ONE OK ROCKが、3日間にわたる豪華アーティストとの対バンライブ「SUPER DRY SPECIAL LIVE Organized by ONE OK ROCK」を開催した。5月19日(日)埼玉・ベルーナドームの2日目の対バン相手は日本が誇るヒップホップ界のクイーン、Awichだ。
ぎっしりとオーディエンスで埋まったベルーナドームに沖縄民謡の歌声が聞こえると、地鳴りのような歓声が上がった。琉球舞踊のダンサーと三線の演奏者を携えたAwich。Queendom第二章の幕開けを告げた最新アルバム『THE UNION』の1曲目「THE UNION」で過酷な運命と激動の日々をラップし、目の前のオーディエンスたちに共闘を呼び掛ける。「Queendom」を続け、さらに自らの出自を伝えた。もちろん最後のラインは「荊棘を抜け、立つベルーナドーム」だ。クイーンの新たな宣言に対し、3万人のオーディエンスが喝采を送った。
Photo by Kosuke Ito
Awichは「日本のロックのキング、ONE OK ROCKを本当にリスペクトしています。5日前にワールドツアーが発表されましたよね。常に日本のロックの歴史を塗り替えているONE OK ROCKはお手本です。私もヒップホップにとって同じような存在でありたいと、彼らの背中を見ながら頑張っています」とリスペクトを表した後、「今日この日を選んだお前らラッキーだぜ! 最後まで楽しんで帰る準備できてんのかー!」と叫び、あらゆるボーダーを壊し、自由に生きる意志を高らかに歌った「どれにしようかな」でドームに一体感をもたらした。”うるせぇんだよ Shut the fuck up”では大合唱が巻き起こり、オーディエンスがどんどんAwichに引き込まれていることが伝わった。
Photo by Masahiro Yamada
つい数日前に行われた、自身にとって初めてのNYのフェスでは良いライブができたけれど、最後に転んでしまったというエピソードを明かしたAwich。「でも私は歌い続けました。これが人生の縮図です。どんなに完璧に仕上げてきてもこけちゃうかもしれない。人生の中でもう起き上がれないと思った出来事もありました。これからもいろんな挑戦をしようと思っていて『お前には無理だよ』って言われてもリベンジし続けようと思ってます。みんなが幸せになることが一番のリベンジだから」と言って、「Revenge」が歌われた。オーディエンスはスマホライトを照らし、Awichのリベンジを援護射撃した。
「RASEN in OKINAWA」では、「本当の成功の反対にあるのは何もやらないこと!」というシャウトが客席からも響いた後、OZ WorldとChico Carlitoが登場。次の「LONGINESS Remix」はChico CarlitoとSugward Familiarが参加し、ベルーナドームに沖縄のエネルギーを運んだ。不穏なイントロが流れ、Awichが「人生の中で文句言って来るヤツがいたらこの歌を歌ってやってください!」と言って、「WHORU」へ。ヒップホップ界のキング、ANARCHYが登場し、ドームを興奮の渦に巻き込んだ後、ふたりはがっつりハグ。Awichが「やっちまいますか?」と言って、「やっちまいな」へ。広大なドームに「やっちまいな!」というキレ味抜群の咆哮が轟いた。「GILA GILA」ではJP THE WAVYも登場し、大盛り上がり。
Photo by Kosuke Ito
Photo by Masahiro Yamada
Photo by Masahiro Yamada
終盤、「ONE OK ROCKを通してみんなと出会えたこと、本当に嬉しく思ってます! いつか私も大きなドームでやろうと思ってるのでその時は遊びにきてください!」と言って、またひとつ明確な目標を口にしたAwichはこの日もかっこよかった。
キング・オブ・ロックとヒップホップクイーンのコラボ
Taka(Vo)が「見せつけてやるよ、ベルーナドーム!」とシャウト。ONE OK ROCKのライブは「We are」から始まった。Takaの伸びやかな歌声とタイトでパワフルなアンサンブルで一気にドームを掌握し、いきなりピークを記録するような合唱と手拍子が響いた。
2曲目の、矢継ぎ早に言葉を吐き出すようなTakaのボーカルが冴えわたる「Take me to the top」ではステージから勢いよく炎が上がり、Toru(Gt)とRyota(Gt)がお立ち台の上で楽器を弾きながら頭を上下に振る。Tomoya(Dr)の躍動感あふれるドラミングとともに、ダイナミックさと緻密さを共存させ、巧みに緩急を付けて無尽蔵にグルーヴを高めていく様が見事だ。誇らしげに大きく両手を広げたTakaに大歓声が浴びせられた。
