食パンを焼く家庭用トースターといえば、オーブントースター型かポップアップ型の2種類が一般的。そんななか、超薄型ホットプレートで人気のアビエンが「両面グリル型」の特徴的な1枚焼き用トースターを発表しました。それが5月24日より27,500円で発売予定の「abien BREAD GRILL」です。

見た目はホットサンドメーカーのような本製品ですが、じつは「食パンを美味しく焼く」ためのさまざまな特徴的技術が使われています。

新製品で食パンはどこまで美味しく焼けるのか? 気になる実機をプレス向け新製品発表会にてチェックしてきました。

  • 新製品のabien BREAD GRILL。カラーはブラックとホワイトの2色。ブラックは鋳鉄をイメージさせるマット仕上げで、ホワイトは艶のある陶器のようなツルンとした仕上がり。色によって異なる質感を採用しているなど、デザインに対するこだわりも感じる製品です

パンの美味しさを決めるクラムの「水分保持」

この10年で「美味しいトースト」が焼けるこだわりの高級トースターが各メーカーから続々発売されています。こだわりの製品に共通するのが「パン表面(クラスト)はサクっと香ばしく、中身(クラム)は水分を保持してモチモチ食感であること」を目指している点。

とくに重要なのが、加熱してもクラム(パン中心の白くて柔らかい部分)が乾燥しないことで、各メーカーはクラムの乾燥を抑えるためにスチーム機能を搭載したり、特殊なヒーターを搭載するといった工夫を凝らしています。

新製品であるabien BREAD GRILLは、ヒーター内蔵プレートを直接パンに接触させることで、パン表面を一気に加熱。外側をカリッと仕上げることで、クラムの水分がパンの外に逃げることを防ぎます。

  • 本体サイズは幅180×奥行300×高さ120mm、重量約2.1kg

  • 上部分をパカっと開くと両面にグリルプレートが配置されているのがわかります

ところで「両面グリル型」のトースターというのはabien BREAD GRILLが最初の製品ではありません。じつは三菱電機が2019年に同じく両面プレートを内蔵した「三菱ブレッドオーブン」を発売。同シリーズは今も続く密かな定番シリーズとなっています。

ただし、ブレッドオーブン高さ約4.4cmの庫内を密閉することで熱や蒸気を閉じ込めて焼く構造。下面プレートはパンに接触しているものの、パン上部と上プレートの間には隙間があります。

一方、abien BREAD GRILLはパンをプレートで挟み込むことで、パンの下面だけでなく上面もプレートが直接接触して加熱する、特殊な構造を採用しています。この構造により、abien BREAD GRILLは最薄1.3cmから3cmの厚さのパンまでしっかり上下にプレートを接触できる仕組み。ちなみに、一般的な食パンの厚さは8枚切りでおおよそ1.5mm、4枚切りで約3cmです。

  • 上下のプレートが稼働する独自のプレス構造を採用。パンの厚さに合わせて、プレートがパンを優しく挟み込みます

【実食】感動的な焼き色の美しさ! バターがなくても美味しい

ここからは実際にabien BREAD GRILLを使って食パンを焼いてみます。体験会ではスーパーなどでよくみかける、敷島製パンの4枚切り食パンを焼きました。

操作は比較的シンプル。本体のダイヤルでは焼きたいパンにあわせて「薄切りパン(6~8枚切り)」「厚切りパン(4~5枚切り)」「薄切り冷凍パン(6~8枚切り)」「厚切り冷凍パン(4~5枚切り)」の4つのメニューが選べます。メニューを選ぶと約1分40秒の余熱が始まり、余熱終了のアラームが鳴ったらパンをセットします。

  • 操作部はダイヤルひとつのみとシンプル。ダイヤルでメニューを選択したら余熱が始まり、余熱終了後にダイヤルを押し込むことで本加熱がスタートします。余熱中はメニューのLEDが点滅し、ダイヤルのオレンジの光が徐々に明るく点灯します

