フィニッシュラインで充実感を噛み締めた。11日に横浜・山下公園周辺特設会場で開催された「ワールドトライアスロンパラシリーズ(2024/横浜)」で日本選手唯一、表彰台に上がったのは秦由加子だった。
女子のエース秦は、表彰台でほほ笑んだ見据えるのは表彰台女子PTS2クラスの秦は1時間19分05で3位だった。得意のスイムで2位の位置から、強化してきたバイクで粘り、ランでも好位置を維持。昨年の5位から3位に順位を上げ、「表彰台を狙っていた。久しぶりに横浜の表彰台に上がれて本当にうれしい」と笑顔を浮かべた。
拠点の沖縄でバイクを強化してきた。後続との差を縮められることなく、最後のランにつなげてペースを落とさず走ったことが結果につながった。
バイクの強化が実を結んだいい準備ができていたからだろう。スタート前、観客の声援に笑顔で応える余裕もあった。
「すごく楽しくて。前日から今日がすごく楽しみだった。こんなに楽しみで迎えられるレースは今までなかなかなく、今日はレース中も笑うくらい楽しかった」
東京大会後に右脚を手術し、昨シーズンからレースに本格復帰。悔しさを胸に秘め、とにかく前を向くだけだった1年前とは一転、手ごたえと意欲がみなぎっていた。
フィニッシュエリアではガッツポーズをした秦「(トライアスロンを始めた)2013年から、ずっと痛みがあった。今は、ランに関しても全く痛みがなく、手術してよかったと思います」
1年前は「手術をやってよかったかどうかは、自分次第」と話していたが、この日は「手術してよかった」と言い切った。
痛みがなくなったことで、ラン用義足につきものの“調整の悩み”が「ひとつクリアになった」。走りについても、伸びしろがあり、同じ大腿義足の陸上競技の選手を手本に力強い走りを学んでいるところだという。
そんな秦は、リオと東京に続く3大会目のパリで悲願のメダルを目指している。
「客席から見る(表彰台の)景色は涙が出るくらい悔しい。パリでは勝って表彰台に上がりたい」
メダルセレモニーでは子どもたちにブーケを手渡されたパリパラリンピック出場権獲得のためのランキングポイント対象期間は、2023年7月1日から2024年7月1日までであり、今大会でランキングポイント獲得を加算させたことでランクインは確実になった。ここからはパリに出るためのレースではなく、パリで勝つためのレースを戦うことになる。
「手ごたえや課題を明確にしながら一つひとつ戦う」と、パリを見据えた秦。「(今回の横浜は)強い選手が全員出ているわけではない。彼女たちに勝てるように頑張りたいです」と最後は気を引き締めた。
復帰の谷もパリに前進前回大会で日本の女子選手の出場は秦のみだったが、今年は谷真海が3年ぶりに返ってきた。
試行錯誤中のバイクで粘りを見せた谷東京パラリンピック後、競技を離れていた谷は、復帰の理由を明かす。
「気持ちのどこかでもう一度やりたいというのがあった。きっかけは、今年パリがあること。東京では(種目が)なかったPTS4クラスが復活し、選手が増えた嬉しさと、中に入ってやってみたいという気持ちがありました」
第2子出産も経て、復帰3戦目。女子PTS4クラスで5位になり、「2戦目より前が近くなった」と手ごたえを口にし、終始笑顔だ。
パリ出場権獲得へも前進した。本人は「気持ちの片隅にはあるが、そんなに簡単なことではない」と語りつつも、「最後まで粘りたい」とたのもしかった。
男子のエース宇田は途中棄権今シーズン初戦の宇田秀生は、男子PTS4クラスで表彰台を目指したが、ランの途中で棄権。
「(棄権した場面は意識がなく)覚えていないが、あきらめようとはしていなかったと思います」
粘り強さが宇田の持ち味。現在のランキングはパリ出場圏外だが、残りのレースにかける。
脱水症状などで途中棄権した宇田text by Asuka Senaga
photo by Sayaka Masumoto