第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦ほかが進行中。5月24日(金)には1組出場者決定戦の森内俊之九段―広瀬章人九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりの持久戦から抜け出した広瀬九段が129手で勝利。1組4位の座を確定させ、決勝トーナメント入りの切符を手にしました。

大一番の同門対決

両者が戦う1組4位出場者決定戦は4名からなる山を勝ち抜いた1名が決勝トーナメント出場権を得るもの。敗れた場合の復活はありません。ともに勝浦修九段門下の同門対決となった一戦は相掛かりに進展、先手の広瀬九段は4筋の歩を突いて好みの持久戦策を打ち出しました。

駒組みのなかで広瀬九段が見せた左桂の活用は、自らの角筋を止めるだけに意表の一手。桂交換から局面を打開する意図が見て取れます。この桂はやがて銀との交換で駒得になるものの形勢は互角。後手が中央に築いた金銀の壁により角の働きが止まっている点が響きます。

弟弟子の勝利

鉄板流の厚みでペースをつかんだ森内九段ですが直後に後悔の一手が出ます。4筋に控えの桂を据えたのは手筋風に見えて俗筋。じっと歩を受けられてみると思ったほどの効果はありません。感想戦では自玉そばに歩を置いて桂の王手を防げば後手有利とされました。

後手の疑問手に乗じた広瀬九段は軽快な攻めで優勢に立ちます。3四の空間への桂打ちは形の急所といえる王手。この手が先手で入ったことで攻めが切れなくなりました。終局時刻は21時3分、最後は自玉の詰みを認めた森内九段が駒を投じて熱戦に幕が下ろされました。

勝った広瀬九段は1組4位で決勝トーナメント出場権を獲得。決勝トーナメントでは2連勝すれば挑戦者決定戦に手が届くことになります。

水留啓(将棋情報局)

  • 昨年の決勝トーナメントでは自身の1戦目で敗れている広瀬九段、捲土重来を目指す(写真は第35期竜王戦七番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    昨年の決勝トーナメントでは自身の1戦目で敗れている広瀬九段、捲土重来を目指す(写真は第35期竜王戦七番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)