伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが大詰め。5月14日(火)には最終5回戦計6局の一斉対局が東西の将棋会館で行われました。3人が同星で並び立つ紅組は斎藤慎太郎八段―藤本渚五段の直接対決が行われ、これを102手で制した斎藤八段が挑戦者決定戦進出を決めています。
雁木を受けて立つ姿勢
勝ったほうがプレーオフ以上を手にする大一番。両者初手合いの本局、先手・藤本五段得意の雁木に対して後手・斎藤八段が用意したのは角を左辺に転回する持久戦策でした。がっぷり四つの駒組みに進み先手の囲いは中住まい調、後手は菊水矢倉へと姿を変えます。
後手の角頭を狙い目と見た藤本五段が動きます。自陣の飛車を大きく左に転回したのは直後の桂捨て作戦と連動したもので、後手が素直に応じれば8筋の歩を突き返して飛車先逆襲が実現します。調子よく攻めて先手よしと思われましたが実際の形勢は数手後に明らかに。
斎藤八段が快勝で挑決へ
首尾よく敵陣突破に成功した藤本五段ですが攻めが一段落したところで手が止まります。45分の長考でひねり出したのは成香を犠牲に飛車を成り込む駒損の攻め。苦心の案でしたがこれ以降この竜が働くことはなく、逆に斎藤八段の鋭い反撃を見るばかりとなりました。
辛抱の時間を乗り切った斎藤八段は満を持して先手陣攻略に乗り出します。得した香を6筋に据えたのが味のよい決め手。先手の玉頭を角銀香の3枚が鋭くにらむ形となって攻めが切れなくなりました。終局時刻は19時34分、最後は自玉の詰みを認めた藤本五段が投了。
攻めさせて勝つ老練な指し回しを見せた斎藤八段はリーグ成績を4勝1敗として紅組優勝を飾りました。一方で敗れた藤本五段は3勝2敗と勝ち越しながらリーグ陥落。対局室を去る際のうなだれた姿勢が印象的でした。なお白組では渡辺明九段が優勝を決めています。
水留啓(将棋情報局)