ハイアット ホテルズ コーポレーションとKirakuは5月27日、両社が合弁事業で展開するハイアット初のラグジュアリー温泉旅館「吾汝 ATONA」を大分県由布市、鹿児島県 屋久島町、神奈川県 箱根町で2026年以降に開業することを発表した。客室平均単価は10万円台前半を想定しているという。3地域での開業後は日本全国へ展開する計画だ。
地域ならではの体験にこだわるスモールラグジュアリー
ブランド名の吾汝は、“わたしとあなた”を表現する日本の古語。愛する家族や友人、そして大切な人と一緒に、日常を離れたまだ見ぬ愉楽の空間を共にする期待感が込められている。
日本の温泉と地域文化に特化した温泉旅館として展開する同ブランドは、1施設あたり30~50室程度のいわゆる「スモールラグジュアリー」施設となる。ブランドディレクターは日本を代表するデザイナーの一人である原研哉氏が務め、最初の複数物件の建築デザインは小大建築設計事務所(kooo architects)が担当する。
スタンダードルームタイプは50m2〜70m2で、その土地から湧く温泉、旬な食材を使った季節の料理を提供するオープンキッチンやバーなどを備え、各施設で温泉を利用したウエルネス体験や地域の魅力を伝える文化体験のアクティビティも提供予定だ。小規模運営だからこそ提供できる上質な空間とその土地でしか出会えない特別な体験にこだわるという。
日本のユニークな旅館体験を経験するきっかけに
日本ハイアット代表取締役およびAtona共同代表の坂村政彦氏は「ハイアットのラグジュアリーリゾートの中心的な位置付けとしていきたい」とし、「これまで他の外資系ホテルチェーンがまったく手がけてこなかった『旅館』という非常にユニークな宿泊・滞在体験を提供する施設を一つの柱として、革新的なモデルのスタンダードをつくっていきたい」と話した。ハイアットが世界4,000万人の会員基盤を持つロイヤルティプログラム「ワールド オブ ハイアット」に向けても「Atonaが日本のユニークな旅館体験を経験していただくきっかけになれば」と意気込む。
また、訪日外国人のオーバーツーリズムの問題にも触れ、「京都や東京など限られた場所だけではなく、日本のあらゆるところに分散させていくことが必要。日本にはさまざまな美しい自然や文化を備えた多くの旅の目的地がある」とも話した。
ブランドが目指すのは、世界の人々に日本の素晴らしさを伝えること、地域ならではの体験をキュレーションすること、旅する人と地域の架け橋となり日本の地域の魅力を未来へ紡ぎ出すことだという。
なお、ATONAブランドに特化した不動産ファンド「Atona Impact Fund(アトナ・インパクト・ファンド)」において、100億円でファーストクローズした。ファーストクローズでは、ハイアットおよびKirakuの関連会社のほか新たな共同投資家として竹中工務店が加わり、最終的なファンド総額は200億円規模を目指す。