鉄道友の会は23日、今年のブルーリボン賞・ローレル賞を発表。宇都宮ライトレールのHU300形をローレル賞(優秀車両)に選定した。「次世代のLRT」を期待させるポテンシャルの高さを評価する一方、「次世代のLRT」を志向するために検討も必要としている。
HU300形は、全線新設のLRTとして国内初となる芳賀・宇都宮LRTの車両。3車体・3台車の連接車構造を採用した100%低床式のライトレール用車両で、17編成51両を新製導入した。1997年以降、熊本市電や富山ライトレール(現・富山地方鉄道富山港線)などで導入されてきた旧アドトランツ・タイプの車両構成を基本としており、車体や台車は基本的にこれまでの形式を継承しつつ、制御装置はSiCによるIGBTを採用した新しいものに。都市交通の新たな形を志向して開業する芳賀・宇都宮LRT向けの新たなデザインとなっている。
エクステリアは「雷都を未来へ」というコンセプトの下、一般アンケートの結果を受けてデザインされた。黄色を基調とした斬新なデザインで、車体前面の大型曲面ガラスにより前方運転視界を確保している。インテリアは間接照明やヴォールト天井、大きな側窓など採用。IC乗車券の利用ですべての扉から乗降可能となるように、乗車用・降車用のリーダーを各扉の左右に設け、利便性や乗降時間の短縮を図るなどの配慮がなされている。
芳賀・宇都宮LRTは軌間1,067mm。HU300形の車体幅は超低床式車両として最大の2,650mmとし、一般鉄道並みの座席幅450mmを確保することで利便性と快適性を高めた。定員は低床式車両で最大の159名。全長は29.52mで「軌道法の限界30mいっぱいの長さ」とのこと。
HU300形は新規開業のLRT路線でインパクトのあるデザインとなったことから、社会的にも大きく注目されるとともに、「次世代のLRT」を期待させるポテンシャルの高さからローレル賞に選定された。会員投票でも1位とほぼ同数の1,000票を超える60%以上の支持を受けたという。
ただし、同車両が「次世代のLRT」を志向するために、2つの点で「検討が必要」と指摘。「IC乗車券用の乗降読取機が車両側に設備されていることは評価できるが、実際の運用で、IC乗車券を持たない乗客の乗降に時間を要して遅れが生じる事態が発生した。駅等の地上側設備や乗車券システム全体の改良など、信用乗車の今後に向けた検討が望まれる」「現在は、軌道法による制限のため最高速度は40km/hに抑えられているが、今後、運転速度の向上が期待されている。本車両の運転最高速度は70km/hとされているが、高速域での走行安定性に改良の余地が感じられるので、今後の改善努力が望まれる」とした。