Mastercard Economics Institute(Mastercard経済研究所)は5月16日、アジア太平洋地域の13市場を含む74市場の旅行業界の進化について広範な洞察を提供する最新レポート「Travel Trends 2024:Breaking Boundaries」を発表した。

話題の旅先ランキング

  • 話題の旅先ランキング

2024年3月までの過去12ヶ月間の観光に関連する消費活動の変化に基づいて作成された「話題の旅先ランキング」では、日本が1位となった(0.9%ポイントの成長、アイルランドは0.4%ポイント)。

日本は、ピークシーズンの前にもかかわらず、 2024年3月に海外から3,081,600人の旅行者を迎え、過去最高の旅行者数を記録した。海外旅行者にとってメリットとなる1990年以来の円安が追い風となり、2024年を通して観光のトップランナーであり続け、観光客向けにサービスを提供する日本企業や地域経済全体に恩恵をもたらすと予想される。

アジア太平洋地域の旅客数は、特に短距離の域内旅行を中心に回復。例えば、今夏のシンガポールからの旅行者の目的地のトップは、バンコク、クアラルンプール、パースなど。タイ観光は2024年に完全に回復する見込みで、総旅行者数はコロナ禍前の2019年の水準をわずか7%下回っている。特筆すべきは、南アジアとASEAN地域からの入国便の旅客数が2019年の水準を20%近く上回っていることだという。

話題の夏の旅先

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過去12ヶ月間のトレンドでは日本がトップだったが、話題の夏の旅先としては、6月にUEFA EURO 2024サッカー選手権が開催されるドイツのミュンヘンが第1位(フライト予約におけるシェア上昇率)となった。東京は僅差で2位、バリ(6位)、バンコク(7位)も今後3ヶ月で需要が高まる都市トップ10に入っている。

中国本土の国内観光が復調

より多くの中国人観光客が海外旅行よりも国内旅行を選択するようになり、中国本土の旅行動向は変化しているという。中国本土の国内観光の見通しは明るく、航空旅客数は完全に回復し、2019年の水準を上回り、地元企業に利益をもたらしている。一方、中国本土からの海外旅行者数も回復を続けており、現在2019年水準の80.3%に達している。2024年には、アジア太平洋地域およびその他の地域でのビザ免除や国際便のキャパシティー(総座席数)の増加による旅行需要の上昇が期待されており、シンガポール、マレーシア、タイなどが恩恵を受けると考えられる。

かつてないほどインド人の旅行需要が高まる

急増する中産階級、航空路線の増便、旅行への旺盛な意欲によって、2024年は、歴史上最も多くのインド人が海外旅行をする年になるとの予想も。

2024年の最初の3ヵ月間で、インドの空港を利用した旅客数は9,700万人に達した。国内線旅客数は、2019年比で21%増、国際線旅客数は4%増となっている。(2024年3月現在) 2024年の主要地域へのインド人旅行者は、2019年に比べて大幅に増加。日本への旅行者53%増、ベトナムへの旅行者248%増、米国への旅行者59%増となっている。

レジャーの長期化

アジア太平洋地域(オーストラリアとニュージーランドを除く)では、2024年の旅行者の平均滞在日数が7.4日となり、2019年の平均滞在日数6.1日と比較して、平均2日延びている。オーストラリアとニュージーランドでは、海外からの旅行者の平均滞在日数は5.4日で、2019年と比較して0.6日増加している。2019年から2024年の間に旅行者の滞在期間が最も増加したアジア太平洋地域の旅先は、インド(+2日)、ベトナム(+2日)、インドネシア(+1.9日)、日本(+1.4日)で、これは主に同期間のホテル価格の上昇率が他の市場と比べて低いためだと考えられる。通常、滞在日数が多いほど一旅行あたりの消費額も高くなり、地域経済に恩恵をもたらす。

冒険好きな人は体験とナイトライフを望む

世界の消費者は、モノよりも体験を重視する傾向が続いているという。この傾向は旅行業界にも表れており、体験やナイトライフへの支出は観光売上高の12%を占め、少なくとも過去5年間で最高を記録している。一方、買い物への支出の回復は緩やかになっている。

ファッションも食も、カジュアルがラグジュアリーに勝る

最近の観光客はカジュアルな雰囲気の場所を好む傾向にあるが、並外れたコストパフォーマンスを提供する高級小売店や高級レストランの場合は事情が異なる。2024年3月期のラグジュアリー・ファッションの売上高は、日本(152%)と香港特別行政区(208%)で前年比急上昇。香港特別行政区の躍進は、越境規制の撤廃が2023年と遅かったことが一因だが、日本は円安と好調なインバウンド観光が寄与している。オーストラリア、インド、タイでは、高級レストランが急成長しており、プレミアム・ダイニングが、他地域では依然優勢なカジュアル・ダイニングを凌駕している。