  • 余熱終了後にパンをセットしたらフタを閉めて準備完了。あとは焼き上がりを待つだけ

  • フタを閉めると自動的にロックがかかり、開けるにはハンドル部を角度をつけて持ち上げる必要があります。子供が不用意に開いて火傷をする心配がないのは嬉しい仕様です

焼き時間は薄切りパンが約60秒、厚切りパンで約90秒、一番焼き時間が長い厚切り冷凍パンでも150秒とかなりスピーディ。この焼き時間の短さは接触式の両面焼きならではの魅力だと感じます。

焼き上がりで驚くのは焼き面の美しさ。一般的なオーブントースターで焼いた食パンはどうしても焼きムラがありますが、abien BREAD GRILLの焼き目はかなり均一です。フタをあけたとたんフワリと立ち上がる蒸気や、一気に広がる香ばしい香りもトーストの美味しさへの期待を盛り上げてくれます。

  • 焼きたての4枚切り食パンはかなり美しい焼き目。プレートと接触した耳部分の焼き目はとくに香ばしそうで食欲をそそります

  • オーブントースターで焼いた食パンは裏側の焼き目が甘いことも多いのですが、abien BREAD GRILLは裏側の焼き目も完璧でした

焼き上がったパンをちぎると、中から一気に蒸気が立ち上がり水分量が多いことがわかります。じつは、今回の試食で焼いた食パンは我が家で食べているものと同じ銘柄のものだったのですが、自宅で焼いたパンより小麦の香りも豊かに感じました。水分とともに、小麦の香りもしっかり閉じ込めているという印象です。

  • 外のカリカリは薄くて香ばしく、パンの中身は柔らかくモッチモチ! 香ばしさと小麦の風味、カリカリともちもちの食感のコントラストでバターなしでも美味しく食べられるトーストでした。香ばしさが好きな筆者は、とくにカリッとした耳の美味しさに感動しました

abienの薄型ヒーターならではのメリットがいろいろ

ところで、abienといえば厚さ約3mmの超薄型ホットプレートで人気のメーカー。この薄型のホットプレートを実現できた理由が同社のフィルム状ヒーターの存在が欠かせません。そしてabien BREAD GRILLにも同社のフィルム状サーキットヒーターが搭載されています。

  • 同社の代表的な製品でもある薄型ホットプレート「abien MAGIC GRILL」シリーズ

  • 同社ホットプレートに内蔵されている、紙のように薄いフィルム状ヒーター

フィルム状サーキットヒーターは薄くて軽いだけではなく、密度の高さも特徴的。一般的なホットプレート用ヒーターは、電熱線がW字のように全体にザックリと配置されています。ですが、abienのサーキットヒーターは写真でもわかるように電熱線を細かく高密度に配置できます。このため、プレートに内蔵することでプレート全体を素早くムラなく加熱できるのです。

abien BREAD GRILLはプレートを取り外して丸洗いできるのですが、ヒーター内蔵型プレートにもかかわらず、この特殊ヒーターのおかげでプレートが薄くて軽く、取り扱いが手軽な点も魅力的だと感じます。

  • ヒーター内蔵プレートは取り外し可能。シンクで丸洗いできるのでお手入れも楽そうですね

このほか、両面グリル型トースターは3枚以上の連続焼きができない製品もありますが、abien BREAD GRILLは10枚の連続焼きも可能。2枚目以降は余熱が必要ないのも嬉しいポイントです。

今回は発表会会場における短時間の体験でしたが、abien BREAD GRILLのパン本来の美味しさを引き立てる焼き上がりは強く印象に残りました。

一度に1枚しか焼けなかったり、最初の1枚は余熱が必要など、毎日の忙しい朝に利用するにはデメリットに感じる点もありますが、ここまでトーストが美味しく焼けるならばパン好きの筆者としてはこの製品は「買い」。サクサクもちもちのコントラストのあるパンが好きな人にはぜひ一度試してほしい製品です。