世界7位の自動車技術サプライヤーであるフォルヴィアが開発した「スカイライン・イマーシブ・ディスプレイ」は、メーターとヘッドアップディスプレイからなる従来の「メーターパネル」に代わる新たなディスプレイだという。どんな技術なのか確認してきた。
どんなディスプレイ?
フォルヴィアの「スカイライン・イマーシブ・ディスプレイ」は「CES2024」でイノベーションアワードを受賞し、ドイツイノベーションアワードにも選出されるなど注目を集めている。「人とくるまのテクノロジー展 2024」でデモ機を見ることができたので、どんな技術なのか詳細を確認してきた。
フォルヴィアブースの担当者によれば、このディスプレイは「フロントウィンドウの下側に設置するため、ヘッドアップディスプレイのような厳しい法規制を受けることがありません。また、道路とディスプレイ間の視線移動量を減らせるので、より快適で安全なドライビング環境が実現できます。コントラストに限界のあるヘッドアップディスプレイと比べれば、視認性もはるかに高いです」(以下、カッコ内はブース担当者)とのことだ。
大きな特徴といえるのが、視野角に合わせて200ppiのTFTディスプレイ、60ppiのミニLEDディスプレイ、12ppiのLEDライトタイルディスプレイという異なる画素数の表示パネルを組み合わせているところだ。
「重要な情報を表示するのであれば200ppiのTFTが必要ですが、障害物が近づいているくらいの情報であれば、そこまで精密である必要はありませんので、12ppiもあれば十分です」
3つのパネルを組み合わせ、表示目的別にハードウエアの解像度を最適化することでコストの低減にもつながるという。
「もしも全てをTFTで構成したら、とんでもない金額なります。表示内容やコンテンツに応じてパネルを変えることで、コストを抑えることができます。今回のケースで言えば、全面TFTで構成した最大コストと比べて、半分くらいに抑えられています。複数ディスプレイですが単一のビデオインターフェースで駆動させるので、接続ハーネス部品が少なく、組み込みもシンプルです」
気になる市場投入はいつ頃?
「スカイライン・イマーシブ・ディスプレイ」には「ドライバーモニタリングシステム」(DMS)も組み込まれており、ドライバーの感情を読み取ることもできるという。
「カメラで読み取った表情から、ドライバーがイライラしている(怒っている)のか、楽しんでいるのかを判断して、それぞれの状態をディスプレイに表示させることができます。やはり、イライラした状態で運転するのは危ないので、ディスプレイで『いま、イライラしていますよ』と表示して、ドライバーに気づかせるように促すわけです。このように、人と機械がコミュニケーションを取れる部分もCES2024で評価されたポイントです」
ユニークな発想で開発された「スカイライン・イマーシブ・ディスプレイ」だが、技術自体は既存のものを使った組み合わせのイノベーションであり、夢の技術というわけではなさそうだ。では、現在の開発状況はどうなっているのだろうか。担当者に聞いてみると、「すでに一部の自動車メーカーがスカイライン・イマーシブ・ディスプレイの可能性を一緒に追求してくださっており、今は先行技術段階にあります。なので、あとはどう量産化していくかというところまで来ています」とのことだった。