「人とくるまのテクノロジー展 2024」の会場を歩いていると、見なれないバイクを発見した。いかにも最新技術を満載していそうなハイテク感漂う1台だが、このバイクの正体は? マシンが置かれていたヴァレオジャパンのブースで話を聞いてみた。

  • 「人とくるまのテクノロジー展 2024」のヴァレオブース

    このバイクはいったい?

謎のバイクの正体は?

このバイクは「先進ライダー支援システム」を搭載した48Vフル電動モーターバイク(デモマシン)であるとのこと。ベースとなっているマシンはVmotoの「SUPER SOCO」で、48Vの空冷式モーターと電子制御ユニットが包含されたシステムを搭載しているという。内燃機関の125ccバイクと同じくらいの性能を持っているらしい。

デモマシンは日本プレミアとなる2つの技術を搭載している。ひとつは「二輪車用テレマティクス制御ユニット」。これは、緊急通報や盗難時の追跡、フリーハンドでのインターネット通話やルート検索など、さまざまな機能の提供が可能になるシステムだ。クルマではおなじみになりつつあるコネクティッド技術のバイク版だと言えるだろう。

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    デモマシンが搭載する「二輪車用テレマティクス制御ユニット」は、OEMやサードパーティのさまざまなアプリケーションが組み込める拡張性のあるテレマティクスとして開発中だとか

もうひとつの技術が「ARAS」(アドバンスド・ライダー・アシスタンス・システム)だ。これはクルマでいうところの「ADAS」(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム)で、コンピュータビジョンやAI技術をバイクライダー向けに活用した先進運転支援システムなのだという。

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    バイク向け先進運転支援システム「ARAS」

具体的には、カメラとECUを活用した前方衝突警報や前方障害物警報の発出や、オートハイビーム、道路標識認識システムなどでライダーの周辺環境認識を支援し、バイクの安全性向上と事故の低減を実現するシステムだ。

ヴァレオがバイクの技術を開発する理由は?

ヴァレオといえば、創業100年を超える自動車部品の世界的サプライヤー。日本で初めて自動運転レベル3を実現したホンダ「レジェンド」も搭載する「LiDAR」(レーザー光を使ったセンサー)など、多くの革新的な技術を手掛けるADAS分野のトップランナーだ。

そんなヴァレオのブースに、なぜバイクが置いてあるのか。担当者の回答は次の通りだ。

「四輪と違って、二輪用の先進安全システムはなかなか普及していない状況です。我々は四輪用では数々のADASを出していますし、カメラやAIを使ったコンピュータビジョンなどのいろいろなノウハウを持っていますので、それを二輪にも展開しようと取り組んでいるところです」

そもそも、ヴァレオが二輪事業に進出している背景には、WHOが発表している年間交通事故の死亡者数が関係している。それによれば、交通事故による年間死亡者数119万人のうち、約21%が二輪や三輪のライダーなのだという。

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    バイクの死亡事故を減らしたいというのがヴァレオが二輪に取り組む理由だ

担当者によれば、「それだけ多くの人が交通事故で亡くなっている現状を見ますと、やはり、何らかの取り組みが必要というのが我々の考えです。ADASのリーダーであると自負していますので、二輪のARASにも取り組んでいかねばなりません。特に、二輪向けの開発については、日本主導で取り組んでいく予定です」とのことだった。