「ホビーのまち静岡」に日本の模型メーカーが集う新作見本市イベント「第62回 静岡ホビーショー」(主催 : 静岡模型教材協同組合)が、今年もツインメッセ静岡で開催。5月8・9日は業者招待日、5月10日は県内の小中高校生招待日、5月11・12日は一般公開日となる。
今年もNゲージ鉄道模型に関係するメーカーが多数出展。当記事では、日本のNゲージの大手であるKATO、マイクロエース、グリーンマックスについて順に見ていく。
KATO、113系2000番代・E131系・Aシートなど多数展開
KATOブースでは、発表済みの新製品の試作品展示や、昨年の静岡ホビーショーで発表され、先月発売された211系5000番代を中心に、静岡エリアを走行する車両の走行展示などが行われた。以前の「鉄道模型コンテスト」や「T-TRAKジオラマSHOW」の出展作品、ホビーセンターカトー近隣の小学生が授業で制作したミニジオラマも展示された。
発表されたばかりの新製品の中でも、とくに注目されるのが「113系2000番台 湘南色(JR仕様)」だろう。113系のうち、シートピッチが拡大された2000番代を平成初期の東海道本線東京口の姿で模型化。11両編成に2両連結されるグリーン車は、平屋の「サロ110-1263」と2階建ての「サロ124-3」となっており、普通列車グリーン車が平屋から2階建てに移りつつあった当時を思い出させる。7両基本セット(品番「10-1954」、価格2万6,730円)と4両増結セット(品番「10-1955」、価格1万2,760円)に分けられ、両方合わせて11両編成が完成する。
この11両編成とタッグを組むのが、4両編成の「113系2000番台 湘南色(JR東海・T編成)」。JR東日本所属編成とは異なるグレーの床下機器やJRマークの配置を再現する。11両編成の相方となる以外に、発売済みの313系や211系5000番代と並べることで、T編成単体でも静岡エリアの再現に貢献する。品番は「10-1956」、価格は1万6,060円。
単品の「サロ110 350番台」(品番「74261-2」、価格3,080円)も発売。もともと特急形車両に連結されていたグリーン車を改造・転用した車両で、「化けサロ」と呼ばれることもある。2階建て「サロ124」と「化けサロ」を入れ替えることで、違った雰囲気で遊べる。会場では、オレンジ色の入っていない状態で試作品が展示されていた。今後、製品状態に近づいていくだろう。ここまで紹介した113系2000番代系列はいずれも9月発売予定とのこと。
他の試作品展示もピックアップ。E131系のうち、房総エリアのローカル輸送向けに登場した0番代(品番「10-1945」、価格1万2,650円)、相模線に導入された500番代(品番「10-1946」、価格1万8,700円)は、5月30日のメーカー出荷日が近づいている。E131系の側面はE235系をベースとしているが、じつは運転台横の窓がE235系よりも低い位置にある。そうした違いを再現しつつ、0番代と500番代のシート違いも作り分ける。E129系をベースとした前面には、水玉模様が細かく再現され、テールライト(後部灯)も粒状に点灯する。
7月発売予定の「E131系600番台 宇都宮線・日光線」(品番「10-1947」、価格1万6,500円)も並んで展示された。0番代・500番代にはない、屋根上の霜取り用パンタグラフと発電ブレーキ抵抗器、先頭台車のスノープロウが追加されており、Nゲージでも再現。似た外観でありながら、番代ごとの個性がNゲージでも再現されるだろう。
過去に「レジェンドコレクション」として登場時の姿が模型化されたことのある、近鉄10100系「新ビスタカー」が、改装後の仕様で6月発売予定。前面下部にスカートが設置されたほか、無線アンテナや前面窓デフロスタなども追加された。一方、2階建て車両はトイレ移設による内装・窓見付変更や、スナックコーナーの有無、ラジオ受信アンテナ撤去後の仕様が作り分けられる。行先はおもに晩年運行された乙特急(停車タイプ)のものが収録される。
A編成・B編成の6両セット(品番「10-1909」、価格2万5,300円)、C編成単体の3両セット(品番「10-1910」、価格1万4,850円)に加え、A・B・C三重連の特別企画品(品番「10-1911」、価格4万150円)も発売。6両セットのA編成は、非貫通先頭車両の前面窓に唯一ピラーがあったV01編成となり、特別企画品の2階建て車両のうち2両はスナックコーナーなしとなる。
