フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で12日に放送された『芸に命をかけた人 ~南部虎弾と妻の約束~ 前編』(TVer・FODで見逃し配信中)。過激な芸を売りにするパフォーマンス集団・電撃ネットワークのリーダーであり、今年1月に亡くなった南部虎弾さんと彼を支え続けた妻を追った作品で、19日放送の後編でいよいよ別れの時が訪れる。
取材したのは、これまでも個性的な芸人たちの生き様を追ってきた朝川昭史ディレクター(NEXTEP)。密着を通して感じた南部さんの魅力、“一心同体”という妻との関係性、撮影を許された葬儀の様子など、話を聞いた――。
「これが最後のテレビになるかもしれないから」
『ザ・ノンフィクション』で、ゲーム芸人・フジタがかつて自分を捨てた父を介護する姿を追った『あの日 僕を捨てた父は』を制作する朝川D。この取材で、フジタが芸人仲間とのいちご狩りに婚約者を連れて紹介したが、ここに参加していた1人が、顔中のピアスが特徴的な電撃ネットワークのランディー・ヲ様だった。
話をしてみると、リーダーの南部さんが腎臓を弱らせて命の危機に陥ったが、そこから復活して元気に活動しているという情報が。「腎臓の移植をしているけど、疲れやすくなって、過激なネタもできない状態だったんです。なので、早く若手の元気さんに次のリーダーとしての自覚をもってもらわないと、電撃はもうダメだろうと言っていたので、その師弟関係を追ってみたい」(朝川D、以下同)と取材への興味がわいた。
南部さんはすぐに快諾してくれたが、妻の由紀さんはそれまでテレビ取材は絶対NGと決めており、交渉は難航。それでも闘病の話を描くにあたって、「夫婦間腎移植」で腎臓を1つ提供し、いつも病院に付き添い、家でも減塩メニューの食事を作るなど、献身的に支え続ける彼女なしの取材は、考えられなかった。
そこで、南部さんから由紀さんを説得してもらうことに。決め手は、「これが最後のテレビになるかもしれないから」という言葉だった。
「もちろん、その時にこんなに早く亡くなるなんてことは分かっていなかったです。死ぬとか生きるということではなくて、もう年齢的にテレビに出られるギリギリだから、最後になるかもしれないということで、口説き落としてくれて、OKを頂きました」
電撃メンバーも見たことがない自宅の様子
番組では、2人が暮らす古い自宅アパートでの生活の様子が映し出されているが、「電撃ネットワークはメンバーお互いがバラバラで、みんなプライベートで何をしているのか全く知らないそうです。だから、他のメンバーも家の中に入ったことはないそうで、撮影させてもらったと言ったらみんなびっくりしてました」という。
放送では由紀さんの気さくな人柄が垣間見えるが、間近で接して感じた夫婦関係は、「奥さんは南部さんの中に自分の腎臓が入ってるんで、“自分の腎臓が南部を動かしてる”と言ってますが、すごい愛情と絆を感じますね。常に寄り添っている感じで、腎臓を分け与えたからこそ、普通の仲の良い夫婦以上の愛情があって、本当の意味での“一心同体”なんだなと思いました」と印象に残った。
そんな夫婦2人ではラブラブな南部さんだが、現場ではプロの顔に。「あのユニフォームを着て、化粧をして、頭をひげ剃りで整えて、サングラスをかけることで、自分で自分を切り替えて、ステージに上っていましたね」。