藤井聡太名人に豊島将之九段が挑戦する第82期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第3局が5月8日(水)・9日(木)に東京都大田区の「羽田空港第1ターミナル」で行われました。対局の結果、雁木対棒銀のねじり合いから抜け出した藤井名人が95手で勝利。開幕3連勝として防衛に大きく前進しました。
豊島九段の作戦は雁木
藤井名人連勝で迎えた第3局は将棋界初となる空港での対局。対局室からは飛行機が離着陸する模様が目に入ります。注目された後手番・豊島九段の用意は序盤早々に角道を閉じての雁木囲いでした。藤井名人得意の角換わりを封じる狙いはシリーズを通じ一貫しています。
対する藤井名人はさっそく3筋の歩を突っかけ戦闘開始。プロ間では雁木に対しては本譜のような棒銀や早繰り銀の急戦策が有力と目されており、本局では豊島九段のほうが工夫を求められた格好です。豊島九段が続けて披露したのは早々に角交換を挑むマイナーな変化でした。
トッププロの棒銀炸裂!
「先手の攻め対後手の受け」という構図で局面は中盤戦。先に長考に沈んだのは豊島九段でした。107分の考慮のすえ選んだ玉寄りは玉を囲って自然に見えたものの、豊島九段は感想戦でこの手を後悔することに。実戦はここから藤井名人の猛攻が始まります。
愚直に棒銀を前進させて飛車先突破を図ったのが「優勢の時はシンプルに」の方針に従った好着想。盤上における争点が少ないため、後手から反撃の糸口がないのを見越しています。封じ手から数手後、後手玉そばに竜を作ったところで藤井名人の優勢がはっきりしました。
藤井名人の中押し勝ち
終局時刻は17時43分、終盤に入る前ながら形勢の開きを認めた豊島九段が投了。中継放送に備え付けられた将棋ソフトは仕掛け以降だんだんと先手のほうに形勢が振れる「藤井曲線」を描き、これはさながら離陸する飛行機の様子を思わせました。
これで藤井名人は3勝0敗と名人初防衛に王手。豊島九段の先手番で迎える注目の第4局は5月18日(土)・19日(日)に大分県別府市の「割烹旅館もみや」で行われます。
水留啓(将棋情報局)