JR西日本の関西エリアで活躍中の新快速「Aシート」を連結した225系も7月に発売予定。一般車両と「Aシート」車両の違いを再現するほか、最新のスロットレスモーターを採用し、静かでスムーズな走りを実現している。併結運転のしやすさから、トラクションタイヤ(ゴムタイヤ)非搭載。品番「10-1900」で、価格は1万9,800円。同時に一般車両の225系100番代が8両・4両ともに再登場する。
4月6日に特急「やくも」で運行開始した新型車両273系が、早速、Nゲージで製品化されることもKATOから発表された。2025年春発売予定として企画が進んでおり、今後、詳細情報とともに正式に製品化発表が行われるだろう。
HOの国鉄形車両、ナローゲージ展開 - コントローラー試作品も
Nゲージ以外では、HOスケールの12系客車と「EF58 ツララ切り付・ブルー」(品番「1-324」、価格2万8,600円)が6月発売予定。その試作品が展示された。降雪地向けの装備として、前面にツララ切りやスノープロウ、側面に電気暖房機表示灯を装備した仕様を再現している。モデルはEF58形89号機。同時発売の12系客車とはもちろん好相性だが、発売済みのスハ43系・オハ35系を牽引する編成も組める。発売済みの165系800番代や「夢空間」の走行実演も行われた。
ここ最近のKATOは、HOナローゲージにも力を入れていることがうかがえる。ありそうでなかった道床付き線路「ナローゲージユニトラック」も5月21日メーカー出荷予定。直線線路(124mm・62mm)、曲線線路(R183-45°)やフィーダー線路など、基本的なレールが発売され、より実感的にナローゲージを遊びやすくなる。通常とは異なるグレーの「パワーパック スタンダードSX」を同梱した運転セットも発売される。
開発を進めている「ワンハンドルコントローラー」の試作品も公開。キーを入れて電源を起動させたり、加速時にボタンを押しながらハンドルを倒したりと、実車に則した運転を鉄道模型で楽しめることは間違いない。電源は既存のNゲージ用またはHOゲージ用のACアダプターを使用。ユニトラックで一般的に使用する「パワーパック スタンダードSX」よりも重く、ハンドルを操作しても本体が動かず安定する。実車同様の非常ブレーキとは別に、鉄道模型用の非常ブレーキボタンもある。
これだけでも模型運転を十分楽しめると思うが、発売中の「サウンドボックス」とも連動するため、両方組み合わせることで、自分の運転に合わせて音も楽しめるようになり、ますます鉄道模型が楽しくなるだろう。夏頃の正式発表をめざしているとのことだった。
開発中のコントローラーにはもうひとつ、「ポケットラインコントローラー」もある。他のコントローラーとは異なり、USBタイプCで電源に接続する方式。線路への出力も最大5Vとなるため、通常の車両は走行できず、新動力のポケットラインのみ走行できる。会場では、「チビ凸」(小型機関車)やハノーバー電車型の「マイトラム」、ナローゲージ機関車を使用して試作品展示を行っていた。現時点では詳細未定とされている。
ジョイフルトレインを薄型室内灯対応に - シキ801やHO103系も製品化進む
マイクロエースも発売予定新製品の試作品を数多く展示した。他社が製品化しないジョイフルトレインも幅広く扱っており、「キロ59系 リゾートサルーンフェスタ 3両セット」(品番「A3672」、価格2万1,450円)を発売予定。過去に広島エリアに存在した列車で、「しゃべる列車」としてひときわ異彩を放っていた。晩年仕様で製品化され、前面のくちびるが手動で開閉可能になっている。
現役時代に展望室やカーペット敷きの内装が好評だった「485系700番代『NO・DO・KA』登場時 3両セット」(品番「A3954」、価格2万4,200円)も発売予定。「リゾートサルーンフェスタ」ともども、この2種類は過去に発売された実績があり、対応する室内灯が今回発売品から薄型に変更される。
その薄型室内灯は、光源の光を透明プリズムで車内全体に導光する従来品とは異なり、小型のLEDを均等に配置した室内灯となっており、光のムラが少ない。部品自体が薄型であり、外側からプリズムが見えにくくなるため、2階建て車両や窓が大きく展望室のある車両に適している。白色と電球色の2種類が発売中で、どちらも価格2,200円、2本入りとなっている。会場では、「京阪電車8030系 旧3000系クラシックタイプ 8両セット」(品番「A7953」、価格4万9,940円)に薄型室内灯を搭載した展示も行っていた。
