ドキュメンタリー映画「ザ・ビートルズ:Let It Be」や、ジョン・レノン「失われた週末」の公開など、解散から50年以上が経ってもなお今だにニュースが絶えないビートルズだが、また新たにファンをアッと驚かすニュースが届いた。
【画像】ジョン・レノンの失われたアコースティックギターが50年ぶりに発見!(写真8点)
あの名盤 『Help!』のレコーディングでジョン・レノンが使用したギターが、とある家の屋根裏から発見され、ジュリアンズオークション主催で、ニューヨークにて2024年5月22日(水)~2024年5月28日(火)に開催されるオークション「ミュージック・アイコンズ」に出品されるというのだ。
1963年から1964年にかけて、ビートルズは飛ぶ鳥を落とす勢いだった。バンドのデビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』は1963年3月にリリースされ、同年5月には全英チャートの首位を獲得、2作目の『ウィズ・ザ・ビートルズ』にその座を奪われるまで首位をキープし続けた。そして64年2月、ビートルズは初めてアメリカの地に降り立ち、そのわずか2日後に『エド・サリヴァン・ショー』で歴史的なテレビ・デビューを飾る。その夏、初のワールド・ツアーにも出発し、年間を通してライヴとレコーディングも行われた。
65年初頭、「You've Got to Hide Your Love Away」、「It's Only Love」、「I've Just Seen a Face」、そしてもちろん 「Help!」を収録したレコード『Help!』のセッションが始まった。これらの曲には、単に同じレコードに収録されているという以上の共通点がある。それは、ジョンとジョージの2人が時折弾くアコースティック12弦ギターの音色だ。さらにアルバム「ラバー・ソウル」セッションで録音した「Girl」やジョージ・ハリスンが演奏した「Norwegian Wood」のリズム・トラックでもこの特徴的なギターの音色を聴くことができる。
想像してみてほしい。屋根裏を漁っていると、古いギターケースを見つけ、ブラッシングしてみると、Matonというブランド名が目に入る。ケースの中には12弦のアコースティック・ギターが入っており、ヘッドストックにはFramusと書かれている。チューニングが狂っており、ずっと誰も触れていないのだろう。そこで家主にこのギターはなんなのかと尋ねると一言、
「ああ、それはジョンのだ」
1965年末、ジョン・レノンはこのギターを、レノンとマッカートニーが曲を書いていたイギリスのデュオグループ「ピーター&ゴードン」のゴードン・ウォーラーにプレゼントした。その後、ウォーラーはギターを彼のマネージャーに譲り、彼はギターを家に持ち帰ると、屋根裏部屋に放り込み、そのまま何十年もの間、日の目を見ることはなかった。
ジュリアンズ オークションは、ミュージシャン、作家、ビートルズグッズの専門家であるアンディ・バビュックと協力し、このフーテナニー(シリアルナンバー#51083)がジョン・レノンのギターであることを確認。このギターには、ロゼッタの模様に見られる黒っぽい斑点、トップの木目、亀甲ピックガードの渦巻きなど、特徴的なマーキングがいくつかあり、スタジオ・セッションの写真や映画『ヘルプ』のシーンと比較すると、実に簡単に識別することができたという。
フーテナニーの場合、その確固たる根拠はサウンドにある。少しかき鳴らせば、すぐに「あの」ギターだとわかるのだ。さらにコードを弾いてみると、ビートルズの曲そのものがサウンドホールから響き出す。
実はオークションに出品されるのは、ギターだけではない。レコーディング・ルームの写真でも一緒に写っているマトンのケースも残っていたのだ。驚いたことに、このケースはゴミ箱に捨てられており、慌てて救出されたそうだ。
その茶色の外装の摩耗具合からは、長年にわたって忠実に役目を果たしたことが伝わってくる。内部は、ラバー・ソウル・セッションのカラー写真に写っているのと同じクラッシュ・イエローのベルベットで、外装のバッジが光を受けて輝いている。また、写真に写っている内装のディーラー・タグも完璧にマッチしている。
60年近く行方不明で、もう永久に失われたと思われていた歴史的なこのギター。再び演奏ができるようにするためジュリアンに持ち込まれ、適切な状態に修復された。もう本人が弾くことは叶わないが、今後このギターでまたビートルズの楽曲が奏でられることはあるのだろうか。
2015年にもジョン・レノンのギターがオークションに出品され、落札予想価格は60万~80万ドルだったのに対し、240万ドル(当時のレートで約3億円)で落札されている。今回のオークションでの落札予想価格は60万~80万ドル(約9,300万~約1億3千万円)となっているが、この落札額を大いに上回ることは想像に容易い。
バーンファインドのクラシックカーがオークションに出品され度々話題になっているが、物置や屋根裏の隅で「Help!」と叫びながらいつか日の目を浴びることを待ち望んでいる素晴らしい楽器もまだまだ多く存在するのだろう…。