高騰する東京都内の新築マンション。年収1000万円でも購入するには躊躇するでしょう。しかし、夫婦でバリバリ働いている高収入パワーカップルなら、ペアローンを組んで購入できそうです。そこで、パワーカップルがペアローンなどで収入合算して住宅を購入する場合のポイントや注意点などを解説します。

  • パワーカップルが収入合算して住宅を購入する場合のポイントや注意点は?

    パワーカップルが収入合算して住宅を購入する場合のポイントや注意点は?

都内の新築マンション、年収いくらなら買える?

不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2023 年度」よると、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の新築マンションの平均価格は7,566万円となっています。東京都に絞ると、東京都下は5,375万円、東京23区は1億464万円です。これが新築マンションの平均価格になるので、東京23区の新築マンションはもはや庶民には手が届かないものになってしまったといえるでしょう。

  • 首都圏マンションの平均価格 出所: 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2023 年度」をもとに筆者作成

一般的に、住宅を購入するときの基準として「物件価格は年収の5倍まで」といわれますが、この説に従うと、1億円の物件を買うには年収2,000万円ないと買えないことになります。1人の収入では到底買うことはできないでしょう。しかし、お互いが年収800万円~1,000万円程度の収入がある夫婦であれば、合算することで可能となります。

国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」によれば、給与所得者で年収2,000万円を超える人の割合は0.6%であるのに対し、年収800万円超えの人の割合は10.9%です。平均年収は458 万円なので、高所得であることに変わりはありませんが、2,000万円よりは現実的でしょう。そこで、お互いの年収が800万円以上ある夫婦をパワーカップルと定義して、パワーカップルが収入を合算して住宅を買う方法を次にみていきたいと思います。

夫婦で住宅ローンを組んで買う方法

夫婦二人の収入を合わせて住宅ローンを組む方法には、「収入合算」と「ペアローン」があります。それぞれの特徴をみてみましょう。

*収入合算

住宅ローンの契約者(主債務者)の収入に、一定収入がある配偶者などの収入を合算する方法です。住宅ローン契約は1本です。合算した金額をもとに住宅ローンの審査を受けることができるので、借入額を増やすことができます。

収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」があります。

「連帯債務型」は夫婦の一方が主債務者、もう一方が連帯債務者となって契約し、夫婦が連帯して同一の債務を負います。物件は夫婦それぞれの共有名義となり、持ち分割合に応じた住宅ローン控除も受けられます。団体信用生命保険(団信)は主債務者が加入しますが、銀行によっては、連帯債務者も加入できる場合があります。

「連帯保証型」は夫婦の一方が主債務者、もう一方が連帯保証人となって契約し、主債務者 が返済不能となった時に連帯保証人は返済義務を負います。物件の名義は主債務者となります。団体信用生命保険(団信)の加入および住宅ローン控除も主債務者のみが適用となります。

*ペアローン

一定収入がある夫婦がそれぞれ契約者(主債務者)になって住宅ローンを組む方法です。住宅ローン契約は2本になります。それぞれが債務者となり、かつ相手の連帯保証人となります。物件は夫婦それぞれの共有名義となり、団体信用生命保険(団信)の加入および住宅ローン控除は夫婦共に適用されます。

住宅ローンの契約を申し込むためには条件があります。金融機関ごとに異なりますが、たとえば年齢20歳以上65歳以下、団信に加入できる健康状態であること、前年度の年収300万円以上、正社員または契約社員 などの条件があります。収入合算の場合は、契約者となる一方が満たしていればよいのに対して、ペアローンは、両名とも条件を満たしている必要があります。

  • 収入合算の主債務者が夫の場合(筆者作成)

収入合算・ペアローンの注意点

収入合算・ペアローンにはそれぞれ注意点があります。確認していきましょう。

*収入合算の注意点

収入合算の連帯債務型は扱っている金融機関が少ないため、ここでは連帯保証型の注意点をお伝えします。

収入合算(連帯保証型)は、契約者1人の単独ローンと同じ扱いになります。契約者に万が一のことがあった場合は、返済義務はなくなりますが、契約者の配偶者に万が一のことがあった場合は、ローンの返済はそのまま続きます。そのため、配偶者の収入をあてにしてローンを組んだ場合は、その後の返済が行き詰まる可能性があります。また、住宅ローン控除も契約者だけが適用されます。

*ペアローンの注意点

ペアローンは契約が2本となるため、単独ローンよりも諸経費がかかります。

団信は夫婦両方が加入するため、夫婦どちらかに万が一のことがあっても、残された方のローンの返済義務はそのまま残ります。また、返済期間中に離婚することになった場合には、共有名義となっているため、名義変更の手続きなどの手間が発生します。また共有名義の家を売却する場合は全員の同意が必要になるなど、場合によっては困難な事態になることもあります。

さらに共有名義の場合、所有権の割合と実際の負担割合がかけ離れていると、贈与税が発生する恐れがあります。住宅ローンの負担が折半なら、登記も50対50にするなど、実態に即した持ち分にする必要があるでしょう。

パワーカップルはペアローンがいい理由

パワーカップルは夫婦共に高収入であることから、どちらかが主たる債務を負う収入合算ではなく、対等に住宅ローンを組めるペアローンがいいでしょう。ペアローンなら夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除については次項で説明します。

団信は夫婦共に加入することになるので、夫婦どちらかに万が一のことがあった場合、残された方のローン返済はそのまま続きます。しかし契約時に設定した1人分の返済であるため、収入に変化がなければ返済が困難になることはないでしょう。

注意点は、契約時は二人とも高収入であっても、将来どちらかが仕事をセーブする可能性がある場合です。このような場合は、継続的に安定収入が見込まれる方を契約者として、一つの住宅ローン契約にした方がリスクを減らすことができます。

住宅ローン控除はペアローンが有利

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末のローン残高の0.7%を最大13年間控除できる制度です。2024年入居の場合、省エネ基準に該当する新築住宅を取得した場合、住宅ローン控除の借入限度額は最大4,500万円(子育て世帯、若者夫婦世帯は5,000万円)になります。

単独での住宅ローン契約や連帯保証型での収入合算の場合は、住宅ローン控除は1人しか受けることができません。そのため、住宅ローンで8,000万円を借り入れても、最大で4,500万円(子育て世帯、若者夫婦世帯は5,000万円)しか控除の適用を受けることができません。しかし、夫婦がペアローンで4,000万円ずつ借り入れれば、合計8,000万円の全額が控除の対象とすることができます。

夫婦のどちらも高収入であるパワーカップルが、高額な借り入れをする場合は、住宅ローン控除の恩恵を最大限に受けられる可能性があるペアローンを選択すると有利になります。パワーカップルは所得税、住民税を多く払っているので、住宅ローン控除で節税する意味合いは大きいでしょう。