富山・射水市にて5月3日~4日、野外音楽フェス「ONEFES2024」が開催された。令和6年 能登半島地震の影響をうけて一時は中止も検討されたが、関係者は「各方面からの協力、支援により今年も開催できました」と感謝の言葉を口にする。

  • 今年もONEFES(ワンフェス)が富山・射水市で開催された。写真は、とやま湾フェスティバル実行委員会の中島圭亮氏

■ONEFESとは?

ONEFESは2019年から開催されている野外音楽フェス。目の前に富山湾が広がる美しいロケーションのもと、全国からアーティストが集い、大人から子どもまで一緒になって音楽に身を委ねることのできるイベントとなっている。

  • 場の様子。アーティストは「かに」と「しろえび」の2つのステージに交互に登場する(富山県射水市海王町8番地 海王丸パークにて)

  • ステージの後方にはレジャーシート、アウトドアチェアなどで思い思いに寛げる芝生のエリア。アーティストのパフォーマンスは大型ディスプレイにも映し出される

  • 隣接するベイエリアには帆船海王丸が停泊。背景には新湊大橋、そして立山連峰という絶景が広がる

とやま湾フェスティバル実行委員会の中島圭亮氏は、ONEFESについて「もともと富山県に恩返しがしたい、地元の皆さんに好きな音楽と出会ってほしい、大人も子どもも気軽に音楽と遊べる場所をつくりたい、富山でも何でもできることを証明したい、そんな熱い思いを持った有志のメンバーで始めた野外音楽フェスです」と説明する。会場には楽器体験コーナーのほか、乳幼児のための授乳室、子どもの遊び場なども設置している。

  • 楽器体験コーナー

  • 小さな子がドラムに挑戦していた

  • テントの下で塗り絵に熱中する子たち

  • アスレチックはスタッフが安全に留意

小学生以下と65歳以上は入場無料で、休憩用テントも豊富に用意。そしてライブ中は、怪我の恐れがあるモッシュやダイブといった行為を一切禁止にしている。過去の出演アーティストからは「子どもとお年寄りの参加も多いフェス」という評価をもらっているそうだ。

  • スロープを上がった先には、車イス専用のスペース

  • こちらは、子どもの観覧エリア。耳の保護のためのイヤーマフも用意している

■テーマは「歌は力」

「これまで私たちは、来場者も出演者も全ての人が最高の笑顔になる、幸せあふれるONEFESを目指してきました」と中島氏。年を経るごとに注目度は高まり、来場者数も増え、全てが順風満帆と思われたが―――。

フェス4年目となる今年は、元旦に能登半島地震が発生してしまった。射水市では震度5強を観測、海王丸パークの周辺では地割れも起こった。中島氏は「会場エリアも荒れてしまいました。地盤が15cmくらい下がったところもあって」と振り返る。

  • 会場に向かう人の列

  • ...その歩道のアスファルトも、このように隆起していた。地震の大きさが伺い知れる

震災後、フェスの参加を断念したアーティストもいた。その一方で「こんなときだから、一緒に頑張って盛り上げていこうよ」と声をかけてくれるアーティストもいた。「数多くの人から、今年もONEFESを開催してほしいというメッセージが届きました。メンバーで議論した結果、開催しよう、という答えに行き着きました。今年は初めて「歌は力」というテーマも掲げています」と中島氏。

  • 参加アーティストのタイムテーブル

  • 受付で復興支援募金を呼びかける

会場では「珠洲産の天然塩」「能登 柳田産のブルーベリー」を使用した、かりんとうまんじゅうを販売。売上1個につき10円を能登地区に寄付するようにした。このほか復興の思いを込めて、富山米のカステラ、富山みたらしだんごなど、地元のお菓子も販売。イベントの公式グッズとして販売するTシャツの利益、およびイベントの売上(一部)も寄付にまわす。

  • 震災の影響で売上が減少した店舗をONEFESに誘致

被災地の子どもに配るお菓子も受け付けた。条件は、未開封かつ常温でも管理できる、賞味期限・原材料が記載されたもの。集まったお菓子は5月5日の「こどもの日」に、実行委員が現地まで届ける。

  • 来場者からお菓子の寄付も募った

この日、ステージに立ったあるアーティストは「今年はフェスが開催できるのか、正直、不安に思っていました。いまこうして皆さんに会える喜びを噛み締めています」と素直な気持ちを打ち明けた。

中島氏は、今年の雰囲気について「被災地を応援したいという皆さんの思いが伝わってくるようです。前売りチケットの販売数から考えても、昨年を上回る来場者数となりそうです」とし、たくさんの方が笑顔になるきっかけになれば嬉しい、と続ける。

  • 来場者数は過去最高を更新する見込み

今後、ONEFESをどんな催しにしていきたいか。そんな問いかけには「これは個人的な夢ですが、このフェスに来てくれた子どもたちがバンドを始めて、将来、あのステージに立ってくれたら。「あのときONEFESで感動したからバンドを始めたんです」なんて話してくれたら最高ですね。そのためにも、今後ともフェスを盛り上げていきたいと思います」と笑顔になった。

  • フェス文化を次の世代にもつなげていく