Photo by Masahiro Yamada
Photo by Masahiro Yamada
Photo by Masahiro Yamada
Photo by Kosuke Ito
Takaが「次に行く前に一言言っていいですか。Awich、激ヤバなんですけど。あそこ(座席)で見てて、伝説になるんじゃないかってくらい素晴らしいライブでした。ドームでヒップホップとロックが混ざることは歴史上そんなにないし、そんなことができるのが音楽の素晴らしさです」と語った後、自らとAwichの組み合わせを「ロックとヒップホップというより、キング・オブ・ロックとヒップホップクイーンだと称した。「Stand Out Fit in」で「そっちの方も見えてるよ?」と呼びかけ、さらにドームをひとつにし、「3、2、1」とカウントダウンすると、3万人がジャンプ。LEDスクリーンに歌詞が映し出され、固定観念に惑わされることなく自分は自分だと歌う大合唱が響き渡った。
Takaは「Awichのライブを観て思ったのは、不可能なことなんてないし、それをONE OK ROCKは証明してきた。彼女は近い将来、こういう大きいところでライブをやると思うので、その時は呼んでくれたら駆けつけます」と言って、共鳴を示した。半年ぶりのライブということでセットリストに悩んだそうで、「何の曲をやったらみんなが喜ぶか考えて、結局昔の曲やればよくね?って思った(笑)」と話し、未だに1stアルバムの曲を聴いてくれるファンに対し感謝を述べた後、1stアルバム『ゼイタクビョウ』に収録されている「欲望に満ちた青年団」を披露した。
Photo by Matty Vogel
最新曲「Make it Out Alive」はイントロが鳴った途端、ハンドクラップが巻き起こった。ストンプライクなリズムとTakaのがなるようなボーカルが特徴的で、広大なドームに映える扇動的な楽曲だ。Takaは何度も力強く左手を突き上げてオーディエンスを鼓舞し、間奏では会場全体でヘッドバンギングが沸き起こったと思えば、ジャンプ&大合唱に突入。新たなライブアンセムで最新&最強のONE OK ROCKを見せつけた。
Takaが「久々に封じていた扉を開けたいと思ってます。皆さんの喜ぶ顔が見たいから」と言って、「Mighty Long Fall」へ。曲中にAwichを呼び込み、大歓声の中、再登場したAwichがラップをかます。花道の先にあるセンターステージでTakaと合流し、2人は3万人と共にヘッドバンギング。キング・オブ・ロックとヒップホップクイーンの誰も予想していなかったコラボレーションに3万人が絶叫する中、TakaとAwichは笑顔を浮かべて固い握手をした。
Photo by Matty Vogel
興奮冷めやらないオーディエンスに対し、Takaが「じゃあこのままいっちゃおうか」と言って、「The Beginning」へ。Takaの歌い出しとともに、巨大な手拍子が響いた。Takaは左手をまっすぐ突き出した後、「ベルーナドーム! Make Some Noise!」と叫び、センターステージでToruとRyotaと共に頭を激しく上下させ、激情を高めていった。
アンコールは、客席にスマホライトの波が生まれる中、「Fight the night」から始まった。一音一音が極太のそぎ落とされたバンドアンサンブルが、不屈の闘志を歌うTakaの美しい歌声を際立たせ、会場が荘厳かつ幻想的な雰囲気に包まれた。Takaが「ステージの後ろに戻ったらAwichがハブ酒を持っていて、メンバー全員飲んだらちょっとテンション上がっちゃいました(笑)。この1曲でベルーナドームを無茶苦茶にして帰りたいと思います! 準備はいいですか? お前ら次第だぞ!」と言って、ラストは「キミシダイ列車」。Takaはアリーナエリアの外周を走りながら、オーディエンスと近い距離で歌い、LEDスクリーンにはRyotaとTomoyaの笑顔が映る。爽快なポップパンクと共に「マジで人生短いんだからな! 悔いのない人生を送れよ!」とTakaが3万人を鼓舞。”もういいや このまま死んだって”の歌詞の後に「そしたらどうなんだ! お前ら!」とさらに焚きつけ、マイクを向けた。大合唱が響く中、勢いよく銀テープが飛び、Takaが「一緒に‼」と叫び、今日イチの巨大な歌が響いた。
Photo by Masahiro Yamada
キング・オブ・ロックとヒップホップクイーンの歴史的な邂逅が実現したライブはこれからの音楽シーンの発展にとても重要な意味をもたらすだろう。そう強く思った。