2024年2月18日に東京プリンスホテル駐車場で、『Ralphs Coffee and Cars, supported by Octane』が開催された。今回はイタリアのデザインスタジオがテーマで、主に『ベルトーネ』、『ピニンファリーナ』、『トゥーリング』、『ザガート』が対象。現地は約120台のオーナーと参加者で大盛況となり、コーヒーを片手に会話を楽しんだ。
【画像】BBやミウラ、希少車ザガート・モストロなど、ベルトーネ、ピニンファリーナ、トゥーリング、ザガートらが手掛けた珠玉の名車が東京プリンスホテルに大集合!(写真63点)
これまで何度も開催されてきてすっかり恒例となった『Ralphs Coffee and Cars, supported by Octane』であるが、これほど会場までの足取りが軽やかだったことはないかもしれない。それはテーマが個人的に大好きな、『イタリアのデザインスタジオ』であったからだ。
テーマの対象となったのは、『ベルトーネ』、『ピニンファリーナ』、『トゥーリング』、『ザガート』の4スタジオ。octane.jpで参加募集をかけると大反響で、後にエントリー条件を拡大したほど。結果、駐車スペースのキャパシティを遥かに上回る応募があった。
当日は快晴に恵まれたこともあり約120台のオーナー以外にも見学者がかなり訪れ、会場となった東京プリンスホテル駐車場は大盛況。文字どおり”コーヒーを片手に”会場中で会話の花がたくさん咲いていた。
会場で、この日審査員を務めたデザイナーの中村史郎さんと、奥山清行さんにお話を聞くことができた。
まずは中村さん。「メーカーごとではなく、カロッツェリアとして車を見るのは、まず企画として素晴らしいですね。これだけ集まるのも素晴らしい」と感心。奥山さんも同様で、「台数だけでなく質も高く、やっと日本も自動車文化大国になれたのだと思いました」と目を細める。また周囲を見渡して、「若い方も多いですね。普段ビデオゲームをしている方が、太陽の下に出てきて、本物を見るのはすごく大事なことです。本物中の本物ばかりですから」
特に4台も揃ったミランボルギーニ・ミウラに感心した。「見ていて面白いのはミウラの角の表情がどれも違うことです。手作りの車だから、そしてこうして揃ったからこそわかることです」
カロッツェリアごとの違いもこう語る。「イタリアのカロッツェリアは、その時代のデザインディレクターの個性が出ます。例えば同じピニンファリーナでも、バティスタさんが元気だった時代とフィオラヴァンティさんでは全然違いますからね。結局は人なんです」
奥山さんは、さらに時代ごとにデザインの仕方、作り方が異なることにも言及。興味深い話が続くが、ちょうど場内アナウンスがありタイムオーバー。ステージへ向かう。
ここでは各賞典の発表があった。まず中村さんがSNDP賞として選出したのは、2015年ザガート・モストロ。わずか5台しか作られなかったうちの、貴重な1台だ。「ザガートはユニークな車が多いですが、今もこうして生産しているザガートという会社に対して敬意を込めて、敢えて新しい車であるモストロを選出しました」
稀少車のオーナーである大野さんは「ザガートのデザイナーと共に造ったところ」がこだわりのポイントだと話してくれた。登壇した中村さんは「ザガートの歴史が集約されている。この車を購入したことが凄い。あえてイタリアのカロッツェリアによる新しい車を選んでみた」と講評を述べた。
そして奥山さんは、4台のミウラの中から迷った末、オレンジ色の1967年 P400を選出。オーナーの安藤さんは「先月亡くなった父から受け継いだ車です。父が大切にしていたオリジナル状態を維持していきたい」と話してくれた。奥山さんは「ミウラが 4台も揃ったので迷いましたが、デザイナーの独断と偏見で選びました。エッジから丸くなる造形は難しいですが、ミウラはその組み合わせが美しい。それは本物を見ないとわからないのです」とコメント。
来場者投票によるベストインパブリック賞には、名古屋から自走参加という1949年フェラーリ166インテルが選出された。オーナーのSさんは、「フェラーリの初期モデルとなる1949年式です。旧い車を探していたらイタリアの博物館に飾っていることがわかり、それを2018年に入手しました。フェラーリ・クラシケ取得車です。50年間展示されていたので、動くようにする作業が大変でした」とコメント。そんな166インテルが、来場者による人気車投票でベストインパブリック賞を見事に獲得。身につけてきたラルフ ローレンのファッションも、クラシカルな166と絶妙にマッチしていた。
こうして大盛況のまま幕を閉じた今回の Ralphs Coffee and Cars, supported by Octaneだが、1杯のコーヒーが繋いできた縁はますます広がりを見せており、奥山さんがコメントしたとおり、日本での自動車文化形成に大きく貢献していると現場で強く感じた。さらに中村さんは「これで1950~60年代の車が来るともっといいなと思います。もっと個性が色濃い……」とコメント。
もちろん、こういった望みが出るのは、今回が盛況だったから。いずれにせよ、次回の開催が楽しみなイベントと言えよう。
文:平井大介、高桑秀典 写真:尾形和美、奥村純一
Word:Daisuke HIRAI, Hidenori TAKAKUWA Photography:Kazumi OGATA, Junichi OKUMURA
※120台におよぶ参加車両については画像ギャラリーを是非ご覧いただきたい。