ポリフィア(POLYPHIA)が2024年5月、日本公演を行う。新世代ギター・ミュージックを牽引するバンドとして絶大な支持を集める彼らは2016年に初来日してから連続して日本のステージに立ってきたが、コロナ禍のせいでそれがストップ。2023年6月には久々に本邦に戻ってくることが発表されながら、何と”ビザに関する不測の事態”により公演が中止になってしまった。
その仕切り直しといえる今回の来日だが、話題を呼んでいるのが2024年5月25日・26日、さいたまスーパーアリーナで開催されるBABYMETAL主催フェス「FOX_FEST」への出演だ。BABYMETALがヘッドライナーを務めるこのフェスは、彼らにとって日本で最大のステージであり、新たなファン層に触れる絶好のチャンスといえる。東京・大阪では単独ライブも行われ、まさにポリフィア旋風が吹き荒れる春の終わりだ。
「すべてが準備万端だ。パスポートもビザも何の問題もなくて、もう俺たちを止めるものは何もない!」と語るのはツイン・ギターの一角を占めるティム・ヘンソン。彼に日本公演に向けた意気込みと、その向かう未来について訊いた。
ーあなたの御母上のご家族が台湾の家系だそうですが、4月3日の地震で皆様ご無事だったことを祈っています。
特に話はしていないけど、みんな大丈夫だと思うよ。今度母親に訊いてみる。心配してくれて、どうもありがとう。嬉しいよ。
ー2023年の来日公演はあなた達が日本に到着してから中止が決定したそうですが、日本では何をしていたのですか?
スコット(・ルペイジ:Gt)と俺は10日ぐらい前から日本にオフで来ていたんだ。特に何をするわけでもなく、俺のフィアンセと彼のガールフレンドとで街に出かけたり、食事をしたり……日本は世界で一番好きな国のひとつだよ。前回日本を訪れたのはコロナ禍前の2019年だったけど、それより声をかけられることが増えたね。みんな「ハロー!」ってフレンドリーで、とても嬉しかったよ。ただ、「日本にいるのに何でライブをやらないの?」と訊かれるのはつらかったけどね。代わりにミート&グリートみたいなファンと交流出来るイベントをやる話もあったけど、急な話で会場の確保や告知などがうまく調整出来なかったんだ。そんなこともあって、今回、日本でライブをやるために戻って来ることが出来て本当にハッピーだよ。
ー今回の来日公演はさいたまスーパーアリーナで開催されるフェス「FOX_FEST」出演を含むものです。
BABYMETALのことはずっと意識していたし、アルバムにも参加したけど(『METAL GALAXY』収録の「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」)、去年10月、カリフォルニア州サクラメントの「Aftershock Festival」で一緒になって、初めて会うことが出来たんだ。あまり長く話せなかったけど、「会えて嬉しい!」とお互い言い合って、ライブも観ることが出来たよ。彼女たちの故郷である日本で一緒にショーを出来ることは本当に光栄だ。
ー「FOX_FEST」で初めてポリフィアの音楽に触れるリスナーに、バンドの音楽スタイルをどのように説明しますか?
俺たちの音楽スタイルを説明するよりも、ライブの楽しみ方を説明したいね。ハイになって、ダンスしたりジャンプしたりする音楽だよ。ポップだったりメタルだったり、いろんな表情のある音楽で、誰にとっても楽しめる瞬間がきっとあるよ。「FOX_FEST」は俺たち自身がすごく楽しみにしているんだ。BABYMETALは去年アメリカでライブを観て、早くもう一度観たい!と思っていた。エレクトリック・コールボーイ(Electric Callboy)やビルムリ(Bilmuri)もよくフェスで名前を見かけるし、エレクトリック・コールボーイは一度観たことがある。アメリカやヨーロッパのフェスみたく100バンドが出演するわけではないけど、集中して楽しいバンドで盛り上がれるイベントになるよ。
ー「FOX_FEST」は広い意味で”メタル・フェス”と呼べるものですが、ポリフィアはUKのダウンロード(Download Festival)、フランスのヘルフェスト(HELLFEST)、ベルギーのグラスポップ(Graspop Metal Meeting)など、数多くのメタル・フェスに出演するなど、メタル・コミュニティからも認知されています。メタル・ファンからの反応はどんなものですか?
すごく熱狂的に迎えてくれるよ。ポリフィアの音楽はストレートなメタルとは一線を画しているけど、スコットも俺も子供の頃からメタルが大好きだったし、スコットのお父さんがメタリカのカバー・バンドを組んでいたり、常に身近にあったんだ。元々このバンドだって結成当初はデス・メタル・バンドで、トレモロ・ピッキングやブラストビートを取り入れたりしてきた。メタル愛はポリフィアの音楽から伝わってくると思うし、黒のレザーを着込んでいなくても、ブーイングを飛ばされたことはほとんどないよ。今、いくつか新曲を書いているけど、すごくメタル的なサウンドなんだ。ひと周りして、原点に立ち返っているんだよ。メタル・フェスでいろんなバンドを見て、バックステージで話したりするのは刺激を受けるし、最高にクールな気分だ。
ーアルバム『Remember That You Will Die』の「ABC」などでは日本語の語りを取り入れるなどして、メタルにkawaii的な要素を取り入れていますが、それはBABYMETALと共通するものも感じますね。
うん、彼女たちはkawaiiメタルのパイオニアだよ。ただ「ABC」はBABYMETALからよりも、原宿発信のkawaiiカルチャーへのトリビュートなんだ。キュートでパステルカラーの、TikTok動画みたいなイメージを狙ったんだよ。元々は日本のボーカロイドの曲の音節に合わせてギターを弾いて、それに合わせてソフィア・ブラックに歌ってもらった。彼女は日米ハーフだから日本語の「アイウエオ、カキクケコ」と歌っているんだ。
刺激を与えるヒーローの存在
ーこれまでポリフィアはさまざまな要素を取り込み、独自のスタイルを創り上げてきましたが、最近ではどんな音楽との交流をしていますか?
