乃木坂46一期生の高山一実が、自身の経験などをもとに、アイドルを目指す高校生の姿を描いた小説『トラペジウム』がアニメ映画化され、現在公開されている。同作で、主人公の東ゆうをサポートすることになる、カメラが好きな男子・工藤真司の声優を務めたのが、JO1の木全翔也だ。
アイドルを目指す少女たちの姿を描いた作品に、共感したという木全。今回のインタビューでは、実際に自身も芸能界で活躍するからこそ感じた真司というキャラクターについてや、作品に深く共感したところ、また自身の夢を追いかけた経験についても話を聞いた。
映画『トラペジウム』で男子校生・工藤真司の声優を務めた木全翔也
――今作が初の劇場映画声優挑戦ということで、お話が決まった時はどういうお気持ちでしたか?
お話をいただいてから収録までの期間が短く、すぐに収録に行きました。参加して、自分の人生に近いことが書いてある物語だと思いました。
――演じた真司については、どのような役だと解釈していたんですか?
主人公のゆうをサポートして客観視するポジションなんですけど、それがゆうにとってはありがたくもあり、難しくもあるんじゃないかなと思いました。良き理解者だけど、結局本人ではないから複雑だし、完全に同じものは見れていないキャラクターなんだなという気がしました。だからこそいい部分もあって、ゆうにはない発想もある。夢を目指す本人と、それを見ている友達という熱量の差も感じる役でした。
ただ僕も18歳までは普通の学生だったので、真司の気持ちもわかるんです。今僕は、ゆうが目指していた方の人生を送っているけど、普通に過ごしていたら真司みたいな気持ちになっていると思います。両方経験しているので、どっちもわかる。今回はアイドルが題材ですけど、他の仕事で置き換えることもできるし、夢を追いかけることのリアリティがすごい作品です。
――原作を読んだ時は、特にどこが刺さりましたか?
原作を読んだ時は、ただただ、ゆうに感情移入していました。自分もオーディションを受けて今の仕事をしてるので、そのために努力したことも思い出しました。芸能界に憧れているけど親には言えなかったし、誰かに相談できることでもないし……やっと相談したのが、JO1のオーディションでした。うまくいかないもどかしさにもリアリティがあふれていて、高山さんもそういう経験をされていたからこそ生まれた作品なのかなと思いました。
――どういう努力、準備をされていたんですか?
ダンスや歌も習っていました。先生からも「もっといけるよ」と言っていただけていたけど、なかなか踏み出せなかった。お金もかかるし、たくさん練習して、タイミングを伺ってようやく、という感覚でした。僕が学生時代に出演したKCONのダンスのイベントが終わってしまい、「もう歓声を浴びられないのか」と思った時に、“JO1のオーディションを受けるためのオーディション”があって。軽いノリだったんですけど、101人に選ばれた時に「まさか」と。そこで、やっと親や専門学校にも相談することができました。
仕事が好きで「仕事自体がリフレッシュになっています」
――作品の中では、登場するキャラクターのモチベーションの違いも出てきたりしています。木全さんはどんなタイプですか?
僕はもう、とにかく仕事したいタイプなんです。学生の時も週6バイトで、日曜日にダンスという感じだったので、働くこと自体が好きです。働くと経験値も稼げるし、今まで知らなかったことを知ることができる。今の仕事でも、たとえば演技だったら自分じゃない人生を演じて新たな考え方を知ることができるし、地方ロケなら初めて行く場所にも行ける。歴史のあるものを見て「自分の悩みなんてちっぽけだな」と気づくこともありますし、仕事の現場にインプットできるものがたくさんあるから、仕事自体がリフレッシュになっています。
――うちもマイナビという会社なので「仕事が楽しい」というのはすごく素敵だなと思います。
仕事、めっちゃ好きです!(笑) バイトも大好きです。今でもちょっとやりたいくらいです。
――ちなみに、どんなアルバイトをされてきたんですか?
