東京国立近代美術館(東京・竹橋)で5月21日、東京、大阪、パリの3都市を代表する美術館のコレクション(所蔵品)を集めたユニークな展覧会「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」が開幕した。

美術館3館の豊かなモダンアートのコレクションが一堂に

  • 東京国立近代美術館(東京・竹橋)で開催されている「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」。「実は各都市のパリ、東京、大阪のアルファベット表記の中に”トリオ”という言葉が潜んでいるということもこの展覧会タイトル決定後に発覚しまして、企画者一同大変盛り上がりました(笑)」というエピソードも記者会見で披露された

豊かなモダンアートのコレクションを築いてきたパリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館のコレクションから、主題やモチーフ、 色彩や色、素材といった共通点のある作品でトリオを組み、構成するという、これまでにないユニークな展示を試みたもの。

  • セーヌ川のほとりに位置するフランス最大級の近代美術館 パリ市立近代美術館、皇居のお堀前に建つ日本初の国立美術館 東京国立近代美術館、大阪市の中心部に2022年開館したばかりの新しい美術館 大阪中之島美術館

ピカソ、ローランサン、バスキア、藤田嗣治、佐伯祐三、草間彌生など20世紀から現代にかけて活躍してきた、西洋と日本の110名のアーティストの作品が一堂に会する。モダンアートを代表する巨匠から現代に活躍するアーティストまで、初来日32点を含む約150点。

東西アーティストが共演、どんな「トリオ」?

展示室ではじめに迎えてくれるのは、3館のコレクションのはじまりを刻んだ作品の中から選ばれたトリオ。椅子に座る人物像がモチーフとなっている。

  • 「コレクションのはじまり」佐伯祐三《郵便配達夫》、ロベール・ドローネー《鏡台の前の裸婦(読書する女性)》、安井曽太郎《金蓉》

こちらはストリートの空気を漂わせるトリオ。どれも画面に浮遊する文字が存在感を放つ。

  • 「都市のグラフィティ」ジャン=ミシェル・バスキア《無題》、佐伯祐三《ガス灯と広告》、フランソワ・デュフレーヌ《4点1組》

展覧会のメインビジュアルにもなっているのが「モデルたちのパワー」と名付けられたトリオ。どれも大胆にくつろいだポーズで寝そべる女性たちが描かれている。「描いた画家自身もアンリ・マティス、萬鉄五郎、アメデオ・モディリアーニと美術史の歴史に名を残した巨匠たちばかりなんですけれども、でもこの絵画を成立させる条件というのは、なによりもモデルがいなければ始まらなかった作品です。このモデルの持っている力強さ、それによって画家が作品を描くことができたという点にも注目して見ていただければと思います」(横山由季子氏(東京国立近代美術館 研究員))。

  • 「モデルたちのパワー」アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》、萬鉄五郎《裸体美人》、アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》

主役である人物をどのような構図の中に配置するか、画家たちが趣向を凝らしたトリオ。

  • 「人物とコンポジション」岡本更園《西鶴のお夏》、マリア・ブランシャール《果物かごを持った女性》、小倉遊亀《浴女 その一》

空間に線を描き、その先に幾何学形の金属片を取り付けたような、軽やかな作品のトリオ。「この3点は非常に調和しておりまして、使っている素材や構成している要素も非常に似通っています」(高柳有紀子氏/大阪中之島美術館 主任学芸員)。

  • 「軽やかな彫刻」ファウスト・メロッティ《対位法 no.3》、アレクサンダー・カルダー《テーブルの下》、北代省三《モビール・オブジェ(回転する面による構成)》

いわゆる抽象と呼ばれる要素で構成されているにもかかわらず、どこか温かみのある親密な雰囲気のあるトリオ。「この中の一人マーク・ロスコは『私の作品は抽象画ではない。生きて呼吸している』という有名な言葉を残していますが、単純に色と形を組み合わせた抽象画というよりかはその色彩、とりわけ半透明の色彩を重ね合わせることで、その表面の色彩の奥にある色彩がにじんで見る人の目の前に浮かび上がってくるような点がこのトリオには共通しています。これも本物を前にしないとなかなか伝わらない感覚ですのでぜひじっくり3点を比べていただければと思います」(横山氏)。

  • 「色彩の生命」辰野登恵子《UNTITLED 95-9》、セルジュ・ポリアコフ《抽象のコンポジション》、マーク・ロスコ《ボトル・グリーンと深い赤》

見どころは、モダンアートの豊かなコレクションを誇る3館だからこそ実現した企画だということ、3館の学芸員による共同オペレーションならではの多様な視点が盛り込まれているということ。また、34のトリオすべてで西洋のアーティストと日本のアーティストが交ざって展示されている"東西のアーティストの共演"にもなっている。

「ここでしか隣に並ぶことのない作品たちの一期一会。ぜひトリオというかたちに注目して見ていただけると、それぞれの作品の見方が広がっていくのではないかなと思います」(横山氏)。

美術館の前庭「TRIO CAFE」には、プラントベースのクラフトヴィーガンジェラートブランド「TUTTO(トゥット)」とコラボした展示会オリジナルジェラート(シングル500円、トリオ900円)がキッチンカーで登場する。

  • 「TUTTO(トゥット)」とコラボした展示会オリジナルジェラート(トリオ900円)

ミュージアムショップも必見。「オダリスクの椅子のクッション」(8,800円)、「眠れるミューズクッション」(3,850円)、「モンパルナスのキキの顔2WAYショルダーバッグ」(6,380円)など、楽しい作品コラボグッズが並んでいた。

  • 作品コラボグッズもユニーク

また、タルト専門店「キル フェ ボン」(キル フェ ボングランメゾン銀座・青山・グランフロント大阪店)では、34あるテーマのうちのひとつ「空想の庭」をコンセプトにした新作「キルフェボンガーデン ~ブルーベリーチーズ風味~」(piece 1,188円 / whole(25cm) 11,880円)を販売している。

  • 「キルフェボンガーデン ~ブルーベリーチーズ風味~」(piece 1,188円 / whole(25cm) 11,880円)

「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」
会場: 東京国立近代美術館
期間: 5月21日〜8月25日(10時~17時/金曜日と土曜日は20時まで/入館は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日、8月13日
料金: 一般2,200円/大学生1,200円/高校生700円/中学生以下、障害者手帳提示の人とその付添者1名は無料
※大阪会場: 9月14日~12月8日、大阪中之島美術館に巡回