第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が進行中。5月21日(火)には6組決勝の藤本渚五段―山下数毅三段戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、雁木対棒銀のねじり合いから抜け出した藤本五段が132手で勝利。十代同士の大一番を制して決勝トーナメント出場を決めています。
18歳対15歳の大一番
約70名が参加する今期の6組ランキング戦は優勝の1名に決勝トーナメント出場権が与えられるもの。とりわけ本局の結果には山下三段の三段リーグにおける2回目の次点獲得(フリークラス編入での四段昇段が可能になる)が懸かっており、その点でも多くの注目が集まりました。
振り駒が行われた対局は後手・藤本五段得意の雁木に先手・山下三段が棒銀で対抗する構図に。乱戦が予想された盤上はおたがいが手持ちの角を自陣に打ったことで持久戦に落ち着きました。駒組みが続いたのち矢倉の堅陣に組み上げた山下三段がリードを奪います。
若さみなぎる早指し
「無傷の矢倉囲い+攻防の右銀」という好形で作戦勝ちを得た山下三段ですが、直後に分岐点が待ち受けていました。玉頭の継ぎ歩を手抜いて桂取りを急いだのは駒得を頼りに息長く指す方針ながら疑問。ここは自陣を崩さぬまま後手陣に嫌味をつける「もたれ指し」が優りました。
意を決したような手つきで踏み込んだ山下三段、対する藤本五段は悩まし気な表情を見せつつ、若武者同士の戦いらしく早指しで先を急ぎます。藤本五段が金を犠牲に飛車の成り込みを優先したのは当然とはいえ好手。竜ができたことで後手は指し手の方針がわかりやすくなりました。
先輩の威厳示す
優位に立ってからの藤本五段の指し手は冷静でした。馬を見捨てて急所の金に狙いをつけたのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの決め手で、先手玉に受けはありません。終局時刻は19時29分、山下三段が自玉の詰みを認めて熱戦に幕が引かれました。
勝って6組優勝を決めた藤本五段は本局について「すごく気合が入った。(本戦の目標としては)まずは一勝を」と語りました。敗れた山下三段は「普段から練習対局で教えてもらっている藤本五段と戦え、嬉しく思った。急に不利にしてしまい残念」と振り返りました。
局後のSNSは「若者の才能に満ちたいい将棋」「近い将来の(山下三段の)昇段に期待」と両者の健闘を称えるコメントにあふれました。
水留啓(将棋情報局)