大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は23日、中央線の新型車両400系が2024年の鉄道友の会ローレル賞を受賞したと発表した。既存系列の車両とは一線を画すデザイン性と、多様な需要に応える設備を兼ね備えた車両であることが評価された。
鉄道友の会は毎年1回、日本国内で前年に営業運転を開始した新造・改造車両の中からブルーリボン賞(最優秀車両)・ローレル賞(優秀車両)を選定している。前身の大阪市交通局で1970(昭和45)年に堺筋線の60系、1991(平成3)年に現・長堀鶴見緑地線の70系がローレル賞を受賞しており、今回は経営形態の変更後、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)となってから初のローレル賞受賞となる。
2023年4月に運行開始した400系は、2025年に開催予定の大阪・関西万博に向けて、アクセス路線にふさわしい車両をめざし、「乗って楽しいワクワク感を提供できる宇宙船をイメージさせる未来的なデザイン」として設計・開発された。1編成あたり6両で、これまでに13編成が導入済み。2025年4月までに23編成をそろえる予定だという。
400系の車体はアルミニウム合金製。摩擦撹拌接合を用いたアルミダブルスキン構体を採用し、特徴的な先頭構体は3次元削り出し加工により、高精度かつ曲線美を実現している。車体前面は運転台からの視認性および客室内からの展望性を重視するため、各面のガラス面積を大きく取り、前照灯と尾灯を四隅に寄せ、多面体を想起させる形状を生かした配置に。避難路確保のため先頭部に設置した非常扉は、天地左右を絞り込んだ形状としながら運転室の右側半分を充て、車体前面の大半を黒色とすることにより、目立たないように仕上げたという。
車内においては、ドア間で向かい合う座席配置を線路方向にずらし、座席定員と大型荷物を持つ旅客等がそれぞれ利用しやすい空間を確保できる要件を両立。腰掛は座り心地を向上させるため、背ずりを高くした。パーソナルスペース確保や移動する楽しみといった需要にも応えるべく、4号車の側出入口間に1人掛けの固定クロスシートを3席ずつ設置。多様化するニーズに応え、先頭車中間側妻面付近の機器室スペース部分にUSBコンセントを設置したカウンターを配した。
電機品類をはじめとする機器類は、最新水準のものを継続して採用したほか、必要に応じて変更を加えている。情報機器として、予防保全やメンテナンスの効率化を目的に、車両の状態を常時モニタリングし、地上のクラウドサーバに伝送するシステムを構築。中央線の大阪港駅から夢洲駅まで、2024年度に「GoA2.5」(動力車操縦者運転免許を有しない係員が運転室に添乗する自動化レベル)自動運転の実証実験も予定しており、これに向けて輸送指令と車両間で自動運転に必要な指令や車両状態などを送受信する伝送システムも構築している。