サントリーホールディングスは5月14日、2024年のサントリー日本ワインの戦略発表会を開催。フラグシップワイン「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」を発表し、9月10日より数量限定販売する。

  • フラグシップワイン「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」(左)、「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」(右)

ワインブランド刷新の手ごたえを感じた2023年度

サントリーホールディングスは2022年9月にワインブランドを刷新し、「SUNTORY FROM FARM」という日本ワインブランドを展開している。

このブランド名には「すべてを畑から」という思いが込められており、100年以上続く同社の租業であるワイン事業において、世界に肩を並べる「ジャパニーズワイン」の実現を目指している。その思いを表現したのが、自然の中でテロワールに向き合い、人の手で心を込めてワインを作っていることを伝える「水と、土と、人と」という言葉だ。

  • 「SUNTORY FROM FARM」のロゴとブランドメッセージ

サントリー 常務執行役員 ワイン本部長の吉雄敬子氏は、「日本ワインはなにを目指すのか。フランスワインですとか、他の国のワインを模倣するのではなく、日本の我々が『オリジナリティのある日本のワイン』を作るというのが私どもの考え方です。世界にも肩を並べることができるワインを作り、日本と世界のお客様に愛していただくことが我々のものづくりのゴールになります」と述べる。

  • サントリー 常務執行役員 ワイン本部長 吉雄敬子 氏

2023年度、同社の甲州ワインは国際コンクールで高い評価を受けている。とくに「登美の丘」はデキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2023においてプラチナ賞を、「ワインのみらい」が金賞を受賞。日本ワインコンクール 2023においても「塩尻」「津軽シャルドネ&ピノ・ノワール スパークリング」がそれぞれ最高賞を受賞している。

また山梨県甲斐市の「サントリー登美の丘ワイナリー」における顧客接点を柱のひとつとして、ブランド価値向上に邁進。ワイナリーツアーのみならず「FROM FARMワインフェス」「つくり手ツアー」などを展開し、2022年度比151%となる3.6万人の来場者があったという。

フラグシップワインとワイナリーの進化を目指す

着実な前進を続けている「SUNTORY FROM FARM」。2024年の方針・戦略は「世界へ挑戦するための『ものづくり』と『ワイナリー』の進化」だ。これらを実現するため、サントリーはフラグシップワインとワイナリーの進化を目指す。

  • サントリー日本ワインにおける2024年の方針・戦略

フラグシップワインの進化における戦略のひとつは、日本固有の白ブドウ品種「甲州」の強化。山梨県内にある同社保有のぶどう園、管理畑における2023年度の「甲州」の収穫量は49トン。これを2030年までに6倍超となる297トンまで拡大する見込みだ。

ふたつ目として、フラグシップワイン「登美」として初めて「甲州」を100%使用した「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」を9月10日に発売する。カタログ価格は12,000円(税別)となり、1,128本/94ケースの出荷を予定している。

同時に、最高品質の赤ワインを目指し、黒ブドウ品種「プティ・ヴェルド」にこだわった「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」を9月10日に発売する。「プティ・ヴェルド」54%、「カベルネ・ソーヴィニョン」46%を使用しており、カタログ価格は20,000円(税別)。540本/45ケースの出荷を予定している。

  • 「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」(左)、「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」(右)

ワイナリーの進化における戦略では、「登美の丘ワイナリー」のテロワールを活かす取り組みを強化する。

約7億円を投資し、40台の小容量タンクを備える新・醸造棟を9月に着工、2025年9月より稼働させる見込みだ。畑区画ごとのブドウを仕込み、ブドウの特徴ごとに細かい原酒のつくり分けを可能にすることで、より高品質なワインづくりを実現するという。

  • 40台の小容量タンクを備える新・醸造棟を新たに建設する

同時にサステナビリティへの取り組みを推し進め、気候変動への対応、土壌保全や地域社会との共生とその周知・拡大をより進化させていく予定だ。また顧客接点の強化として、つくり手と畑を知る限定ツアーやワインの楽しみ方を知る商品やイベントも企画されている。

  • 「サントリー登美の丘ワイナリー」での顧客接点強化

栽培技師長が語る「登美 甲州 2022」「登美 赤 2020」の魅力

「サントリー登美の丘ワイナリー」の栽培技師長を務める大山弘平氏は、「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」と「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」の特長について説明する。

  • サントリー登美の丘ワイナリー 栽培技師長 大山弘平 氏

「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」で使用されている白ブドウ品種「甲州」は、綺麗な柑橘香、クリーンな味わいという魅力があるが、欧州系品種に比べ糖度が上がりにくい。品種が持つ良さを活かしつつ、“いかに凝縮感を高めるか”が世界の白ワインと肩を並べるためのカギとなるという。

この凝縮感を実現するため、サントリーは圃場の選定や栽培方法など、さまざまな取り組みを行ってきた。そして山梨県が選抜した高糖度の系統を選び抜き、完熟したブドウだけを房単位で収穫することで、「登美 甲州」を想定して栽培した2区画では、過去4年間で糖度を急激に高めることに成功したという。

  • 活動開始から4年で「甲州」の糖度を急激に高めることに成功

こうした取り組みによって凝縮感を高めたフラグシップワインが、「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」となる。大山氏は「『甲州』という品種と『登美の丘』のテロワールに敬意を払い、凝縮感と気品を高次元で併せ持つ、これまでの『甲州』とは一線を画すワインを実現したと考えています」と語る。

一方、「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」に使用されている黒ブドウ品種「プティ・ヴェルド」はフランス原産で、ボルドーでは補助品種として栽培されている。

だが、サントリーは「プティ・ヴェルド」が日本ではより個性豊かな味わいを獲得していることに着目。フェノール化合物の成熟の差で「プティ・ヴェルド」の品質の差が生まれるという仮説のもと、高品質な「プティ・ヴェルド」の栽培に取り組んだ。

  • フェノール化合物の成熟を待つことで高品質な「プティ・ヴェルド」を栽培した

さらに2022年より導入している無破砕仕込、垂直型圧搾機によってブドウのポテンシャルを引き出したのが、「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」だ。大山氏は「少しずつ変わりゆくテロワールとともに歩み、進化してきたこのワインは、力強さと滑らかさ、そして上品さが融合した、高いオリジナリティを持つワインになっていると思います」と評価した。

ワイナリー訪問に適した季節は5月中旬から収穫期の10月まで。サントリーのワインづくりにかける思いと、サントリー日本ワインの味わいを知りたい方は、ぜひ「サントリー登美の丘ワイナリー」を訪れてみてほしい。