僕は、バイトデビューがたこ焼き屋さんでした。そこからホテルでバイトするようになったんですが、客室担当というよりも、ブライダルパーティーでディナーの配膳をしたり、ドアを開けたり、クロークを担当したりと、けっこうなんでもやっていました。ヘルプでカフェに行くこともありましたし、いろんなことをやっています。
――その時に配膳されていたお客さんは、木全さんがJO1になっていると知ったら驚きそうですね。
そうかもしれないです(笑)
「何回もやって、何回でも諦めない人がきっと成功する」
――先ほどもゆうに共感されたとおっしゃってましたが、特に共感したところはありましたか?
ゆうの進む道って、スムーズではないじゃないですか。そこにすごく共感しました。自分もスムーズではなかったですし、それこそオーディション中にもいろんなチームを組んだので、チーム内で賛成意見もあれば反対意見も出るような状況が、リアルにわかります。ケンカや、メンバーの熱量が違うこともやっぱりありましたし、高山さんご自身が経験されてきたんだろうなと。お互いを理解して頑張って成功して、「やった、よし!」みたいな感じではないところが、すごくリアルだなと思いました。
――昔は「親が勝手に応募して…」という話もよくありましたが、今はみなさん自分で夢を追っていますよね。
それ、本当なんですか!?「絶対嘘だよ」「『自分で送った』って言いたくないからだよ」と言っている人もいて。僕は全然自分で応募したんですけど、その手を使えばよかったかも(笑)
――ステージに立つことについての憧れを、当たり前に言える時代になっているのかもしれないです。
たしかに、憧れていることを恥ずかしがって言わない、といったことはないかもしれません。でも、やっぱり冷やかされることはあります。夢が大きければ大きいほど、「何言ってるんだよ」「冗談かよ」という反応はあって、それが「サッカー選手になりたい」でも「社長になりたい」でも、あると思います。ただ、「こうなりたい」と言ってみたら、意外と協力してくれる人もいたりする。全員が全員バカにする人じゃないし、親身になって聞いて導いてくれる人、応援してくれる人も出てきたりするので、今回はアイドルが題材ですが、そうではない夢の人も、行動してみるのがいいと思います。
もし冷やかされたりしても、やっぱり気にしちゃダメだなって。ゆうも、気にせずに夢に向かって進んでいくところがいいですよね。僕もJO1のオーディションに出るために専門学校を休学すると周囲に話したら、「やめときなよ」と言われることがありました。でも、本当に頑張ったら努力も実る。もちろんうまくいかないこともあると思うんですけど、何回もやって、何回でも諦めない人がきっと成功するんじゃないかなと。その分、失敗の数も多いと思うけど、とにかく行動してみた方がいいと思います。
――木全さんは「やめときなよ」と言われると燃える方ですか?
余計に「いったろう!」と思います(笑)。無理かもと思ってもやってみるし、やるからには絶対に手を抜かない、という気持ちで行動していたら、運良く選んでもらえました。
――ゆうは「アイドルから元気をもらって、自分もそういう存在になりたい」という点がモチベーションでしたが、木全さんはどうしてそこまで頑張れるんでしょうか?
僕自身が、幸せになりたいからです。応援していただけるのは、嬉しいじゃないですか。だから、僕が楽しくてファンの方も楽しいという状態はwin-winで、それがいいんです。もちろん僕からも感謝の気持ちを届けながら、皆さんに応援してもらえること、歓声を巻き起こせることが嬉しいです。
■木全翔也
2000年4月5日生まれ、愛知県出身。サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』に参加、グローバルボーイズグループ「JO1」としてデビュー。声優、俳優としても活躍しTVアニメ『群青のファンファーレ』(22年)で声優デビュー。ドラマ『しょうもない僕らの恋愛論』(23年)で地上波ドラマに初出演した。3月全国劇場公開の映画 「映画しまじろう『ミラクルじまの なないろカーネーション』」にも声優として出演中。公開待機作に映画『逃走中 THE MOVIE』(7月19公開)。
ヘアメイク:西尾さゆり、スタイリスト:ホカリキュウ