シャオミの「Xiaomi 14 Ultra」は、ライカと共同開発したカメラが話題のスマートフォン。2月にグローバル発表されて以来、注目を集めていましたが、日本でもオープン市場向けに、5月16日から199,900円で発売されることが発表されました。
国内向けにはこれまで、コスパを重視した製品を多く展開してきたシャオミですが、「Xiaomi 14 Ultra」は、6.73インチの大型かつWQHD+の高精細な有機ELディスプレイを採用し、SoCにはクアルコム製の「Snapdragon 8 Gen 3 Mobile Platform」を搭載。前面に3200万画素カメラ、背面には「LEICA VARIO-SUMMILUX」のブランド名を冠する光学レンズを用いた、約5000万画素カメラが4つと、まさにフラッグシップモデルと呼ぶにふさわしい製品。日本での発売よりひと足早く、グローバル版を試す機会を得たので、注目のカメラ機能を中心にチェックしました。
それぞれ約5,000万画素の4つのカメラは、広角/超広角/望遠/超望遠という構成。メインの広角カメラはソニー製の1型センサーを採用し、焦点距離は23mm相当。F値1.63~4.0の可変絞りが可能です。超広角カメラは122度の視野角を持ち、焦点距離は12mm相当。F値1.8で、5cmまで寄れるマクロ撮影にも対応しています。望遠カメラは焦点距離75mm(光学3.2倍)相当でF値1.8。もうひとつのペリスコープ望遠カメラは焦点距離120mm(光学5倍)相当でF値2.5で、いずれもテレマクロ撮影が可能です。
ワイドからズーム、マクロまで幅広い焦点距離をサポートしているため、どんなシーンでも撮影しやすいのに加えて、背景をぼかしたポートレート撮影やテレマクロ撮影など、光学レンズを活かした多彩な撮影が楽しめます。RAWデータにも対応し、「写真」モードをはじめ、マニュアル撮影ができる「プロ」モードや「ポートレート」モードなど、様々な撮影モードが用意されています。
超広角以外は光学式手ぶれ補正をサポート。動画では4K(24~120fps)や8K(30fps)での撮影が可能。4KはHDR動作撮影もサポートされています。動画にも複数の撮影モードがあり、標準の「ビデオ」モードに加えて、被写体の自動追尾が可能な「映画」モード、マニュアル撮影ができる「監督モード」などを選んで撮影できます。
筆者はどちらかというと「Leicaオーセンティック」の方が好みだったので、以降の写真は、基本的に「Leicaオーセンティック」で撮影しています。
フィルターも豊富で、「Leica BW NAT」「Leica BW HC」などのモノクロフィルターを使用すれば、ライカらしくハイコントラストでエモい、モノクロ写真が楽しめます。また「ポートレート」モードでも、「マスターポートレート」と「Leicaポートレート」という2つのスタイルが選択可能。23mm/35mm/50mm/75mmの焦点距離を切り替えて、いろいろな画角やぼけ味が試せます。また望遠で被写体に寄れるテレマクロ撮影は、料理の撮影などに重宝すると思います。
モノクロの作例
スナップの作例
ポートレートの作例
超広角0.5倍からメインカメラでの1倍/2倍、望遠は光学3.2倍と5倍をワンタッチで切り替えでき、さらにデジタルズームでは、最大120倍まで拡大することができます。120倍はさすがに画質が厳しいですが、30倍以上の高倍率デジタルズームでは、AIを用いて画像の鮮明度を上げる機能も搭載されているため、文字などもくっきり映ります。同じしくみを使って月が撮影できる、「スーパームーン」というモードも用意されています。
被写体から距離をとれないときも、逆に遠くの被写体にぐっと寄りたいときも、自由自在に撮影できる、まさに万能カメラといったところ。焦点距離の異なる以下の写真はすべて、同じ場所から撮影したものです。
ズーム倍率の比較
夜景モードの作例
「Xiaomi 14 Ultra」にはさらに、カメラ撮影が楽しくなるオプション「Photography Kit」も用意されています。単品での価格は22,000円ですが、なんと国内版の購入者特典として全員にプレゼントされるとのこと。本体にもポリカーボネート製のケースが付属していますが、「Photography Kit」にはより重厚なメタル&ヴィーガンレザーを用いた専用ケースと、シャッターボタンなどが備わったグリップがセットになっています。
