日本の家電は世界のトレンドと異なる進化をしています。ここでは中国最大級の家電・エレクトロニクス展示会「AWE 2024」から、日本未発売の気になる最新家電や、これから日本にやってきそうな家電を紹介します。

  • 中国上海の国際博覧センターにて開催された家電・エレクトロニクス展示会「AWE 2024」

  • 家庭用の家電だけでなく、ピアノを弾くロボットなど技術力をアピールする展示も

他社を圧倒する広い展示エリアのハイアール

会場でひときわ存在感があったのは、中国のハイアール。ハイアールは15年連続で大物生活家電の世界トップシェアを走るメーカーで、日本においてはシンプル機能で低価格な冷蔵庫や洗濯機で人気があります。グローバルでは超高級家電や最先端の高機能家電も数多く販売しています。

  • 会場でグッズも販売していたハイアールのキャラクター、ハイアール兄弟の大型フィギュア。中国ではアニメ化もされた人気キャラクターなんだとか

そんなハイアールの展示で注目を集めたのは、新技術を搭載したドラム式乾燥機。乾燥機内の「誘電率」の変化を計測することで、衣類が乾燥したかどうかを正確に判断できるという製品です。

この技術のメリットは「衣類内部の水分量まで推測」すること。今までの乾燥機だと、たとえばぶ厚いダウンコートを乾燥させると表面が乾燥していても内部は湿っているという失敗があったりしましたが、新技術を搭載した乾燥機なら衣類内部の乾燥具合までしっかり判断できるそうです。

  • ハイアールの最新技術を使ったドラム式乾燥機(写真左)と、同シリーズの洗濯機(写真右)。ハイアールに限らず、会場にある洗濯機のほとんどが洗濯機と乾燥機が独立したドラム式。日本で主流の「洗濯から乾燥まで全自動」は1割ほどしか見かけませんでした

新しい技術を用いた冷蔵庫も展示されていました。こちらは磁場が水などの極性分子に与える影響を利用し、保存食材の細胞ダメージを抑えるという技術。同じ温度帯でも、この技術を利用した冷蔵室では魚や肉などがより長持ちするそうです。

  • 写真の銀色の引き出し部分が、磁場を利用した保冷室

一方、ハイアールの若者向けブランド「リーダー」の製品は、そのデザイン面が目にとまりました。若者向けブランドだけあり、比較的低価格帯の製品が多いのですが、日本ではあまり見ないポップなデザインや、特徴的な機能を持った製品が展示されていました。

  • 一般的には「無地」のエアコンや冷蔵庫も、リーダーならこの通り楽しいデザインに。薄型マグネットシートで扉デザインを簡単に変えられる冷蔵庫は、日本でもハイアールブランドから「freemo」という名前で販売中です

  • 個人的に気になったのは、肩掛けショルダーのように持ち歩けるリーダーブランドのポータブルコーヒーマシン。バッテリー式なのでどこでもコーヒーが淹れられます。抽出したコーヒーはアッという間に酸化するため、意外と実用的かも

どうなる? これからの日本の家電トレンド

今後の家電トレンドを感じる展示も多くありました。たとえばハイアールをはじめ、LGエレクトロニクス、サムスンなど世界的な大手家電メーカーのすべてが「衣類ケアクローゼット」を展示していました。縦長のロッカー型クローゼット内をスチームで満たし、ヒートポンプ乾燥させることによって、衣類のシワ取りや除菌・除臭ができるという製品です。

日本ではLGエレクトロニクスが2017年から「LG Styler(LGスタイラー)」を発売しており、2023年はパナソニックが「スマートクローゼット」を発売したことで話題になりました。世界中のメーカーが注目している製品だけに、今後は日本でも普及率が上がっていくかもしれません。

  • 衣類ケアクローゼットの元祖であるLGエレクトロニクスの新製品。アタッチメントを装着することによって、衣類スチーマーとして衣類のポイントケアも可能になっていました。一般的な衣類スチーマーよりパワフルで便利そう! ぜひ日本でも発売してもらいたい

続いて「水拭き掃除機」というジャンル。日本でも2023年から多くの新製品が登場しています。会場では水拭き掃除機の展示も豊富でした。

水拭き掃除機は掃除後の処理が面倒ですが(モップのお手入れなど)、高性能なモデルはモップの自動清掃や自動乾燥機能を搭載しています。とはいえ、タンクに溜まった汚水の処理はどうしても自分の手を使う必要がありますが、今回は排水まで自動化した水拭き掃除機を複数のメーカーが展示していました。日本でも「汚れた水の処理が嫌で水拭き掃除機の使用をやめた」「汚水タンクの水を捨て忘れて臭くなった」というユーザーの声を聞くので、汚水処理の自動化は今後ぜひ強化してほしいところです。

  • ハイアールが展示していた、排水口に直結できる水拭き掃除機。「ゴミごと排水」するため、日本でそのまま利用するのは難しいかもしれませんが、排水まで自動化するために今後のヒントになるかも?

筆者がこれから日本に来てほしいと思ったのは、中国AUCMAが展示していた超低温冷凍が可能な冷凍冷蔵庫。一般的な冷凍庫は-18℃前後で食材を冷凍しますが、こちらは業務用レベルの-40℃まで冷凍温度帯が選べます。

超低温冷凍庫は日本でも売られているのですが、ほとんどはストッカー型(上にフタが付いた箱型)の冷凍専用機。一方で今回の展示は、家庭用冷蔵庫の一部を超低温にできるという珍しい製品で、家庭でも導入しやすそうです。

  • -40℃までの超低温冷凍ができる家庭用冷蔵庫。デザインもオシャレです

ここまで駆け足で紹介してきましたが、会場にはまだまだ面白い家電が盛りだくさん。見ているだけで「これからの家電はもっと面白くなりそう」と実感させられた展示会でした。こうした新技術の一部は日本の家電にも影響するはず。日本の家電がこれからどう変わるか楽しみです。

  • これも個人的に気に入ったハイセンスの冷蔵庫。冷蔵庫の扉部分に真空機能を備えています。扉のスリット部分にビニール袋の口を差し込むと、真空パックとシーリングをしてくれます。付属品を使えばコンテナを使った真空保存も可能です

  • 日本では種類が少ない「かくはん機能付き電気鍋」も複数メーカーが展示。かくはん機能付き鍋は高価格なので、日本ではファミリータイプの製品がほとんどですが、会場で見かけた製品は1人用サイズの鍋にもかくはん機能が付いていました。積極的に自炊する一人暮らしにとって、うれしい調理家電です

  • 趣味性が高い家電なら、高性能フィルターで煙のニオイを抑えてくれるGEアプライアンスの室内用スモーカー(燻製機)。食材の中心温度をリアルタイムにセンシングするプローブ付きなので、熱燻や温燻の失敗もなさそう