鎌倉新書が運営する相続情報サイト「いい相続」は5月23日、「第2回 相続手続きに関する実態調査(2024年)」の調査結果を発表した。調査は2024年3月29日~4月21日、2023年1月~同年12月に「いい相続」経由で専門家(行政書士または税理士)との無料面談を行った人、および「相続費用見積ガイド」経由で専門家に相続手続きを依頼した417人を対象にインターネットで行われた。
相続財産の総額は「1,000万円未満」が最多
相続財産の総額についての質問では、「1,000万円未満」が42.0%で最多、次いで「1,000万円以上~2,000万円未満」が14.6%、「2,000万円以上~3,000万円未満」が12.7%と続き、前回調査と比較すると同水準の調査結果となった。ただ、相続人の居住地が1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の場合、「1,000万円未満」が最多ではあるものの、割合は28.4%と全国平均より13.6%減り、次いで「2,000万円以上~3,000万円未満」が20.9%、「1,000万円以上~2,000万円未満」が14.2%と続き、全国平均の2位と3位が入れ替わる結果となった。また、相続財産の全国平均額は約2,586万円となった。1都3県では、約2,997万円となり、全国平均額を約14%上回った。
相続する財産の内容の回答数は、「土地・建物」が84.4%、「現金・預貯金」が66.7%、次いで「生命保険」が25.7%、「有価証券・投資信託などの金融商品」が19.2%という結果となった。ただ、1都3県では「現金・預貯金」が79.1%、「土地・建物」が77.7%と、全国とは1位2位が逆転する結果となり、都心部の方が現金として財産を残す傾向がうかがえる。
相続人は「子」が最多、次いで「配偶者」「兄弟・姉妹」
相続人が「子」であるとの回答が82.0%で最多となり、次いで「配偶者」が32.6%、「兄弟・姉妹」が8.6%となった。この結果は、前回の調査結果と同水準で変化は見られなかった。
相続手続きにかかった費用は、過半数が「30万円未満」と回答
手続きにかかった費用は、過半数である56.5%が「30万円未満」と回答している。次いで「30万円~60万円未満」が27.3%、「60万円~90万円未満」「90万円以上」が8.1%となった。
また、専門家に依頼した手続きの内容について、手続きにかかった費用が「30万円未満」と「30万円以上」の方に分けて比較すると、専門家に依頼した項目のうち「相続税申告」については、「30万円未満」では8.8%であるのに対し、「30万円以上」では40.0%が依頼しており、約4.5倍もの差があった。さらに、相続税申告に関係が深い「財産目録の作成」についても「30万円未満」では22.0%のところ、「30万円以上」では45.7%と、約2倍もの差があり、このことから相続税に関する依頼については、費用が高くなる傾向にあるようだ。
相続手続きで大変だったことは何か、との質問への回答では「何をどう進めるべきかを理解するための情報収集」が最多で58.0%、次いで「必要な書類が多かったこと」が52.5%、「手続きのために時間が取られたこと」が40.0%となった。年代別に見ても前述の1位から3位は同じだったが、4位以降については違いが見られた。30代40代は「金銭的な負担が発生したこと」が40%台、70代は「相続人同士の連絡・同意を得ること」が45.8%、80代は「手続き先が複数あること」が50.0%で、年代別に大変さを感じるポイントが異なることがわかった。
相続登記の義務化について「知っていた」人はおよそ7割
相続登記の義務化とは、2024年4月1日から施行される「民法等の一部を改正する法律」に基づくもの。この法律の改正により、相続によって不動産の所有権を取得した場合、その所有権を登記することが義務化される制度。従来、相続を原因とする登記は任意だったが、相続登記が行われないまま放置された不動産が増加し、所有者不明の土地問題が深刻化していることより、これを解消し、不動産登記の正確性を高めるために相続登記の義務化された。
具体的には、不動産の所有者が亡くなった場合、相続人はその所有権の取得を知った日から3年以内に相続人等の権利者が所有権移転登記を申請することが義務付けられる。この期間内に登記申請を行わないと、正当な理由がない場合は過料が発生する可能性がある。この相続登記の義務化について、知っていたかどうかの質問では73.1%が「知っていた」と回答し、相続登記手続きに関わる人には一定の認知が広がっていることがわかった。
昨年中に相続登記手続きを開始した人のうち、相続が発生してから3年以上経過していた人の割合は23.3%、10年以上相続手続きをしていなかった人は9.9%と全体の約1割を占めていた。なお、最も古い人で、80年前の相続手続きに着手した人がいた。
故人の生前に「やっておけば良かった」ことは?
故人の生前に「やっておけば良かった」と思うことがありますか、という問いに対しては、「生前元気なうちに、相続について相談しておけばよかった」が全体の36.7%で最多となり、「日頃から相続についてもっと勉強しておくべきだった」が34.5%、「財産を記録しておく、通帳の置き場所を決める等まとめておいてもらえばよかった」が25.7%となった。「生前元気なうちに、相続について相談しておけばよかった」という回答が最も多いことから、家族間でのコミュニケーションの欠如が後悔の一因となっていることがうかがえる。その他の回答では、「カード決済などの解約を事前にしておくこと」という回答がみられた。