プロデューサーのマイク・ディーンと作業しているんだ。彼はカニエ・ウェストやトラヴィス・スコット、ザ・ウィークエンド、マドンナなどと一緒にやってきた人だけど、音楽に対する彼の知識と嗅覚が素晴らしくて、多大なインスピレーションを得ているよ。彼の自宅でフリーフォームのジャムをやったり、オールドスクールなやり方でアイデアを引き出していくんだ。
ーマイク・ディーンとの作業はポリフィアとしての次のアルバム、あるいはシングルを念頭に置いたものですか?
うん、アルバムに『POLYPHIA5』と仮題を付けているんだ。よりヘヴィなアプローチの曲が多いけど、2人のクレイ(・ゴバー:Ba/・アシュリマン:Dr)が加わることで、ポリフィアならではのアイデンティティが確立される。それと同時に、俺のソロ・アルバムも作っているところなんだ。すごくクリエイティヴでエキサイティングな時期だよ。
ーポリフィアの曲は多くがインストゥルメンタルでしたが、『Remember That You Will Die』ではボーカルやラップなど、人間の声をフィーチャーした曲が増えていました。新作でもその路線は受け継がれるでしょうか?
俺のソロ・アルバムでは俺自身の声を楽器のひとつとして使っているところが数カ所あるけど、基本的にはインストゥルメンタルだ。ポリフィアの新作では何曲かでゲスト・ボーカリストを迎えるかもしれないけど、まだ曲を書いているところで、詳しいことを話せる段階に至っていない。2曲は確実にインストゥルメンタルになるよ。でもアレンジを決めたり、曲を完成させるのはまだ先なんだ。スタジオに入ってレコーディングするのが楽しみだよ。
ーポリフィアの作品にはしばしばフィーチャリング・アーティストが参加していますが、次のアルバムあるいはあなたのソロ作にゲストを招く予定ですか?
プロデューサーのマイク・ディーン、それからエレクトロニック・アーティストのRJ・ペイジンがゲスト参加してもらうつもりだ。過去にシングルとして発表してきた曲も収録するかもしれない。プリーニとコリー・ウォンとやった「Sunset」とか、ichikaとのコラボレーション曲も再録するかもね。『POLYPHIA5』でもフィーチャリング・アーティストを招くかもしれないけど、ただセレブに声をかけるのではなく、音楽をよりよくしてくれる人と共演するつもりだ。
ーあなたは影響を受けたギタリストの1人としてスティーヴ・ヴァイを挙げており、彼との共演が「Ego Death」で実現しましたが、あなたのヒーローでまだ共演が実現していない人はいますか?
たくさんいるよ! その中でもぜひ一緒にやりたいのがサンダーキャットだな。楽器フェア「NAMM Show」で自分のサイン会に向かうんで通路を歩いていたら、バッタリ出くわしたんだ。ポリフィアの音楽が好きと言ってくれて、しばらく話し込むことが出来た。それからジョン・メイヤーと一緒に曲を書けたら最高だね。「The Worst」みたいなタイプの曲をぜひ共演してみたい。……スコットに同じ質問をしたら「メシュガーと一緒にやってみたい」と言うんじゃないかな。俺も彼らの音楽は好きだし、ぜひ一度話してみたい。ヒーローはたくさんいるよ。
ー初めてスティーヴ・ヴァイのプレイを見たのは映画『クロスロード』(1986年)だったそうですが、ライ・クーダーが弾くブルースには魅力を感じましたか?
うん、それがライ・クーダーだというのはずっと後になって知ったんだけど、最初に憧れたギタリストがジミ・ヘンドリックスだったんだ。ジミは決して正統派ブルースってわけではなかったけど、彼のスケールやコードにはブルースからの影響が濃かった。俺のプレイにもジミの要素があるし、何分の1かはブルースがあると思うね。『クロスロード』の主役だったラルフ・マッチオが主役だった『ベスト・キッド』(1985年)からは礼節と規律の面で感銘を受けたな。「ワックス・オン、ワックス・オフ」とか(笑)。
ー新しいギターは弾いていますか?
アイバニーズと新しいモデルを作っていて、日本でお披露目するんだ。これまでのシグネチャー・モデルの延長線上にあるけどカラーやフィニッシュ、手触りが違っていて、新鮮な気分だよ。旧モデルも持っていくし、いろんなモデルを弾くのが楽しみなんだ。
ー日本公演を楽しみにしています!
ポリフィアの最初のアルバム『Muse』(2014年)を出してからもう10年が経つんだ。これだけ長いあいだ音楽を続けられて本当に幸運だと思うし、これから出来る限り続けていきたい。ただ現状維持でなく、ミュージシャンとして新しくてエキサイティングな目標を設定していきたいね。ジャパン・ツアーではポリフィアの最新の進化形をみんなに見てもらうよ。
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FOX_FEST
2024年5月25日(土)&26日(日)
さいたまスーパーアリーナ
出演:BABYMETAL / POLYPHIA / ELECTRIC CALLBOY / Bilmuri / METALVERSE (Guest Band ASTERISM)
Official website : https://foxfestjapan.com
Polyphia Japan Tour 2024
Support Act : Li-sa-X
東京5月27日(月)Zepp Haneda(Tokyo)
大阪5月28日(火)Namba HATCH