ニュージーランドのプレミアムなキウイフルーツを展開する「ゼスプリ」。一度見たら忘れられない「キウイブラザーズ」のCMを思い出す方も多いだろう。同社の歴史とキウイフルーツの魅力について、ゼスプリ インターナショナル ジャパンの渋佐奈甫美さんに伺ってみた。
キウイフルーツの歴史とゼスプリの誕生
キウイフルーツと言えばニュージーランドが思い出す人は多いと思うが、その原産地は中国。1904年に女子高の校長が中国から果物の種子を持ち帰り、植物学者に栽培を依頼したことがキウイフルーツ栽培の始まりだ。
その後、1928年に一般的にイメージされるグリーンの果肉の「チャイニーズ・グーズベリー」が誕生。1959年にアメリカへ輸出する際に、見た目がニュージーランドの国鳥「キウイ」に似ていることから現在の名称で販売されるようになった。
1980年代に入ると世界的にキウイフルーツの輸出業者が増え、価格競争が始まる。そこでニュージーランドの生産者は、高品質のキウイフルーツを消費者に届けるため、窓口の一本化を計画。1988年に運営・マーケティング組織としてニュージーランド・キウイフルーツ・マーケティングボード(NZKMB)が設立される。
そして1997年、NZKMBはニュージーランドのキウイフルーツに「zest」(情熱)と「spirit」(精神)を組み合わせ、「ゼスプリ」というブランドネームをつけた。
10種類の栄養素が取れるキウイフルーツ
そんなゼスプリ インターナショナル ジャパンでマーケティング部長を務めている渋佐奈甫美さんに、キウイフルーツの魅力を聞いてみよう。現在、ゼスプリで取り扱っているキウイフルーツは大きく3種類だ。
ひとつ目は「ゼスプリ・グリーンキウイ」。お馴染みの鮮やかな緑色の果肉が特長で、酸味と甘みのバランスが良い。非常に食物繊維が豊富で、一個で成人女性の平均的な不足量を補えるという。
ふたつ目は「ゼスプリ・サンゴールドキウイ」。ゼスプリが10年以上の歳月をかけて開発した独自の品種で、トロピカルでジューシーな甘みが特長。ビタミンCがとくに豊富で、一個で一日に必要な分を摂取できるという。
三つ目はちょっと小ぶりな「ゼスプリ・ルビーレッドキウイ」。日本では2021年から販売されている新しい品種で、熟したベリーのような上品な甘さが特長。赤い果肉には抗酸化成分であるアントシアニンが含まれており、血液をサラサラにしたり眼精疲労を軽減する効果が期待できる。
渋佐さんは「キウイフルーツの一番の特長は、やはり栄養が豊富というところにあります。10種の栄養素をバランス良く含んでおり、100gあたりの栄養は身近なフルーツの中で一番と言えるほど多いのです。また、グリーン、サンゴールド、ルビーレッドで栄養素の特長が異なるため、必要に応じて食べ分けることもできます」と、熱く語る。
日本人の食事摂取基準における一日当たりの摂取基準値に対して17種類の栄養素がどのくらい含まれているかを「栄養素充足率」として算出すると、キウイフルーツは非常に高い。毎日の食事の中で栄養のバランスを保つための食品としてうってつけだ。
キウイフルーツのイメージを変えたゼスプリシステム
キウイフルーツに「すっぱい」「しぶい」という印象を持っている方も少なくないと思うが、ゼスプリはそんなイメージを変える努力を続けてきた。それが「ゼスプリシステム」と呼ばれる仕組みだ。
土壌づくりからピッキングのやり方まで徹底し、残留農薬のチェック、追熟加工など、厳しい品質基準による管理のもと、食べごろに近い状態で店頭に出荷される。食の安全と味へのこだわりが強い日本には、とくに良質なキウイフルーツが出荷されているという。さらに、輸送時に使用する箱にはバーコードが貼り付けられており、生産者や果樹園、どの区画で収穫されたかまで追跡できる。
現在では日本国内で国産キウイフルーツの栽培も手がけている。ニュージーランドと日本はともに島国であり、園地の環境も近い。それでも栽培に適した農地を有する生産者を探し、キウイフルーツを育てるための土地を育てるのは大変だ。これらの条件を満たすことで、ようやくゼスプリの基準を満たすキウイフルーツができる。これによって日本でも一年中キウイフルーツを楽しむことができるわけだ。
では、キウイフルーツはどのようにして食べるのが美味しいのだろうか。
「食べ頃は、やさしくにぎってちょっと指が沈むくらい。おすすめの食べ方は、やっぱりハーフカットしてスプーンですくって食べることですね。それから、暑さ対策には塩を加えたスムージーがオススメです。甘酒にルビーレッドキウイを混ぜて飲むと美容サポートになります。また、グリーンキウイはアクチニジンというたんぱく質分解酵素を含んでおり、お肉と一緒に調理すると柔らかくなるので、ディナーにも合います。熟しすぎていたら冷凍すると食べやすくなります。輪切りにして冷凍し、アイスキャンディのように食べても美味しいです」