ケース&グリップを取り付けることでホールド感がアップし、撮影時の安定度が格段にあがります。またシャッターボタンを半押ししてのピント合わせや、レバーを使ったズームなど、まるでカメラのように直感的かつ自然な操作での撮影が楽しめます。ダイヤルは初期設定ではEV(露出補正)になっていますが、絞り/シャッタースピード/ISOなどに割り当てることも可能。またスリープ中にシャッターボタンの長押しで、カメラを直接起動するよう設定することもできます。
カメラ撮影時には電力を消費しがちですが、グリップには1,500mAhのバッテリーが搭載されていて、スマホ本体の5,000mAhとあわせて、6,500mAhの大容量が利用できます。初期設定では、グリップからスマホへ自動給電されるしくみになっていますが、筆者が試したところ、先にグリップの電池がなくなってしまうと、シャッターボタンを操作できなくなることがありました。自動給電をオフにして、スマホ本体のバッテリーが心許なくなったらオンにするなどした方がいいかもしれません。
「Xiaomi 14 Ultra」のフラッグシップたるところは、カメラだけではありません。6.73インチのWQHD+(3,200×1,440)、つまり2Kの有機ELディスプレイは、リフレッシュレート120Hz、タッチサンプリングレート240Hzをサポート。高輝度モードで1,000ニト、ピーク輝度は3,000ニトとなっています。実際に晴れた日の太陽光下で写真を撮影しているときも、画面が見づらいと感じることはまったくありませんでした。撮影時に見やすいのはもちろん、撮った写真や映像を手元で高精細かつ色鮮やかに楽しめるディスプレイだと言えます。
SoCは前述のとおり、クアルコム製の「Snapdragon 8 Gen 3 Mobile Platform」で、メモリーは16GB、ストレージは512GB。ストレージの一部を仮想メモリとして使用できる機能も用意されています。最新のSoCということもあるでしょうが、3Dmark「Wild Life Unlimited」、PCMark for Android Benchmark「Work 3.0」、GeekBench 6「CPU Benchmark」の各ベンチマークテストでも、かなり高いスコアをマークしました。実際に試用期間中、操作にストレスを感じることはありませんでした。
このほか、OSはAndroid 14ベースの「Xiaomi Hyper OS」で、生体認証は画面内指紋センサーと顔認証が利用可能。通信は最新のWi-Fi 7やドコモが5Gで使用する「n79」もサポートしています。シャオミ製品ではおなじみの急速充電にも対応。設定でブーストモードをオンにすることで、さらに速く充電することも可能です。仕様では33分で100%充電が可能となっていますが、90Wの付属ACアダプター(グローバルモデルのため変換プラグを使用)で試したところ、みるみる充電されていき、実際に残り20%を切ったところから約30分ほどで、フル充電ができました。
一方で気になったのは、カメラ撮影時の電池の減りです。どんなスマホでも、カメラ撮影時は電池が減りがちなものですが、1日中写真を撮りまくっていたある日、気がつくとグリップのバッテリーが瀕死だっただけでなく、スマホ本体のバッテリーも50%を切っていたということがありました。せっかく急速充電ができるので、旅先などへはACアダプターも持参して、こまめに充電する方がいいかもしれません。
短期間でしたが使ってみて感じたのは、「Xiaomi 14 Ultra」はちゃんとカメラの代わりになるスマホだということ。マクロからズームまで、全方位で撮影ができる光学レンズと1型センサーに加え、「Photography Kit」によるグリップやシャッターボタン、レンズフィルターなど、見た目もしっかりカメラなので、これなら取材にも使えそうです。プライベートでも、太陽光下で見やすいディスプレイに、IP68の防水、防塵対応など、夏のレジャーシーンで活躍することは間違いなしでしょう。199,900円はもちろんそれなりの価格ですが、一眼レフカメラならレンズ交換必須の焦点距離をこれ1つでカバーできること、「Photography Kit」が無料でもらえることを踏まえた上で、これは直接通信ができるカメラだと考えれば、「高くないかも」という気がしてくるから不思議です。