では全体のプロジェクトマネージャーを務めました。本日はよろしくお願いします。

――マイナビキャリア甲子園に参画いただいた理由について教えてください。

猪股:エルテスグループは、警備業界のDX支援、行政サービスのDX支援など、「比較的DX化が進んでいない領域」で複数の事業を展開しています。実はIT会社が考えた「ユーザーフレンドリー(実用性)の視点が足りない」ITサービスも少なくないのです。

奥村:だからこそ、私たちのようなIT業界で働く人間でなく、一般的なユーザーの皆さんの視点が非常に重要なんですね。「等身大の高校生 たちの発想や気付きは、私たちにとって大きな財産になる」、そう考えて参加を決めました。

――今回設定したテーマ、「行政サービスがデジタル化された10年後、誰もが快適に暮らせる次世代都市を目指し、エルテスグループが推 進すべき事業を提案せよ」に込めた思いについて教えてください。

猪股:企業からデジタルリスクを守る以外に、DX推進支援にも事業展開しています。そこで得たノウハウを活かして次に狙うのが「次世代 都市」の実現。高校生の皆さんには、デジタルによって快適に生活できる「次世代都市=スマートシティ」について、自分事として考えて もらいたいと思いました。

奥村:行政サービスがデジタル化された10年後、つまり電子行政が成立している中で、どのような「次世代都市」を作っていくのか。自分の街の暮らしで不便なところ、発生しているリスク、もっと良くできそうなこと、いろいろと考えられることがあると思います。高校生の皆さんにも、この次世代都市を自由に発想してみてほしいと思ったのです。

「エルテスのサービスをブラッシュアップするいい機会になった」

――マイナビキャリア甲子園に期待していたこと、高校生の皆さんに期待していたことなどあれば教えてください。

奥村:やはり私たちの事業を知っていただくという点と、今後もデジタルを使ってさまざまなサービスを展開していく中で、高校生ユーザーの目線、視線も取り入れていきたいというのが大きなポイントだったと思います。

猪股:どの企業も優秀な人材を獲得したいと考え、最近はインターンシップを通して優秀な大学生に自社をアピールしていますが、高校生に働きかける企業は少ないでしょう。今回、マイナビキャリア甲子園に関わって、彼らの考えは「我々が想像したレベル」を遥かに超えて いることに気付かされました。これからは採用活動の対象に高校生も含めないといけないな、と本気で感じたくらいです。

――実際に、マイナビキャリア甲子園に参画して見た印象、感想について教えてください。

猪股:「参加できてよかった」と率直に思います。自治体などのデジタルリスクに関係する仕事では、本来は「住民の方にどう還元するか」 を考えるのですが、プロダクトアウトになりがちというか、定量的にサービスを始めたほうがビジネス面で成功するのではという目線になりがちだと思います。でも、今回は利用者である市民の皆さんにヒアリングしたうえでサービスを考え出したので、粒度も細かったですし、エ ルテスのサービスをマーケットインの視点でブラッシュアップするいい機会になったと思います。

奥村:もっと社内全体を巻き込んで、若手社員も積極的に巻き込んで、「Andante」の皆さんとのディスカッションの時間を増やしたり、選考を経験してもらうことが、若手社員の成長の場にすることもできたでしょう。高校生たちの意見を聞く機会を含めて、会社としてもいい刺激をもらえたんじゃないかと思います。

――テーマに対し、どのように高校生と一緒にアイデアをブラッシュアップしていったのか教えてください。

奥村:準決勝から決勝までは限られた時間しかなかったので、「Andante」の皆さんが考えてくれたビジネスアイデアをどうすれば審査員の心を動かす内容になるのか。ビジネス経験を有する私たちの視点から情報の精査などのアドバイスをしました。具体的には、エルテスのビジネスを知らない人にも伝わる平易な言葉への置き換え、情報過多な部分の削ぎ落としなど、表現に関わる手助けですね。

猪股:審査基準や過去の映像を見て、「こうすれば勝てるだろう」というポイントは我々も分析しました。審査項目で高得点を取れるよう なプレゼンの構成にしたかったので、その分析結果も踏まえてアドバイスなどはさせていただきましたね。あとは話し方の部分でしょうか。どうプレゼンすれば聞き手に伝わりやすいか、理解しやすいかということで、例えば「結論ファーストにすべき」と伝えたり、資料構成のアジェンダを微修正したりです。時間も限られていたので、内容を大きく変えるというより、彼らのアイデアはそのまま、審査員が聞いて納得できるように整える作業を手伝ったというのが実情ですね。

――初めて「Andante」のアイデアを見たときはどう感じましたか?

猪股:すごく良かったですね。ただ、準決勝には他にもたくさんいいチームがあったので、結構迷いました。正直、エルテスの事業内容に近しいチームもあったのですが、その中でも「Andante」のアイデアは自分たち高校生を主体にしたサービス内容で、とても現実的だと思ったのです。

奥村:解像度が高かったですよね。準決勝のプレゼン段階でサービスのUIまで作ってきたチームは他になく、実現性という点で具体的にイ メージできました。アイデアを実現するためのリスクなど、考えなければいけない点について検討を重ねてきたのか、それが完成度の高さにつながったのだと思います。

願わくば決勝後も"マイナビキャリア甲子園の続き"を

――高校生とのやり取りの中で、印象的だったエピソードがあれば教えてください。

猪股:皆さん、大学卒業後のキャリアまで描いたうえで今回のビジネスアイデアを作っていたというのが印象的でした。「将来、何したいの?」って聞くと、答えが出てくるんですよ。「とりあえず受験を頑張ります」ではなく、すでに「将来はこういう研究がしたい」「こういう会社に入りたい」って具体的に考えているんですね。高校生の段階で就職を見据えているのはすごいなと思いましたし、「この子たちはこれからどんな社会人になるんだろう」と考えるだけでワクワクしました。

奥村:マイナビキャリア甲子園にかける生徒たちの想いは、我々の想像を大きく超えていました。本当に多くの時間を費やしてきたからこ そ、本番では緊張して上手く話せずに悔しがっていましたが、高校生でそんな素晴らしい経験を積める機会なんてあまりないと思います。 彼らの姿を見て、私自身も気を引き締めましたし、学ぶところも数多くありました。

――最後に、コンテストを終えた感想をいただけますか?

猪股:まずは参加できてよかったですし、素敵な機会を頂いたことに感謝しています。高校生の熱量を感じたことで、我々もいい刺激を受けました。特に「Andante」のメンバーは今すぐうちに入社しても即戦力になるんじゃないかというくらい、レベルの高さを感じていま す。欲を言えば、マイナビキャリア甲子園の決勝大会をゴールにするのではなく、その後も、作り上げたアイデアをそのままビジネスとし て一緒に進めたいくらいです。

奥村:エルテスの広報としては、やはり優秀な人材に高校生のうちから興味を持っていただくことは重要だと思いましたし、これからもどんどんこういう場に出ていかないといけないな、と感じます。他の参画企業はテレビCMなど、自社を世間に広くPRしているので、私たちもそれに倣って、エルテスの世界観を世の中に理解していただけるよう、より一層頑張っていきたいですね。