ゼスプリのWebページには、キウイフルーツを使った肉料理やデザート、ドリンクなどさまざまなレシピが紹介されている。健康を気にされている方、新しい料理に挑戦してみたい方はぜひチェックしてみてほしい。
かわいいだけじゃない!?「キウイブラザーズ」誕生のヒミツ
ゼスプリのマスコットキャラクターと言えば、多くの方が一度は目にしたことがあるであろう「キウイブラザーズ」だ。キウイフルーツの断面を口に見立てたシンプルな造形だが、そのぶんキウイフルーツのキャラクターだということがわかりやすく、すっかりゼスプリの顔になっている。
このキウイブラザーズが誕生したのは2016年。それまでゼスプリのCMは芸能人が担当しており、それなりに認知はされていたものの、たびたびの担当者変更もあり、ブランドに直接結びつけることができていなかった。
そこで当時のマーケティング部長とクリエイティブディレクターが100年先も愛される事を目指し、400ものキャラクターを研究。一目で印象に残りつつ、普遍的に愛されるキウイブラザーズが誕生した。
「ポイントは『子どもだけではなく、大人にも愛されるキャラクター』です。CMをみていただいた方は分かると思いますが、キウイブラザーズはただ明るくかわいいだけではなく、ときにシュールな発言をし、なさけないところもそのまま見せてくれるんです。これが大人にも愛され続けている理由だと思います」
CM映像はストップモーションアニメで作られているが、15秒を撮影するのに約2週間かかるそうだ。また登場するグリーン・ゴールド・レッドのキャラクターや先輩のりんご、みかん、バナナたちは実際の果物の縮尺そのままにデザインされており、瞳のデザインもそれぞれ異なるという。CMを見る機会があったら、改めてよく見てみると良いだろう。
キウイフルーツを通じて次世代に良い影響を
渋佐さんはもともと日用品・消費財のマーケターをしてきたが、子どもを出産後、ゼスプリに入社したという。
「私は、たくさんの人が手に取れるものでみなさんの生活をより良くしたいと思ってマーケターをしてきました。復帰するときにより消費者の生活を高められるところ、成長機会がある市場を考えたときに、キウイフルーツに魅力を感じて、2022年11月からゼスプリで働いています」
工場で生産される消費財は、年に一回はほぼ必ず新製品が発売される。だが農作物は新製品を開発するのに数十年の歳月が掛かる。農作物の売り上げを育てるには本当に良い商品とブランド力が必要で、その魅力を伝える仕事にチャレンジしてみたいと思ったそうだ。とくに日本は果物の消費が少ない。果物が持つ栄養を伝え、より良い食習慣を作っていくのが渋佐さんの目指す未来だ。
「ゼスプリに入ってみて驚いたのは、みんなキウイフルーツを売ることだけじゃなく、どうやって人々の生活を良くしていくかに主眼を置いていたことです。CMも最初はおいしさを中心に伝えていたのですが、いまは健康的な生活のためにゼスプリというブランドがどう寄り添えるかにシフトしているんです。私にも子どもがいるので、次の世代に良い影響を与えることをいつも真剣に考えています」
だが、農作物ならではの苦労も多い。渋佐さんが入社した直後の2023年1月には、さっそく台風の影響で生産量が減るという騒動があったという。また2023年度はニュージーランドでも雨が多く、大玉のキウイフルーツが多くできたそうだ。
「大玉は大味というイメージがあると思うのですが、キウイフルーツは大きいと甘くて、そのぶんだけ栄養価も高くなるので、とても美味しいです。これを伝えるために急遽プロモーションも考えました。店頭で大きなキウイフルーツを見かけたら、ぜひ一度食べてみてください!」
他の果物の消費量が伸び悩む中、ここ10年の日本におけるキウイフルーツの消費量は増加傾向にある。その背景には皮を剥かなくても食べられる手軽さはもちろんのこと、その美味しさや栄養素が知られるようになったこと、いつでも手に入るよう流通したことなどが考えられるだろう。ゼスプリのキウイフルーツにかける熱意が日本にも浸透してきた証かもしれない。
ゼスプリのミッションは、世界中の人々・コミュニティ・環境を繁栄させ続けていくことだという。キウイフルーツの魅力を伝え、キウイフルーツを通じて健康な食生活を届けるために、渋佐さんは今日も邁進している。