変圧器を輸送する特大貨車シキ801の改良も進んでいる。従来製品では、曲線通過時に中央の積荷が内側に大きく張り出し、隣の車両や構造物に干渉することがあった。そこで、首を振る支点の位置を中央寄りに変更することで内側への張り出しを抑制。複線間隔33mm、半径280mmの線路を走行可能になった。「シキ801B1(積荷なし) 日本通運株式会社(NX)」(品番「A8576」、価格1万5,180円)として開発中で、専用積荷は別売(価格2,200円)となる。なお、NIPPON EXPRESSホールディングスの監修により、展示品からさらなるグレードアップも行うという。
4両編成で発売されたことのあるJR西日本・加古川線の103系3550番代は、通常編成とダブルパンタ車の2種類が各2両セットで発売予定。どちらも価格は1万5,400円。JR九州の713系も、九州色と「サンシャイン」仕様が各2両ずつ、価格1万4,850円で発売予定。東北エリアの719系は、0番代・5000番代・「フルーティアふくしま」の3種類が各2両編成で1万6,500円。前回、2両セットで発売されたJR東海キハ11形やJR九州キハ31形は、モーター車・トレーラー車を別々にし、各単品として発売予定。いずれもモーター車は価格9,350円、トレーラー車は8,250円。1両単位で購入しやすくなる。
HOスケール・プラスチックモデルの未塗装組立キットとしてリニューアルが進められてきた103系高運転台(ATC車)も、4両編成(品番「HK-2-001」、価格1万890円)と2両の増結用中間車(品番「HK-2-002」、価格6,050円)で近日発売予定となった。車体の成型色は塗装しやすいグレーで、床下機器は黒色成型となる。動力化する場合は天賞堂「コアレスパワートラック」推奨。会場には社員による制作例も展示されていた。
グリーンマックスから東急電鉄3000系、京阪電車や新旧「東横イン」も
最後にグリーンマックスについて。同社ブースでは、東急電鉄3000系と、京阪電車10000系の塗装試作品が初公開となった。「東急3000系(目黒線・東急新横浜線) 8両編成セット(動力付き)」は、奇数編成の3107編成で、行先表示がフルカラーになった2022年以降の仕様を再現。従来車両と、新造された4・5号車の内装の違いも再現する。
車番・コーポレートマーク・「8CARS」表記が印刷済みで、種別・行先や弱冷房車等の表記は付属ステッカーを使用。列車無線アンテナ、ヒューズボックス、床下のハシゴはユーザー取付けとなる。品番は「50773」、価格は4万5,100円で、9月以降に発売予定。過去に事業者限定品の「鉄道コレクション」(トミーテック)で商品化されたことはあったが、純粋なNゲージでの発売は初となる。
「京阪10000系(10001編成) 7両編成セット(動力付き)」で製品化される10000系は、2002年の登場当初、4両編成だったが、一部編成が7200系・9000系の中間車両を組み込み、7両編成化された。今回の製品では、京阪本線の通勤電車の新塗装をまとった7両編成を再現。10000系そのものはもちろん、7200系・9000系とで異なるドア形状、側面下部の裾の処理、屋根上配管など再現している。車番・コーポレートマークが印刷済みで、種別・行先や弱冷房車等表記はステッカー貼付。列車無線アンテナ・ヒューズボックス・簡易運転台ライトはユーザー取付けとなる。品番は「31899」で、価格3万7,400円、8月以降発売予定となっている。
他にも発売予定新製品を多数展示。長野電鉄8500系は、東急8500系初期編成の床下機器や、屋根・妻面を新規製作。他の製品も、金型追加、ライトユニット変更による行先表示点灯への改良、車番を選択式にするなどの変更が加わり、再発売となる。
2022年7月に一新したブランドロゴを掲げる東横イン「東横INN(新ロゴ・壁面ロゴタイプ)」も8月発売。品番「2715」で価格6,380円。屋上看板に旧ロゴを掲げるタイプも9月に再登場とのこと。昨年、この会場で展示され、大きな話題となったコメダ珈琲のストラクチャーも引き続き販売されている。イベントの前日に、213系5000番台(2次車・飯田線)が11月発売予定品として発表されたポスターもブースに掲示された。試作品は今後のイベント等で展示されると思われる。
掲載の都合上、紹介できなかった製品も多数存在するが、どれも実車の特徴をスケールサイズに上手く落とし込んでおり、見ていて楽しかった。過去に発売したことのある車両の別仕様や、編成短縮も見られたので、当時買い逃した人も、当時とあまり変わらない価格(多少の値上がりはしているが)で今後手に取るチャンスが訪れるだろう。各社公式サイトもあわせて確認してほしい。