ホンダはクルマの電動化に関する戦略の進捗状況と今後の計画を発表した。電動化戦略の実現に向けた投資額(電動化・ソフトウェア領域に対する2030年度までの10年間の投資額)は、2年前に発表した金額の倍となる10兆円とする方針。主力車種「Honda 0 シリーズ」(ゼロシリーズ)では全世界で7モデルの新車を投入する。
主力車種ゼロシリーズで7種類の新車を投入
ホンダは「2024 ビジネスアップデート」と題する記者会見を実施。三部敏宏社長が登壇し、電動化戦略について説明した。
電気自動車(EV)については北米および欧州で市場拡大が踊り場に差し掛かっており、普及の減速感がささやかれる状況ではあるものの、長期的に見ればEVシフトは「着実に進む」というのが三部社長の考え。EV普及のスピードが変化するのは当初から織込み済みであり、足元の状況変化にとらわれることなく確実に仕込みを進め、強いEVブランドとEV事業体制を構築していくことが重要だとした。
自動車販売では、2040年にグローバルでのEV/FCEV(燃料電池自動車)の販売比率を100%とするという目標に変更なし。2030年には40%(EV200万台)を目指す。200万台の内訳は北米75万台、中国75万台、残りの50万台は日本、アジア、欧州で分け合うイメージだという。
EVの主要な部品のひとつであるバッテリーを含めた「包括的バリューチェーン」の構築も進める。資源調達からEVリサイクルまでの「垂直統合型バリューチェーン」を2020年代後半までに構築する方針だ。2025年にはLGエナジーソリューションとの合弁バッテリー工場が米国で稼働を開始する見込み。2030年には北米で調達するバッテリーコストを現行のバッテリー比で20%以上削減、予定している約200万台分のEV生産を賄うバッテリーを確保する見通しだという。
投資額はどうやって稼ぐ?
会見では三部社長に報道陣から質問が飛んだ。
例えば、なぜ2年前に5兆円としていた投資額を一気に倍の10兆円に上方修正したのか。この点については、EVベースの「ソフトウェアディファインドビークル」(SDV)を生産するにあたり、EVのコストの3~4割を占めるバッテリーの「手の内化」が不可欠と考えた結果、投資額を上積みしたとのこと。巨額な投資額が発生しても、「そのあとのEV事業で回収」できる手ごたえは得ているという。
「キャッシュ創出の力」(稼ぐ力)が十分についたという自信が投資額増加の背景となっているらしい。現在のホンダのビジネスを支えるハイブリッド車(HV)については「北米を中心に好調」と三部社長。コストダウンと性能向上を着実に進めてきた結果、今では「十分に収益の出るクルマ」になったというホンダのHVだが、今後はパワートレイン/プラットフォームの刷新を図り、さらに高効率でコストが低く、小型化を実現したHEVシステムを作り出す計画だ。
HVの販売は増え続けていて、今後は年間180万台レベルまで拡大する可能性もあるとのこと。今はHVの増産に向けた計画を練っているそうだ。好調なHV事業で販売台数の増加と収益性の向上を図り、そこで稼いだお金をEVへの投資に回していく。そんな好循環を狙っているらしい。